魔力の痕跡
書庫の番人ウィルティルさんに手伝ってもらって、目当ての本を探す
とりあえず最初に欲しいのは、魔力の痕跡を探す方法だ
その魔力を辿って行く魔法について書かれている本を読んでいる
『魔力の痕跡と探知』と書かれている本だ
人には魔力が宿っている世界で、魔力にはそれぞれ個性がある
私がいつも使っている探知魔法も、魔力の個体差で誰がどこにいるかがわかる感じだ
そして、生活をしていると少なからず魔力が漏れる
そこにいる滞在時間が長いほど、残滓は多く
その場にいた人物の魔力が残る・・・・・みたいな事が書かれてある
まずは魔力の残滓が見つけられるようになる所からか・・・
かなり微量な魔力を見つける方法は探知と似ている
自分の魔力を使って、自分とは違う魔力を探すって感じだ
この本に書かれているのは、『自分の魔力を薄くばらまいて、違う色の魔力を見つける』
なるほど?もっと薄く探知の魔法を広げるって事だな
ちょっと試してみようかな?
ウィルティル「どうでしょうか、理解できない所などは無かったですか?」
「あ、大丈夫です。なんとなくわかったのでちょっと試して来ます」
ウィルティル「え?もう理解を?」
「たぶん?自分が元から使っていた魔法に似ているので、練習すればできるようになりそうなんで試してみたくて」
かなり驚いているみたいだ
ウィルティル「ご迷惑でなければついて行ってもよろしいですか?」
「あ、はい。そんなに面白いものではないと思いますけど・・・」
ウィルティル「いえいえ、ご謙遜なさらずに・・・大変興味深いです」
「そ、そうですか。じゃあ行きましょう」
書庫を出て、里長の家まで戻る
ウィルティルさんは何も言わずに後ろについて来ている
ここから、ガロルドの痕跡を辿ろうと思う
さっきの本に書いてあった通りに魔力を限界まで薄く、広げていく
これがたぶん大事なんだ、濃すぎる魔力だと残っている魔力がわからなくなる
自分が今できる限界まで薄く魔力を広げると、地面に足跡型の魔力の残滓があるのがわかった
「これの事か」
かなり集中しないとダメだけど、やってやれない事は無いって感じだ
ウィルティル「どうですか?」
控えめに声をかけてくる
「あ、はい。魔力の残滓を感じる事ができました。これから辿れるかやってみようと思います」
ウィルティル「も、もう出来たのですか?それは足跡の形ですか?」
「はい、足跡型ですね。ウィルティルさんもわかりますか?」
ウィルティル「はい、実は先ほどの本は私の曽祖父が書いたものでして。一族が得意とする魔法なんです・・・・それが本を読んだだけでできるなんて・・・」
「もともと使っていた探知魔法がこれと同じような感じだったので・・・・それでもこっちの方がもっと繊細で集中力が必要ですね。あとは元の魔力の違いがわかるようになるには練習が必要ですね」
ウィルティル「そうなんです!そうなんです!わかりますか!この魔法の繊細さが!」
「はい、とても緻密で繊細な魔法ですね」
ウィルティル「ああ!あなたとは話が合いそうですー」
とっても嬉しそうなウィルティルさん、どうやら魔法が凄く好きみたいだな
私も魔法は好きなので、これからたくさん話を聞きたいな
「じゃあ、ここから辿ってみますね」
ウィルティル「はい、邪魔をしないように静かにしておきます・・・・」
テンションが上がっていたウィルティルさんだったけど、口に両手を置いて
絶対邪魔しませんって態勢を取っている、かわいい
集中して、魔力を薄く地面に広げる、そしてガロルドの足跡を見つける
近くにあるのがきっとベルヌルトさんの足跡だろう
向かっている方向へ行き、また残滓を探す、辿っては残滓を探す
これをくり返す・・・・かなり大変だな・・・・
すべての足跡をたどるのは時間がかかりすぎるから、ある程度当たりをつけて
進んだ先で残滓を探してみる、うん、ここにもあるな
ってことはこの道をまっすぐ行ったに違いない
先へ歩いて行って、分岐がある所で残滓を探す、こっちだ
これぐらい絞って使っていくのが節約にもなるし、時間短縮にもなるな・・・
使い方のコツがわかってきた所で戦闘音が聞こえてきた
「せいやぁ!」「こっちだ!」「まだまだ!」
木刀での打ち合い、弓での訓練を行う訓練場のようだ
里からは少し離れた場所に、整備された広場があった
そしてガロルドも木刀で打ち合いをしている
相手はガロルドと同じくらいの体格の人だ・・・・
エルフの男性はみんな同じくらいの体型なんだけど、あの人は明らかにがっしりしている
遠目に見ればエルフとは思えない筋肉だし、身長も高い
ウィルティル「あの人が一緒に来られた方ですか?」
「はい、パーティを組んでいるガロルドです」
ウィルティル「男性と2人のパーティなんですか?・・・・・結婚されているので?」
