60.心の奥に刺さって抜けなくなるヤツ
遺跡内を全員が抜け出すとそれを待っていたかのように遺跡は入り口も巻き込んでガラガラと崩壊してしまいました。これで本当にあそこに残された人たちは助かることは無くなりました。残念です。
蘇生魔法的なものも存在はするのですが残念ながらあれを使うには特別なアイテムで猶予を伸ばさない限り外的要因による死後直後に限るそうです。そして当然といいますか唱えてポンと復活するわけでもなく通常の魔法と比べて時間がかかるものなのであんな場所で使おうものならみんなまとめてさようなら…
大手RPGのように一瞬でよみがえらせる手段でもあったら良かったんですけどね。やはりというかこの世界はなかなかに世知辛いようです。
「騎士団長!中で一体何が…」
おっと、外で待機していた騎士たちが来ましたね。外に居た人たちは…若干傷を負っているみたいですね?なぜ…あ、ちょろちょろと蟲の死骸がある…もしかしていつのまにか外にも溢れてきてたんですかね?
流し見でキャンプを見渡すと10匹程度の虫の死骸が転がっている。油断はしていなかったのであろうがおそらくは不意を突かれたのだろう。
「お疲れ。外も大変だったみたいだね。そうだね…簡単に言うとあの遺跡はダンジョンだった。で、コアをアルバが壊したからそれで崩れたって感じだよ」
カイさん?ちょっとざっくりしすぎないですか?あまりにもさっぱりしすぎててその人もはい?って顔してますよ?
「あ~、俺が補足しておくからお前らは休んでろ。ちょっとあっちでいいか?」
そういうとウィルニキは少し離れた木の傍まで外の騎士と話に行きました。まぁ中にいた身としては休む間はあの話聞きたくないですしね。…あぁ~どうしよっかな。…まぁ私ぐらいしか話に行ける人はいないだろうし…ちょっくら話してきますか。
私は騎士団とは少し離れたところに集まっている3人の元へ近づくと3人はすぐに気づいて頭を上げました。
「みなさん本日は…お疲れ様でした」
「…おう。騎士さんたちも頑張ったな」
「その…ゼナスさんたちは…」
「…いいの。僕たちだってこういうのはいずれあるって分かっててこのお仕事してるから」
「はい。悲しいですが、みなさんいずれはこうなると思っていましたから」
…本当に申し訳ねぇなぁ…己の無力を呪うばかりです。私たち騎士団がお守りするって言っておいてこの体たらく…
「…この度は誠に申し訳ございませんでした。私たちはあなた方をお守りするのが今回の任でありながら…パーティーリーダーを含め半数を死なせてしまうとは」
私が深々と頭を下げると聡明の鏡筒の皆さんは少し戸惑いつつも受け入れてくださりました。
「…私どものことが憎いとは思わないのですか?」
「そんなこと思うわけねぇだろ。さっきも言ったが俺たちはいつかはこうなるって覚悟してたんだ。それに騎士さんたちはそのあとも俺たちを必死に守ってくれたじゃねーか」
「そうだよ!むしろ僕たちだけでも生き延びれたんだから十分やってくれたよ」
自分のやるべきことをきちんとできなかったのにこうも優しくされると…胸がキュッと絞まります。
不肖このアルバ、求められれば腹を斬って詫びるつもりでありました。
「そんな落ち込まないでよ騎士さん!そんなにずっと悲しまれたらリーダーたちに失礼だよ!」
小柄な女性の方がぷりぷりと怒ってくる。そう…そうですよね。こっちの世界なら…そういう価値観ですもんね。
「…これは失礼しました。こほん、それでは改めまして源流騎士団へのご協力に感謝いたします!」
最後にがっしりと握手をして三人に別れを告げました。もちろんあの三人には向こうかたの領主さんからの報酬とは別でお礼をするつもりです。
この後は全員が帰る前に遺跡の前で黙祷を捧げ、聡明の鏡筒の3名を無事にギルドまで送り届けてから我々も家に帰りました。
まさかこんな殺意の高い仕掛けいっぱいのダンジョンだったなんて…これは報告書を作るのが大変そうですよ…最後の私の単独行動してしまった件も話さないといけませんし…何より…
馬車に揺られながら懐から日記を取り出す。
こんなもの見つけちゃいましたからね…はぁ…これ絶対めんどくさいだろうなぁ
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「アルバ…ちょっといい?」
報告書用の羊皮紙から顔を上げると扉からお嬢様が顔を出していた。かわいい。どうしたのかな
「どうかしましたかお嬢様。私でよければなんでもおっしゃってください」
「ありがとう…少しだけ話をさせて」
リーシャお嬢様を招き入れ、イスに座っていただく。配下的にはこんなthe普通のイスに貴族の娘を座らせてしまうことに若干の申し訳なさを感じる。お嬢様ごめんなさい。お小遣いにもう少し余裕出来たら良いイス買っておきますんで…
「それで…話とはなんでしょうか?」
「アルバ…昨日の任務で騎士団の人が死んでしまったって本当なの?」
ギッッッッッッッッッックッッッッッッ!!!!
