表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
スーパー新世界:スーパーヒーローが異世界に転移した物語  作者: 佐藤蓮
佐野円香

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1/7

第一章1 『 焦るな』

佐野円香――スーパーヒーローである彼は、相棒の松本美緒とともに放課後、任務のため本部へと向かっていた。

だが、その道中で起きた不可解な出来事が、円香の運命を大きく変えることになる。

東京には、近頃になってスーパーヒーローたちの本部がそびえ立っていた。

 彼らは必要な時、その能力を用いて市民たちが直面する問題を解決している。

 その一人が、佐野円香さの まどか――中学生の少年だった。

 スーパーヒーローにも教育を受ける権利はあり、普通の学生と同じように学校へ通っている。


「……疲れた」


 放課後、円香は重たい足取りで本部への帰路についていた。

 一瞬で空へ飛び上がり、そのまま目的地までひとっ飛びしたい。

 そんな欲求に駆られていたが、日常生活で能力を使うことを禁じる規則が、今日に限ってひどく恨めしかった。


「まどかぁぁぁーっ!」


 背後から少女の叫び声が響く。

 次の瞬間、ヒュッ、と風を切る音がしたかと思えば――


「うわっ!?」


 同級生の少女が円香へ勢いよく突っ込み、その衝撃で彼は吹き飛ばされた。

 疲労で踏ん張ることもできず、地面を何度か跳ねながら、彼女から十六メートル先まで転がっていく。

 気づけば、目の前には民家の塀。

 しかもそこには、見事なひびが走っていた。


「くそっ、松本! お前のせいで、どこかの家の塀に突っ込んだじゃないか!」


『頼む……家主、いませんように……』


「別にいいでしょ、それくらい。塀なんてどうでもいいの。問題なのは、あたしを置いて先に帰ったこと!」


 びしっ、と彼女の人差し指が円香へ向けられる。

 その“照準”の先に立つのは、なかなか危険だった。


「それと、何度も名前で呼んでって言ってるでしょ!!」


 少女――松本美緒まつもと みおは、子供のように頬を膨らませた。

 円香はひび割れた塀を見ながら、大きくため息をつく。


「わかったよ、美緒。でも、このひびの件で僕ら二人とも氷莉先生に怒られるぞ。能力を使うなって言われてたし」


 美緒の桃色の髪が肩にかかり、風に揺れてさらりと流れる。


「心配しすぎよ」


 青い瞳がきらりと光った。


「あたしたちは世界最強なんだから。なんで普通の人間の言うことなんて聞かなきゃいけないの?」


「美緒、またそれか……」


 円香は塀に手を置き、すぐに離した。


「だって本当でしょ? あたしたち、まるで奴隷みたい。

「美緒、出動しろ」

「美緒、あれをやれ、これをやれ……もううんざり」


 ぴくり、と彼女の眉が動く。

 疲れていたはずの円香だったが、美緒と顔を合わせた途端、妙に目が冴えてしまっていた。


「……まあいいや。行こう、本部へ。お腹すいたし」


「え?」


「早く」


 円香は再び深いため息をつき、変わり者の友人の後を追う。

 その前に、壊れた塀へちらりと視線を投げた。

 二人は道路沿いの歩道を並んで歩いていた。

 すると、不意に美緒が足を止める。

 少し遅れて気づいた円香も立ち止まり、肩越しに彼女を振り返った。


「ねえ、円香……」


 その声音は、妙に甘い。


「どうしたんだ、美緒?」


「……と、飛んで帰ろ?」


「駄目に決まってるだろ。氷莉先生に見つかったら――」


 美緒は指に髪をくるくる巻きつけながら、ほんのり頬を赤く染めた。


「たしか今日は、政府との会議で出かけてるはずだけど?」


 そう言うなり、彼女は一歩で距離を詰め、円香の耳元へ顔を寄せる。


『ち、近い――!』


 耳にかかる温かな吐息。

 円香の顔は一瞬で真っ赤になり、慌てて飛び退いた。


「な、なにしてるんだよ!?」


 押さえた耳が、ぴくりと震える。


「おーっほっほっほっほ!」


 美緒は高飛車に笑い声を上げた。


「今の顔、最高だったわよ」


