王都の教会は・・・・
「え?どういう事?」
ラジャ「言ったまんまよ、教会に奴隷の子供がいるわ」
「は?」
教会に?
それは考えてもみなかった
ラジャが帰って来て、報告を聞いていたんだけど
例の教会には奴隷の子供がいるらしい
雑用をする程度の仕事をさせているらしいけど
案の定、食事は最低限で殴る蹴るの暴行をする時もあるらしい
信じられないような話だけど
仮にも神様を信じて、正しい行いを広めて行く立場の人のはずなのに
しかも、あの教会は孤児院もあるらしく
人族の子供は元気に暮らしていて、獣人の子供だけがそんな扱いを受けているって
話を聞いてて怒りが湧いて来る
ラジャ「私も驚いたわ、同じ子供なのに、奴隷として扱うなんて信じられない」
「どういう神経でそんな事を・・・獣人の子供は庇護下には無いって事だよね」
ラジャ「そういう考えがあるなら、ああいう扱いはしないでしょうね」
「許せない」
何を食べたらそんな考えが出来るのか
どうやって生きてきたら、それが正しい事だと思えるのか
私には一生わからないだろう
とりあえず、今夜行くところは決まった
教会以外にも、もう2か所子供がいる所があるらしいので
教会の次に行く事にしよう
ラジャが言うには、大人の獣人もまともな扱いをされている所の方が少ない
他の町とは比べようがない、って
「そんなに酷いんだ・・・・」
昨日、町を歩いた時は獣人奴隷を連れて歩いている人は見なかった
だから、そこまで酷いなんてわからなかった
ラジャ「ずっと家の中で碌な食事もさせずに、過酷な労働をさせているんでしょうね。町で連れ歩く事もしないでしょう」
「そんな・・・」
そこまで酷いのなら、全員を助けたい
でも、そんな事をすれば、色んな町の奴隷を買い占めている私達が疑われるだろう
王都中の獣人奴隷を『消す』
いや、『消えているように見せる』
そんな事が出来るだろうか?
ラジャが寝た後も考える
何かいい方法はないか、疑われるのは確定だとしても
何か言い逃れ出来るような理由を・・・・
夜にまた活動する為に仮眠を取るつもりだったけど、寝ずに考えた
どうすれば上手くいくだろうか・・・
「これしかないかな・・・上手くいくかわからないけど」
他には何もいい方法が浮かばない
考えがまとまった所で、ラジャに書置きを残して町を出る
目指すのはガロルド達の所だ
アルジャンに乗って飛べばすぐに追いついた
「ガロ、聞こえる?ちょっと話があるから止まって欲しい」
「了解」
姿が見えた所で、伝声の魔道具で話かける
止まってくれたのを確認して、すぐ傍に降りた
ガロルド「どうしたんだ?」
「ちょっと作戦変更したいんだ、話を聞いてくれる?」
ガロルド「わかった」
丁度お昼時だったので、食事を取りながら話をする
「ラジャの報告を聞いて、色々と問題が起きたの」
騎士「問題が?もしかして想像以上に子供が多いのか?」
「いいえ、子供はあと6人ほどですけど。他にも大人の獣人奴隷たちが酷い扱いを受けているみたいで・・・・それに・・・教会にも奴隷の子供がいるみたいなんです」
騎士「教会に奴隷の子供が?」
ガロルド「それは本当なのか?」
「うん、3人いるんだって。雑用をさせているらしいけど、まともな食事も与えずに、暴力を振るう事もあるらしいんだ」
騎士「あ、あそこには孤児院もあったはずだろう」
「はい、人族の子供は元気に過ごしているらしいですけど」
騎士「獣人の子供は酷い扱いをしていると?そんな事を許す神がいるのか?」
騎士さんもさすがに驚いている
「そんな神様、私は知りません」
ガロルド「俺も知らんな。で、全員助けたいって話だな」
「うん」
ガロルドは全部話をしなくても、私が考えている事もわかっているようだ