「おやおやお嬢様…一体誰がそのようなご冗談をっ…」
「私聞いたのよ!7人…死んでしまったんでしょ…?」
ああぁもうやばい。お嬢様の不安そうな顔に少し涙の浮かぶ目を見ただけで本当に死んでしまいたくなる。私の身体の中に残っているのはもはや魔力ではなく罪悪感なのかもしれない。
「お嬢様…」
「昨日…アルバ達が帰ってきてからよく見る人の顔が見えなかったの…すっごくまじめな小隊長さん…優しい町のお兄さんみたいな人とか…」
お嬢様の言葉に思わず天を仰いで顔を手で覆う。もうまじこれ見てらんねぇよこれぇ!!お嬢様の顔が見れねぇよこれぇ!!!お前こんなちっちゃくてかわいい女の子の泣きそうな顔みて心が苦しくならない訳ねぇだろッッ!!
「やっぱり…そう…なのね」
「…スーッお嬢様。それについては…紛れもなく事実でございます」
私がそういうとお嬢様はイスから立ち上がるとバッと私の胸に飛び込んできた。色々言いたいことが浮かびあがってくるんだけどッッッッッッ!!!!!
「なんでっ…!なんで死んじゃうのっ!!みんないい人だったじゃない!どうしてっ!どうしてなのっ!」
膝にぽろぽろと涙が落ちてくるのが感じます。ええ、それと同時に私の心もガリガリと削れております。もう何言えばいいかわかんない
「…お嬢様。以前申し上げた通り私共は常日頃から危険と隣合わせの仕事をしているんです」
「でもっ!でもそれが今なのはおかしいじゃんっ!!それがあの人たちが死んじゃっていい理由にはならないじゃん!!」
ええ、そうですね。それは本当にわかります。仲間が死ぬのってこんな早い段階でやっていい展開ではないと思うんですよ。脚本家に人の心とか無いんかって言ってやりたくなりますよね。分かりますよ
「…申し訳ありません。皆さんを助けることが出来ず」
「うわぁぁぁん!!!」
残念ながら私にはこういうときに舌の回る男でないので…ただ黙ってお嬢様を抱きしめてなでることしか思いつきません。謝るのも違うかもしれません。でも…ただの一般人にはこういうときにどうすればいいのか分からんのですよ。
十分ほどが経った頃でしょうか。私の膝の上に座るお嬢様は泣き止みましたがまだ少ししゃっくりが収まらないようです。ひっくひっくとなってるので軽く背中を撫でます。
「…ごめんね。アルバに言ってももうどうしようもないのにね」
「そんなことはありませんよ。こうして吐き出してくれたではありませんか」
「…っく。うん、ありがとう」
はぁ~ほんとこういうときの慰め方を誰か教えてほしい。私恋愛ドラマは全然みたことないから女の子を泣かせたときどうすればいいかわかってないのよ。
「…そうよね…異世界…なんだから…日本みたいに…」
「お嬢様?何か仰りましたか?」
「う、ううん。ただの独り言なの」
「そうでございますか。あ、よろしければお茶を飲んでいかれますか。暖かいものなので落ち着きますよ」
「ひっく…うん、飲む」
よいしょっと。お嬢様を膝から降ろして机の上で保温を掛けていたポットからお茶を注ぐ。(ちょっとお嬢様に使わせるにはさみしいシンプルな)カップの中に暖かく落ち着く香りのするお茶が流し込まれる。
「どうぞ。冷ます必要は無いと思いますが火傷しないようお気を付けください」
「ありがと。…いいわね…ほんのりと甘くて…ふわふわする香り…」
私の記憶だと元の世界のルイボスに近い感じのお茶なんですよねこれ。まぁこっちは薬草ですけど
