第4話 1億4025万の絶叫
掲示板は、まだ燃えていた。
“神話級リク”——
その存在は、すでに都市伝説の域を超えていた。
だが、それを否定するかのように、ある配信が始まる。
タイトルはシンプルだった。
『神話級、引くまで終われません』
配信者の名前は、“ゼロス”。
課金総額は、すでに数千万円を超えていると噂される男だ。
カメラの前で、彼は笑っていた。
「はは、まぁ見ててよ。確率? 関係ないから。
引くまで回せばいいだけでしょ?」
軽い口調。余裕の笑み。
だが、コメント欄はすでに異様だった。
『やめとけ』 『確率見た?』 『0.00000000000001%だぞ』 『人生終わるぞ』 『神話級はバグだろ』
「うるさいなぁ」
ゼロスは鼻で笑う。
「“出てる”んだよ、実際に。
だったら、引けるだろ」
ガチャが回る。
金。紫。青。白。
爆死。
また回す。
爆死。
また回す。
——止まらない。
数時間後。
「……今いくら?」
『1200万』 『まだいける』 『ここからが本番』
ゼロスは笑っていた。
だが、その目はもう笑っていない。
「はは……まだだろ……?」
震える指で、また引く。
また、外れ。
日付が変わる。
それでも止まらない。
「……やめたら、そこで終わりだよなぁ?」
どこかで聞いたような言葉を、呟く。
コメント欄がざわつく。
『それ死亡フラグ』 『やめろ』 『誰か止めろ』 『目がやばい』
「まだ、出てないだけだ……」
カードを切る音。
また課金。
そして——
「……今、いくらだ」
『1億4000万超えた』 『頭おかしい』 『引けるわけない』
沈黙。
数秒の、異様な静けさ。
「……いくぞ」
最後のように、彼は言った。
ガチャを引く。
光。
——だが。
金。
「……は?」
演出は終わる。
そこにあったのは——
見慣れた、SでもAでもない。
ただの高レア演出。
そして、画面の端に表示された総額。
1億4025万円。
「……は?」
数秒後。
「ふざけんなああああああああああああああ!!!!!!」
絶叫。
机を叩く音。
画面が揺れる。
「出るって言っただろ!!
なんでだよ!!なんであいつだけなんだよ!!」
コメント欄は、もう止まらなかった。
『壊れた』 『これが現実』 『神話級は存在しない』 『いや、いるんだよな…一人だけ』 『リク』
その名前が、再び浮かぶ。
一方、その頃。
リクは——
自分が、どれだけ“異常”なのか。
まだ、完全には理解していなかった。
だが。
世界はすでに、気づいている。
神話級は、唯一。
そしてそれは——奪えない。
ゲーム内。
静まり返った村。
その中央で、リクは立っていた。
誰も知らない。
あの“エラー”の本当の意味を。
そして——
カイルは、ゆっくりと目を開く。
「……見つけたぞ、リク」
その声は、誰にも届かない。
だが確実に、物語は動き出していた。




