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湯上がりに滑ったら7尺4寸の魔王の夫になりました。魔力ゼロの傭兵がハイテク冷戦を歩む方法  作者: Isuzu Toyota
始まり

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9/18

四十の迷宮、仕掛けられた死線

洞窟の奥へと進む松平春希と第四武装中隊の仲間たち。彼らの前に現れたのは、無数の空洞が蠢く網の目のごとき大迷宮でした。魔力を持たぬ春希の超人的な直感と、仲間の魔術が試される時。四方から襲いかかる致命的な魔法の罠を潜り抜け、彼らは生きて最奥へと辿り着けるのでしょうか。


闇副官の命令に従い、6つの小隊はそれぞれ異なる洞窟の亀裂へと散っていった。春希、マツダ、イコネ、コハツの4人が辿り着いたのは、まるで巨大な生物の体内のように無数の穴が穿たれた、恐るべき大迷宮の入り口だった。そこには40数箇所にも及ぶ不気味な空洞の迷宮路が網の目のように分岐し、最奥の部屋へと続いていた。

「40以上のルートか……あの大魔導士、引きこもりの割に随分とマメな迷路を作ってくれたもんだぜ」マツダが重い大盾を構え直しながら呟いた。

イコネが携帯用の魔力測定器を覗き込み、顔を青くした。「冗談言わないでください、マツダさん。この壁面全体から異常な密度のトラップ魔術の残滓が感知されます! どこを踏んでも即死トラップだらけですよ!」

「ヘッ、魔力ゼロの春希が先頭で涼しい顔してんだ、俺たちがビビってられるかよ」コハツが軍刀を抜き、ゴクリと唾を呑んだ。

春希はいつもの飄々としたノンシャランな態度のまま、ただ静かに暗闇を見つめ、『エオン』の呼吸で五感を極限まで研ぎ澄ましていた。魔力が見えないからこそ、彼は空気のわずかな振動、湿度の変化、地面の傾きといった純粋な物理的違和感を天才的な反射神経で察知できるのだ。「文句を言っても道は縮まない。行くぞ」

彼らが1つ目の通路に足を踏み入れて数分後、最初の罠が牙を剥いた。

カチリ、と床の石板がわずかに沈む。

「伏せろ!」春希の鋭い声と同時に、彼の強靭な腕がイコネの首根っこを掴んで地面に叩きつけた。

直後、左右の壁面から**マナによって超高温に加熱された激しい火炎の奔流(フレイム・ブラスト)**が噴出し、彼らの頭上を焼き尽くした。もし春希の超人的な反射神経による警告がなければ、イコネは一瞬で灰になっていたところだった。

「ひっ、ひえええ! 助かった……!」イコネが冷や汗を流しながら叫ぶ。

「休む暇はなさそうだぞ!」マツダが叫んだ。炎の明かりに照らされた通路の先から、天井の闇を裂いて**3匹のオホン(怪鳥人間)**が鋭い爪を剥き出しにして急降下してきたのだ。迷宮を守る防衛機構が連動したのだ。

「ここは俺が食い止める! コハツ、イコネ、援護しろ!」

マツダが前方に躍り出ると、自身の武器にマナを注入し、大盾の表面に頑強な**大地の防護魔法(アース・シールド)**を展開した。突進してきたオホンの強烈な爪撃が大盾と衝突し、凄まじい火花が散る。すかさずコハツが風の魔術をまとわせた鋭い突きを放ち、1匹の翼を貫いた。

「しゃあ! 可愛い女の子じゃねえが、容赦はしねえ!」コハツが叫ぶ。

しかし、3匹目のオホンは彼らの連携をすり抜け、無防備なイコネの背後へと回り込んでいた。

「しまっ――」イコネが恐怖に目を見開く。

その瞬間、影が走った。灰鉄の甲冑を響かせながらも、無音に近い超高速のステップで回り込んだ春希だった。

春希は『エオン』の体術によって跳躍すると、マナによるエンチャントなどない、純粋に完璧なタイミングの抜刀術を繰り出した。鋭い一撃のもとにオホンの首筋を一閃し、その巨躯を岩壁へと叩きつけた。

「ふぅ……相変わらずとんでもない速度だな、春希」マツダが残りの敵を圧倒しながら感心したように息を吐いた。

部隊はその後も、歩みを進めるごとに大魔導士の容赦ない罠に遭遇した。触れた瞬間に肉体を凍りつかせる氷結の呪いの霧、天井から崩落してくる巨石、さらには精神を狂わせる幻覚の霧(サイキック・イリュージョン)。しかし、その都度、春希の驚異的な物理直感と、仲間たちの魔術連携によって、彼らは一歩一歩、確実に迷宮の罠を無力化していった。

激しい戦闘と数々の死線をくぐり抜け、彼らが暗い通路を進み続けて数時間が経過した頃、前方の視界がにわかに開け始めた。四十の迷宮路の網の目がついに収束し、その出口の向こうには、淡い紫色の魔法の光に満ちた巨大な最奥の空間――『大魔導士の主室』の気配が漂っていた。

春希は軍刀の血を払い、鞘に収めると、引き締まった横顔でその光を見つめた。終わりの見えなかった大迷宮の出口が、すぐ目の前に迫っていた。


第9話をお読みいただき、本当にありがとうございました!

四十ものルートが存在する大迷宮での死闘、いかがでしたでしょうか。周りが魔法でエンチャントや防護壁を作る中、純粋な反射神経と身体能力「エオン」だけで罠を見抜き、オホンを一撃で仕留める春希のアンダードッグとしての強さがさらに際立つ章となりました。マツダやコハツたちのコミカルでありながらも頼れる連携もバッチリ描けましたね。ついに迷宮を突破し、目の前には老魔導士の待つ主室が迫っています。第10話からは、いよいよ全小隊が合流しての大魔導士&罠の総力戦が始まります!次回もぜひお楽しみに!

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