「こく…こく…おいしい…!私が普段飲んでいるのよりクセが少ないのね。これなんて言うの?」
「実をいうと名前は知らないんですよね。冒険者の時に出来た縁を使ってギルドの職員さんが飲んでいるのを頂いているので」
「なにそれ。アルバってほんと変わってるわね」
私の言葉にようやく笑みを浮かべてくれるようになりました。ふっ、やはり泣いたときはあったかい飲み物を飲ませるというこの手に限る。(※本当にこの手しか知りません)リーシャお嬢様のお顔に涙なんて似合いませんからね。えぇそうですとも!子供には笑顔が一番似合いますからね!
「…さて、お嬢様。そろそろ良い時間です。貴女様はそろそろお眠りに…あれぇ?」
いつのまにかお茶を飲み切ったお嬢様はすーすーと寝息を立てて夢を見てしまっているようです。まぁリラックス効果のある飲み物を飲んだし、泣き疲れてしまったのもあるんでしょうね。時間も時間ですし、部屋まで送ってあげますか。あ!誤解の無いように言っておきますけど睡眠薬なんか入れてませんからね!?ホットなティーだけど!
そう考えているとこんこんとドアをノックする音が聞こえる。
「はい。どうぞ」
「失礼しますアルバ様」
おっと、エリナさんでしたか。こんな夜遅くまでご苦労様です。
「エリナさん。どうかしましたか?」
私の問いにエリナさんは少し苦笑しながら答えた。
「お嬢様の泣く声が聞こえまして…近くで様子を伺っていたんです。静かになったのでもしかしてと思い」
「なるほど、そういうことでしたか」
「執務中にもかかわらずお嬢様の相手をしていただきありがとうございますアルバ様」
「とんでもない。そうだ、せっかくなので私がお嬢様を部屋までお運びしますよ」
「いいんですか?私の仕事ですが…」
「こういうときぐらい頼ってください。女性に力仕事をさせるのなんて申し訳ないですよ」
「ふふっ、それではお願いしますね。部屋までご案内します」
はいはいお任せくださいとも、推しのためならなんだって頑張っちゃるけんね。
イスの上で静かに眠るお嬢様を起こさないよう気を付けながら持ち上げる。うっわっかっっっっるっっっっっ!大丈夫これ?ちゃんと生きているよね?あまりにも軽すぎて持っているのが命かどうかわからなくなったんですけど。私が守護らないと…(使命)
私の腕の中で寝るお嬢様の顔は年相応のあどけない寝顔です。普段は年齢の割に大人びているといいますか大人すぎるといいますか。背伸びしてるように感じてるんですけどね。今は本当にただの子供だなって思いますよ。お姫様抱っこで眠れる姫を運ぶ騎士の姿といえばまさにファンタジーらしいじゃないですか。
「よく眠っていらっしゃいますね」
「あれだけ泣けばそうなりますよ。暖かい飲み物も飲んだので明日まではぐっすりかと」
「アルバ様はこういったことにも知識があるのですね。なんだか本当に人間みたいです」
「冒険者ギルドの人に教えてもらったんですよ。たまに職員同士で息抜きに出かけたときとかにお酒が進んだりしてこうなることがあるって」
「なるほど」
嘘っぽいなって?いやいやちゃんとそういうエピソードもありましたからね?まぁ…いつか幕門みたいな感じで語りますよ。いつかね。うん、嘘じゃないよ。ちゃんといつかは話すから。うん。今はまだその時ではないとだけは言っておきますけど。




