金剛の遺志、英雄の剣
数々の死線を潜り抜け、ついに「無限の聖杯」を手にした松平春希。老魔導士の降伏によって任務が達成されたその瞬間、さらなる奇跡が彼を待ち受けていました。数千年前にこの世界に存在した、同じく「魔力ゼロの来訪者」である伝説の戦士の遺産。春希の手へと委ねられる、真の英雄の剣の物語です。
老魔導士の静かな問いに対し、春希は腰の軍刀をしっかりと鞘に収め、引き締まった横顔で真っ直ぐに見つめ返して「松平春希。地球の日本という場所から来た」とそのフルネーム(全名)を告げると、神秘的な青い光を放つ『無限の聖杯ゴブレット』をその手にしっかりと握りしめた。その時、老魔導士の瞳の奥に深い確信の光が宿り、彼はゆっくりと立ち上がると、部屋の最奥にある、幾重ものマナの障壁で厳重に守られた美しい石の箱ケースへと歩み寄って「待ちなさい、少年。お前に、もう一つ与えるべきものがある」と告げ、複雑な呪文を唱えてマナの防護壁を静かに解除し、箱の中から一振りの古風な刀剣を両手で恭しく持ち上げた。その刀身は驚くほど細身でしなやかであり、表面は鏡のように滑らかで、春希がこれまでの人生で一度として見たことがないような、神秘的で深みのある青い輝き(ブルー・ティンジ)を静かに放っていた。「『金剛ヴァジュラの剣』じゃ」老魔導士は厳かに語りかけた。「数千年前、この大陸に生きていた伝説の無双の戦士、ヴァジュラの獲物である。彼はのちに、この世界を歩んだ仏陀の『個人親衛隊長パーソナル・ガード』を務めた男だ。そしてお前と同じように、彼は生まれつきマナを一切持たない『来訪者アウトランダー』であった。この剣に秘められた力は計り知れん。マナと相互作用するのではない。その物理的形態に絶対的かつ無限の密度を宿しておる。魔法攻撃が命中したとき、この刃はエネルギーを吸収するのではない――魔法の原子的結合を完全に粉砕し、その魔力を純粋で生々しい運動エネルギーの衝撃波へと激しく屈折させ、鋼の内部に直接蓄積するのじゃ。魔法を砕けば砕くほど、内部の運動圧力は破壊的に増していく。その剣先を地面に一度『コツン』と軽く叩きつけるだけで、蓄積された運動圧力を解放し、お前の意志のまま、大地を割る凄まじい大地震アースクエイクを巻き起こすことができるのじゃ。さらに重要なのは、この剣は自身が認めた『正当な所有者』しか持つことができぬということじゃ。もしそれ以外の者が傲慢にもこれを握り、持ち上げようとすれば、剣そのものの質量が雷撃のごとき破壊力でお前の手を押し潰すことになる。特に、邪悪なマナ(悪意ある魔力)を持つ者であればなおさらじゃ。魔力を持つ者がこれを使えば、己のマナを徐々に吸い尽くされ、いずれ破滅する。ゆえにこの剣は、『ヴァジュラの真の正統後継者』の手にしか収まらん。……正式なマナを一切持たず、この溢れる知性と強靭な肉体を持つお前こそが、その継承者であると私は確信している」と、その奇跡の剣を両手で差し出した。春希は静かに手を伸ばし、数千年の時を超えて彼を待っていた、青く輝く『金剛の剣』の柄へとその指先をかけた。春希の指先が柄に触れた瞬間、刀身から眩いばかりの鮮烈な輝き(ブライト・グロウ)が放たれ、続いてパチパチと青い稲妻のような微かな火花フェイント・スパークが剣全体を駆け巡り、数千年の眠りについていた伝説の武器が新たな主の目覚めを祝福した。「おおお……っ! 剣が、剣が共鳴しておる! 間間違いない……剣がお前を受け入れたのだ! 松平春希、お前こそが伝説の英雄、金剛ヴァジュラの真の正統後継者じゃ!!」と老魔導士は驚愕のあまり声を震わせ、歓喜の叫びをあげた。春希自身、この体中に走る未知の衝撃を到底ファザム(理解)することができず、凄まじい驚きと衝撃を同時に受けて硬直していた。魔力を持たない自分の手が、世界を揺るがす奇跡を呼び起こしたのだ。大魔導士との厳かな敬礼と別れの挨拶サルーテーションを終え、春希は『無限の聖杯』をしっかりと抱え、新しく手に入れた『金剛の剣』を誇らしげに腰の鞘ヒルトへと収めて歩み出すと、通路の先では副官の川口闇と巨漢のマツダが満面の笑みを浮かべて待っており、「最高の戦果だな、少年! いや――突撃兵・春希! お前ならやってくれると信じていたぞ!」とマツダは春希の肩を豪快に叩き、闇副官も「見事だ。お前は我が第四中隊の誇りだ」と深く頷いた。彼らは生き残った他の小隊の兵士たち、そしてレベル8の魔導士タマゴチと共に、荒ぶる北海岸へと繋がる洞窟の外へと出た。帰路につくための船の準備が進む中、タマゴチは春希の腰の青い剣を見つめながら興味深そうに「春希、その剣……ただの鋼ではありませんね。周囲の空間をピリピリと震わせるような、奇妙な『重量の引力』を感じます。まさに君のような『魔力ゼロ』の存在にしか扱えない、大いなる謎の武器だ」と話しかけてきた。すでに春希の立てた大金星と、伝説の剣に選ばれたという噂は部隊全体に瞬く間に広がり、彼は第四中隊全体の注目の的トーク・オブ・ザ・カンパニーとなってた。夕暮れの菫色の空の下、春希は腰の青い剣の柄をそっと撫で、胸元の家族の写真のキーホルダーを確かめた。魔力ゼロの孤独なアウトランダーの、世界を救う伝説の第十二話が、ここに堂々の完結を迎えたのだ。
『無限の聖杯編』を最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!
失恋のどん底から異世界へバスタオル一枚で放り出された松平春希が、魔力ゼロという絶対的な逆境を跳ね除け、伝説の『金剛の剣』を手に入れるまでの物語はいかがでしたでしょうか。マツダ、イコネ、コハツというかけがえのない戦友たちとの絆、そして「レモンを投げつけられたら、ジュースを作ればいい」という教えを胸に、春希の正規兵としての歩みはここから本格化します。
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