第一章12 『首都への近道』
ステラは両手で目を覆った。
「お、お兄ちゃん怖いよ!!」
「ちゃんと掴んでる、怖がるな!」
ブリアンナが近くまで飛んできた。
「円香、本当に大丈夫なの? 他の王国へ向かった方がいいんじゃない?」
考え込みながら、円香は手で口元を隠して欠伸をした。
「いや……それはあまり良い考えじゃない気がする……」
自分でも理由は分からなかった。
だが、罪悪感なのか、それとも復讐心なのか、何かが彼をあの場所へ引き寄せていた。
「じゃあ仮に、私たちが王都へ入れたとして……あなたがいない間、私はどうすればいいの? もしかしたら、私は裏切り者扱いされてるかもしれない……」
「全部お前の作戦だったって言えばいい。そして、お前が俺を倒したって」
ブリアンナは思わず口元を押さえた。
「わ、私は……そんなことできない!!」
円香の声はいつもより強かった。
「頼む、ブリアンナ。それは俺のためにもなるんだ!! みんなが俺を死んだと思えば、俺も目立たなくなる!」
「でも、証拠を求められたらどうするの!?」
円香は指を鳴らし、再びスーツを身に纏った。
そのまま片手でステラを支えながら、勢いよくマントを引き裂く。
「きゃっ!!」
「ちゃんと支えてる!」
ブリアンナは差し出された布切れを見る。
「え……? 何のために!?」
「証拠だ! あの陰気な女にでも見せればいい」
『俺のスーツが……。まあ、作戦のためだ……。予備があって助かった……。じゃなきゃ絶対こんなことしなかった……。スーパーヒーローにとってスーツは全てなんだ!』
ブリアンナは破れたマントを受け取り、エリオットの鞍に掛けられているポーチへしまった。
「やっぱり気に入らないわ! どうして学院に入りたいの?」
『ここの英雄を見てみたいんだ!!』
「お前たちの言葉の読み書きを覚えるためだ。それに、新しいことも知りたい」
ブリアンナは俯きながら言い淀んだ。
「私……ずっと待つことになるのね……」
「ん?」
「ゲルフィルド学院は規則が厳しいことで有名なの……。入学するには選抜試験を受けなきゃいけないし、卒業まで五年かかるのよ!」
「まあ……そこまで長くはないだろ……」
「長いわよ! 学院の生徒は、教師の付き添いや学院が計画した外出以外では、在学中ずっと敷地の外へ出られないの!」
「え? なんでそんな詳しいんだ?」
「私、そこに通ってたの!!」
その時、ステラが円香の耳を引っ張っていることに気づき、彼は彼女を見た。
「ステラ……どうした?」
「お兄ちゃん!! 私も学院に行きたい!!」
ステラは顔を赤くしながら、少し言いづらそうに視線を逸らした。
「お前が? なんで?」
「私も字が読めないもん……」
『まあ……それを責めるのは違うよな……』
「ブリアンナ、新学期はいつ始まるんだ?」
「運がいいわね……。あと一ヶ月で新学期が始まるわ。長期休暇でも、生徒は外へ出られないの。親に会うことすらほとんどできない……。つまり、円香が入学したら……私たち、五年間離れ離れになるのよ……」