騎士「だが、さすがに王都中の奴隷がいなくなれば君たちが疑われるのは目に見えているぞ」
「そうなんですよね、それでずっと考えて。これなら言い訳に使えるかな?って」
騎士「言い訳?」
「はい、どうせ疑われるし、それならしっかりと調べてもらって、居なくなった奴隷はどこにも居ないって示してやればいいかなって」
騎士「じゃあ、攫って来た奴隷はどうするつもりだ?」
「そのまま隣国に運びます」
ガロルド「全部隠密に攫って来るってことか」
「うん、証拠も残さずに」
騎士「そんな事が可能か?」
「まあ、やってやれない事はないかと」
ガロルド「じゃあ、一時拠点がいるな」
「そうなの、一度に隣国までは運べないから、一時的に避難できる拠点が欲しいなって」
ガロルド「そこに誰かを常駐させておけばいいのか?」
「うん、お願いしたい。王都から離れた場所・・・・この辺でもいいんだけど」
ガロルド「あの辺なんていいんじゃないか?」
「良いかも、森の中に入り口を作ろうかな、拠点は地下に作ればいいし」
ガロルド「いいな、じゃあ俺が一度パチュリーまで戻った後に、ここまで戻って来よう」
「ありがとう、お願い」
騎士「ちょ、ちょっと待ってくれ。さすがにどれだけ否定しても疑いは晴れない気がするんだが」
「晴れなくても、証拠が無ければ捕まえられないですよね?実際何人も国外に逃がしているんだし」
騎士「そ、それはそうなんだが・・・ずっと疑われていると動きにくくならないか?」
「それに関しては考えがあるんですけど、どれぐらい上手く行くかはわからないので、上手く行けばいいなーくらいに思っておいてもらえれば。公爵様には迷惑にならないように気を付けます」
騎士「そんな上手くいくだろうか・・・」
「わかりません・・・・でも、放ってはおけないので」
騎士「それはそうだ」
「じゃ、この辺に拠点を作っておくから、戻ってきたら伝声をしてね」
ガロルド「了解だ」
話がまとまったので、私は拠点を隠せそうな場所を探して歩く
「地下に作るから入り口さえ隠せればいいかな」
森の中に入って誰も歩く事が無さそうな場所を探す
3本の木がかなり近い位置に生えていて、この間を歩こうとは思わなさそうだ
「よし、ここにしよう」
木を避けて、3本の木の中心に立って地下に向かって掘り進める
根っこが邪魔な所は申し訳ないけど、切らせてもらう
「ごめんねー」
階段を作りながら、地下へ向かって掘り進めて
ある程度の所から部屋を作っていく
役目を終えたら、壊すつもりなので、作りは簡素に
個室をいくつも作っていくけど、扉を作って付ける時間は無いので
中が見えないように、入り口だけ残して壁を作る
これで、寝ている所はのぞき込まないと見えない
いくつも同じ部屋を作って、最後にトイレをいくつか作った
数日だけ滞在してもらう予定なので、そこまで凝らない
大事なのは耐久性だけだ、崩落なんて絶対しないようにして
あとは空気穴と、地下だと気が滅入る事もあるだろうし
明かりは十分設置しておいた
「よし、こんなもんかな」
最後に入り口に戻って、木の板を取り出す
一か所だけ、手がかけれるように穴を空けて
入り口が完全に隠れるように置く
「あとは、カモフラージュかな」
木の板が丸出しだとバレるので、平原に行って
入り口の板が隠れるくらいの大きさを、土ごとゴソッと収納に入れた
戻って、木の板の上に草の生えた土を乗せればもう分からない
「うん、完ぺきじゃない?」
あとは、持ち上げた時にずり落ちないように、杭で止めた
よっぽど近づいて、よく見ないとわからないだろう
上出来だ
ガロルドが戻って来るのは、早くても翌日の昼以降だろう
一度王都の宿屋に戻り、ラジャと夜ごはんを食べた
