予知の神の神子姫
本当に不定期ですみません!
アラビアン・ナイトみたいな、砂漠の中にある街の中心に向かって歩いていると、玉ねぎ型の屋根の白い王宮が見えてきた。
オアシスの中心に建てた王宮は、水の青と建物の白とのコントラストが素晴らしい。屋根には金が使われているようで、太陽の光で輝いていた。
門番の前に行くと、エルヴィン王子の一言で私達はあっさり通される。
王宮までの長い道は、馬車を出されたのでありがたく乗らせてもらう。入り口まで歩いて三十分って言うんだもん。暑い中はきつい。オルは平気そうだけど。
馬車に揺られていると、ふと疑問に思う。
「ねぇオル、予知の神って、そんな簡単に加護とか与えるもの?」
「滅多にないことだな。予知の神の加護は聞いたことがない」
「そういう人達って危なくない?先のことが分かるって……」
「ああ、利用されるな。この国で神子が見つかった時に王家が娶るのはそういう理由でもある。国で保護したほうが悪事に利用されづらい」
「それって……」
「国家機密だろう」
「じゃあなんで……」
オルと私はエルヴィン王子を見る。彼はそっぽ向くと、吹けもしない口笛を吹いている。
「おいお前……」
「いやいや、オルフェウス殿は王族みたいなものだろう?」
「お前、王族間の機密をあっさり言いやがったのか」
「あはは」
王子の乾いた笑いは、砂漠特有の乾いた風に乗って響いた。
王宮から離れた一角にある平屋の建物に、私とオルは通された。
白に金の王宮に比べ、同じ白い建物にしてはあるけど、シックな建物になっている。
そこにいたのは、同じくシックな衣装にビアン国特有の布を体に巻きつけてる年配の女性だ。白髪だが顔は日本人特有のあっさり顔だ。やっぱり転移者か。私と同じ。
そして魔力も高くなったから寿命も長いのだろう。
エルヴィン王子は、その女性の前に跪き、ビアン式に礼をとった。
「お祖母様」
「えーと…」
「エルヴィンです」
「ふふ、嘘よ。お久しぶりねヴィー。無事連れて来たようね」
え?連れて来た?
私とオルの視線を感じたらしいエルヴィン王子は、バツの悪そうな表情をする。
「あー、ごめん、知ってたというかなんと言うか……お祖母様の予知で見られていた通りだったみたい」
「ヴィーの事だから忘れていたんでしょうね。それで良かったんだけど」
コロコロと笑うその女性は、とても魅力的に見えた。年齢は分からないけど若々しく感じる。
いいなぁ、こうやって私も年をとりたい。
「はじめまして、救国の騎士オルフェウス・ガードナー殿、その伴侶のエンリ殿。私はこの国の先代王の妃で、サクヤといいます」
私達は慌ててエルヴィン王子と同じく礼をしようとしたら、「それはいいわ」と止められる。
「同郷の貴女がいるのに、礼なんていらないわ。私の事はサクヤと呼んで」
「サクヤ様…」
「様も禁止」
「サクヤさ……ん」
「それなら良いでしょう」
コロコロと笑うサクヤさんは可愛い。私も嬉しくなった。
オルも緊張していない良い感じだ。ここには危険がないって事ね。
「でね、私はこの国に関することしか予知は出来ないの。ヴィーがあなた方に関わったからここに来ることは分かったのだけど」
「ふむふむ。では灰色の動向は分からないと?」
「ああ、あれねぇ。この国にはもう来ないわね」
のほほんと答えているサクヤさんにオルと私はちょっとガッカリしたけど、次の言葉に顔色を変える。
「でも援軍の要請がビアン国に入ってくるわ。一週間後にエルトーデ王国から」
私の空間魔法で、ビアン国からエルトーデ王国の王都に一瞬で移動する。
一週間後に起こることはほとんど分からない。オルがクラウス君連絡を取り合うも、サクヤさんに予知では『北の竜族が反乱を起こし、エルトーデ王国に攻めてくる』とのことでの援軍要請だった。北に守りを固める為、南で何か起こらないようにしてほしいという事だろうと。
「情報が少ねぇ」
「そうだね。精霊の森は大丈夫なの?」
「そこは元勇者がいるし、連絡取り合ってるから大丈夫だろう」
「そっか……それにしても竜か……」
拠点にしている宿屋の中で、私達はクラウス君を待っていた。サクヤさんからもらった情報を、城の方で精査しているらしい。時間がないっつーのに……って思うけど、ちゃんとした手続きをせずに国家機密なサクヤさんと会ってしまった私達も悪いよね。
「せめて俺に一言くれれば良かったのに」って、クラウス君に愚痴られたし。サーセン。
「邪竜なら一撃で討伐出来るが、邪ではない竜族は厳しいな。操られている可能性があるってことだろ」
「殺さないようにって、難しいよね……」
「奴らは強いからな」
強者に対するオルの顔は真剣そのものだ。そんな整った横顔に見惚れつつも、私は「何が出来るのか」をひたすら考えているのだった。
お読みいただき、ありがとうございます。
体調が回復すればもう少し……




