第1話:夢なら何をしても許される(はず)
「なんだここ。明らかに日本じゃないな。ははっ、これは夢か。ラノベかっての、くだらな」
見渡す限り青々とした草木が広がる、見覚えのない森の広場。異世界転生? あるわけがない。そんな都合のいい妄想にすがるのは、現実の人生が詰んでいる限界オタクのやることだ。
頬をつねる度胸もなく、とりあえず「これは脳が見せている極上の白昼夢だ」と都合よく脳内変換を完了させた。その時
「えっと……大丈夫ですか?」
草むらを分けて現れたのは、木漏れ日を浴びる一人の少女だった。素朴だが可愛らしい服を着た、まさにファンタジー世界の村娘といった風貌。
だが俺の視線は彼女の顔には向かわなかった。顔の造形など二の次、三の次だ。二次元の美少女に慣れきったオタクの目が、今さら三次元の顔面にときめくはずもない。
俺の目は彼女の足元、革の質感が素晴らしいショートブーツに釘付けになっていた。
(うおっ……! ショートブーツかよ……! あのキュッと締まった足首からチラ見えしてる脛へのライン、最高すぎるだろ……!)
思わず膝をつき、舐めるようにジロジロと足を観察する。夢の中とはいえ、我ながらキモい視線だという自覚はある。現実ならネットに晒されて社会的に抹殺されるレベルの不審者ムーブだ。だが止められない。革の隙間から覗くわずかな素肌、動くたびにしなる足首の角度……どこをとっても満点だ。
「あの……何か、私の足に付いてますか……?」
村娘は不審そうに自分の足元を見下ろし、小さく身を縮める。その困惑した表情すら、俺の足フェチ心を刺激してやまない。
(どうせ夢だ。夢なら何したっていいだろ。目覚めたら自分の部屋で、薄汚いオタクの部屋の天井を眺めるだけなんだから。今のうちに楽しまなきゃ損だ!)
欲望に忠実になり、思い切って彼女を見上げた。
「あのさ! そのショートブーツ脱いでよ。足を揉ませてくれないかな!?」
直球すぎるお願い。現実なら即通報、一発アウト、前科一犯の変態発言だ。さて、夢の中の彼女はどう反応する?悲鳴を上げて逃げるか、平手打ちか、あるいは悪夢らしく化け物に変身するか。
「えっ……! ほ、本当に私の足を……愛でてくれるんですか!?」
村娘はパッと頬を赤く染めると、信じられないものを見るような、それでいて期待に満ちた目で俺を見つめ返してきたのだった。