 円香は何も言い返さず、そのまま歩き出す。


「ちょっと、待って! あたしを待ってよーっ!!」


頼みは無視されたままだった。


「――円香、待って、俺はまだ……」


「ぐっ――」


突如として激しい地震が彼女の言葉を遮った。

道路には巨大な亀裂が走り、人ひとりが入り込めるほどの大きさだった。

足が震える。通行人たちは激しい揺れに耐えきれず、次々と倒れていく。

犬が吠え、街灯が大きく傾き始めた。


「何だこれは?!」


美緒は反射的に円香の手を掴み、二人は路地裏へと身を隠した。

円香は角から顔を出し、周囲の様子を探る。


「美緒、“九番”に連絡しろ」


「了解!」


円香は再び角から外を覗き、横断歩道の上で倒れている老女の姿に気づいた――彼女は起き上がれずにいる。

そのとき、角の向こうから一台の車が飛び出してきた。減速する様子はまるでない。地面は揺れ続け、運転手はいつ制御を失ってもおかしくない状況だった。


車は一直線に老女へ向かっている。


「九番はもうすぐ来る。どうする?」


相棒の返事を待たず、円香は駆け出した。

老女は必死に立ち上がろうとするが、そのたびに揺れで地面へ叩きつけられる。

車が目前に迫った瞬間――彼女の体は横へと弾き飛ばされた。


『間に合え。間に合え。間に合え――』


円香は運転席へ視線を向けた。


――だが、そこには誰もいなかった。


車は無人で動いていたのだ。

円香はそのまま車体の側面へ体当たりし、進路を逸らす。


「よし、間に合っ――」


「円香!!」


「なっ――」


振り向いた瞬間、視界が暗転した。

パチン、と――指を鳴らしたような音が響く。

やけに大きく、不自然なその音が、一瞬彼の意識を奪った。

やがて視界が戻る。

そこにはもう、美緒も、老女も、東京も、日本もなかった。

円香はゆっくりと周囲を見渡す。

目の前に広がっていたのは、石と木で造られた中世風の家々だった。


「……何だ?」


「……何だ?」


『何だここは……どこなんだ……?』


心臓が早鐘のように打ち始める。無意識に胸を掴む手に力が入った。

土と木の匂いが鼻をつく。

改めて見渡すと、人間だけでなく、獣の特徴を持つ者たちの姿もある。


『信じられない……』


『どうして……?』


ふと、視界の端に看板のようなものが映る。だが、そこに書かれている文字は、円香には理解できない言語だった。

見たこともない巨大な生き物に引かれた荷車が通り過ぎていく。


「どうやら俺は、異世界転移に巻き込まれたらしい。」


そうとしか説明のしようがなかった。

鋭い衝撃が、彼の思考を遮る。


「気をつけろよ、クソが!」


横から荒い声が飛んできた。

円香はほとんど動じなかった。その態度に、相手の男はかえって戸惑ったようだった。

円香はゆっくりとそちらへ顔を向ける。

そこにいたのは、二足歩行の巨大な豚のような獣人だった。肥えた体には所々金属を取り付けた鎧を身につけている。その隣には、明らかにもっと良い扱いを受けるべき少女が立っていた。


「てめぇ、場所がねぇのかよ、ガキ!」


円香は一歩下がる。


「ぶつかってきたのはそっちだ」


「……俺に口答えする気か、このクズが?」


その豚の腕に抱かれるようにしていた少女が、横から同意するように口を開いた。


「その子、嘘ついてるわ。私、ちゃんと見てたもの。わざと押したわよ」


無駄だと悟り、円香は抵抗をやめた。


「……すみませんでした」


「謝れば済むと思ってんのか、このクズが?」


円香は拳を握る。


『ここで手を出せば面倒になる。そもそも、この世界の法律も分からない』


周囲の空気が重くのしかかる。

中世風の建物、獣人たち、見慣れない生物たち――すべてが異質で、彼の神経を圧迫していた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
こんばんわ! 感想失礼します。 序盤の緊迫感から、後半の異世界転移の差が激しくて良かった! 連載頑張って!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