ラジャ「で?何かいい作戦は思いついた?」
「うん、いい作戦かはわからないけど、これしか思いつかなかった」
ラジャ「へえ、どんな作戦?」
「えっとね・・・」
かくかくしかじか、考えている事を話した
ラジャ「へぇー・・・・・面白いじゃない。上手く行けば教会の評判も落とせるんじゃない?」
「うん、上手くいけばね・・・・噂を広げないとね」
ラジャ「それこそ、冒険者とか飲み屋にいるようなヤツにこぼせば勝手に広まるでしょう」
「そっか・・・・噂をわざと流そうかな・・・・」
ラジャ「ふふっ、クズには天罰が下るってね・・・教えてあげようじゃない」
「ふふっ、上手くいくといいな」
この日の夜中、町が寝静まった時に動き出した
ラジャは奴隷の数と場所をさらに詳しく調べに出かける
私は教会に乗り込む
「ふう・・・行くか」
失敗は出来ない、深呼吸をして気合いを入れた
宿屋の窓から飛びだし、夜の闇を移動する
視界は暗いが、大きな教会の場所はすぐにわかる
隠者のマントで気配を消して、教会内に侵入
探知で目的の子供達を探す
大体の場所はラジャから聞いているので、目的の部屋を見つけるのは早かった
部屋の中に入ろうとして、扉に鍵がかかっている事に気が付いた
子供の奴隷の部屋にカギをかけるなんて、厳重だな
よっぽど外部にはバレたくないのか、だったらこんな事するなよ・・・
カギはあえて壊さずに、焼いた
錠部分だけが金属なので、扉部分を高温で焼いていく
人一人分が通れるほどの穴を焼き尽くして、中に入っていく
焦げ臭い匂いはするが、問題ない
近くに人の気配はない
中に入ると、小さく丸まって眠る3人の子供がいた
防音の結界をしてから3人を起こす
「起きて・・・助けに来たよ」
一人が起きて、目をこすっている
「しーーー、静かにね・・・バレちゃうから」
人差し指を立てて、静かにする事をお願いする
驚いた顔をしているが、静かにしてくれているので、そのまま奴隷紋を消す
まだ寝ている子供たちも起てきた
すると先に起きた子供が「しーー」と言ってくれている
全員の奴隷紋を消したあと、3人を抱っこする
「今から、逃げるから。絶対に声をだしちゃいけないよ」
コクコクコクコクと頷く子供たちを連れて、外へと出る
静かに扉を閉めて、外に出て
「今から飛ぶから、良いよっていうまで目を閉じてて?絶対に目を開けないでね」
コクコクと頷いて、目を手でふさいでいる
全員が目を塞いだ所を確認したら、空へ飛んで行く
いつもより高く高度を取って、「アルジャン」
大きくなったアルジャンに飛び乗る
遥か下に見える、教会
それでも、その大きさから教会だと一目でわかる
「アルジャン、やって欲しい事があるの」
「きゅぃ?」
「あれ、あの大きい建物の一番高い所に雷を落として欲しいの。他に被害が行かないように、あそこだけね」
「きゅぃー」わかったー
「他が燃えたら困るから、かなり限定的だけど大丈夫?」
「きゅぃ」だいじょぶ
「よし、じゃあお願い」
「きゅぃっ」
目の前が眩くバチッと光ったと思った次の瞬間
ドッガーーーンッ
青白い雷が地上に向かって伸びる
教会の一番高い尖塔へ向かって
瞬きの間に、教会の尖塔は燃えた
ぽっかりと空いた天井の下には、礼拝堂が見える
そして、神の像があったであろう場所は燃えていた
「これが、神の裁きってね・・・・行こうアルジャン」
「きゅぃー」
燃えている教会のその後を見届ける事もなく、森に作った拠点へ移動する
「それにしても、アルジャン凄く上手だったよ。コントロールが上手くなった気がする!」
「きゅぃー!」でしょー!
任務は遂行出来たので、そんな呑気な会話をしながら夜の空を飛んだ
ありがとござした!




