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きゅうじゅうきゅう
重荷を背負ってわざわざ山を登る。
自己対話の場所を探した結果だった。
刺激に晒され続けて、自己知覚も曖昧になってきた。
違和感に気付いた時には既に遅く、頭も腹も悲鳴を上げている。
前兆は本当になかったか?
会話どころか、自分自身の姿すら見えていないではないか。
ソーシャルメディアの虚構に心血を注ぎ込む現代。
この虚構が創造者にとって慰めになるのか、観る者の心を変容させるのか。
いまこそ、自己で完結できる潔さと簡素さも必要だろう。
息を切らして木々を見上げ、その美しさに心が癒される。
自身の呼吸音や心拍にリズムを感じる。
やっとこれで言葉を交わせそうだ。
私の中でわたしの声が響いていた。