「いえいえ、私はまだ未成年なので」
ウィルティル「未成年?!という事は10代という事ですか?」
「はい、14才です」
ウィルティル「14才・・・・いや、でももう少し待てば・・・」
なにやらぶつぶつと考えこんでしまった
ガロルドの訓練を近くで見ようと歩いていく
ビュッ!バシッ
「なにこれ?」
自分の視界ぎりぎりの横から矢が飛んできたので、掴んだ
飛んできた方向を見ると、にやにやと笑うエルフの女性だ、彼女が放ったんだろう
ウィルティル「な、何事ですか!?」
焦っているウィルティルさん
ガロルドの方へ歩いていたけど、その女性の方へ歩いていく
にやにやとしていたが、まっすぐに歩いて近づく私を見て顔色が変わってきた
目の前まで歩いて来て、止まる
明らかに睨んでいる女エルフに向かって掴んだ矢を差し出した
「飛んで来ましたよ?ちゃんと的を狙った方がいいですよ?」
にっこり優しく微笑んで矢を返してあげる
争う気はないですよぉー、怒ってないですよぉーって見せないとね
練習中なのだろう、仕方ないよね
女エルフ「なっ!お前を狙ったんだ!!人族め!!」
激昂してそう言ってきた
なんと!狙われていたのか・・・それなら話は変わって来るな・・・
ウィルティル「何てことを!はぁ、はぁ。この方は里長の客人なんですよ!はぁ、はぁ」
走って追い付いてきたウィルティルさんは息切れしながらも反論してくれた
ちょっとしか走ってないのに、息切れ・・・かなりインドア派なんだな・・・
「まあまあ、狙ったのだとしたらもっと練習した方がいいですね。練習中なのかも知れませんが、これでは魔物を狩るのも難しいのでは?良かったら教えますよ?」
にこにことしながら、友好アピールだ
争うつもりはないのだ、狙うのならもっと殺意たっぷりで狙って欲しい
あんなヘロヘロの矢では駄目でしょう
じゃないと反撃もできないではないか・・・・いや、争うつもりは無いんだけどね?
ウィルティル「練習中・・・・ぷっふふふ」
女エルフ「き、貴様!人族の分際で!!」
「?人族である事が今どう関係あるのかわからないので説明を聞いてもいいですか?」
なんでそんなに怒っているのか?嫌われるような事したかな?
女エルフ「うるさい!里から出ていけー!」
顔を真っ赤にして怒って、近距離で弓を引き絞って構えて威嚇している
ウィルティル「やめなさい!」
必死に止めようとしてくれるウィルティルさん
でも、私は微動だにしない
だってこの距離でも脅威ではない、バリアもあるしね
それに、今、この状況を見て笑っている奴らが何人かいる・・・・顔を覚えておかないとね
「そこまでだ」
私と女エルフの間に割って入ってくる男性
さっきまでガロルドと打ち合いしていた男性だ
女エルフ「ハシューム様!どうしてこんな奴を里に入れたんですか!」
ハシューム「口を慎め、里長の決定に納得がいかないのなら今から里長の所に行くぞ。失礼した客人」
「いえ、問題ないです」
ガロルド「本当に大丈夫か?」
「うん、全然へいき」
未だにプリプリ怒っている女エルフは、ハシューム様と呼ばれる人に腕を掴まれている
ごちゃごちゃうるさいから里長の家まで引っ張って行くつもりらしい
ガロルド「なんでこうなった?」
「うーん、ウィルティルさんと一緒にガロルドを探してただけなんだけど・・・急に矢が飛んできたから掴んで返してあげたんだよね」
ウィルティル「そうです!本当に急に飛んで来たんですから!」
ガロルド「この人は?」
「あ、書庫の番人をしているウィルティルさん。膨大な量の本の場所を全て把握してるんだって、凄い人だよ」
ガロルド「そうなのか・・・ガロルドだ、ルラとパーティを組んでいる」
ウィルティル「ウィルティルと申します。ルラさんの探し物をお手伝いさせていただきます。魔法の話などは大変気が合いそうなので、とても仲良くなれそうです」
ガロルド「・・・・・・・・・・・・ルラはまだ未成年だ」
ウィルティル「ええ、お聞きしました。若い者同士気が合いそうです」
にこにことしているウィルティルさんに対して、なんだか不愛想なガロルド
ガロルド「・・・・・・・若いのか?」
ウィルティル「ええ、まだ60才ですから。エルフ的にはまだまだ若いです。それに未婚ですし」
ガロルド「60はジジイだ」
ウィルティル「じ、じじい・・・・る、ルラさんもそう思いますか?」
「え?えーーーっと、人族なら高齢者の部類には入るかなーっとは思います」
ウィルティル「こ、高齢者・・・・」
凄くショックを受けてしまった
「あ、いえ、エルフでは若いんですよね!理解しています」
ガロルド「60はジジイだ」
「こら!ガロ!」
落ち込むウィルティルさんと、いじめるガロルド
普段こんな事言わないのに・・・・ウィルティルさんとガロルドは相性が悪いみたいだな・・・
ありがとござした!




