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初デート

「おまたせしましたっ」


「ローズ、とっても可愛いよ」


リサにドレスに着替えさせてもらって、ヘアセットしてもらった髪にはウィルからもらったバレッタ。今日のお茶会で着ていく予定だったドレスを身に纏った。バレッタに合わせて同じ色のドレスにしたって言うのは恥ずかしいから内緒にしておこう。


「お手をどうぞ、レディ」


そう微笑まれて、ウィルは私の手を取ると、ゆっくり歩いてウィルの馬車に乗せてくれた。

少しムズムズする空間に緊張して無言でいたけど、それもまた気まづくて私は口を開いた。


「あの…今からどこに行くの?」


「ふふふ、初デートはバラ園なんていかがですか?」


「バラ園!?行きたいっ!!」


デートって何のことだろう?と思ったのも束の間、

さっきまでソワソワしていたのに、行った事ない場所を聞いて喜びが全身に出てしまった。ぴょんぴょんと馬車の中ではしゃいでる私にウィルはずっと天使のような微笑みで見つめていた。


―――

ウィルに連れて行ってもらったバラ園はとってもキレイで、キャッキャとはしゃぐ私の手を繋いだままウィルは色々な話をしてくれた。王宮での過ごし方、兄とイタズラをしてお父様に怒られた話、最近習っている勉強の話、どれも楽しかった。


「ローズ、君の名前はこのバラのように華やかで美しい。僕は最近すごくバラが好きなんだ」


「ほんと?わたしもバラだいすき。こんなステキなとこに連れてきてくれてありがとう」


あぁ、返したくないなって困ったような表情で呟きながら、ウィルは私の両肩に手を置くと引き寄せてぎゅーっと抱きしめてきた。バラ園の中で2人で抱きしめ合って、ウィルの心臓の音や、吐く息を意識するとなんだか胸がぎゅーっとした。


「また一緒にこれるかな?」


「もちろんだよ!ローズと行きたい所がたくさんあるんだ。次はどこに行こうかなって今から考えるのが楽しみだな」

 

あんまり長居したら体に障るからと家まで送り届けてくれた。馬車の中でガタガタ揺られている間も手は繋いだままで、ずっと私の胸はドキドキとうるさかった。


幸せな時間の余韻に浸って家に帰ると、珍しく父に呼び出された。


――トントン


「入れ」


「失礼します」


部屋にはお父様とお母様が椅子に腰掛けており、なんだか重い雰囲気が漂っていたが、2人の目の前の席に腰掛けた。


「今日はウィル王子と出かけていたんだって?」


「はい!おとーさま!とっても楽しかったです」


 この重い空気に緊張して、自分でも思ったより大きな声を出してしまった。


「それは良かったな。……だが、今後はもうウィル王子と関わってはいけいないよ」


「……ぇっ?……なんで…」


戸惑った私は父から目を離し、隣に座っている母に救いを求めて目線をずらしたが、母は辛そうな顔をして口を開いた。


「私達はローズの為を思って言ってるのよ。ウィル王子はこの国の第二王子なのはあなたも知ってるわよね?」


「……はい」


「本来あなたとそんなに親しくなる間柄ではないのよ。もう子供じゃないからわかるわよね?」


「……はい」


 あぁ、ダメだ。これは私が何を言ってもダメなやつだ。お父様もお母様も真剣な顔で有無を言わせない雰囲気だ。たとえ私が抗っても私の意見は受け入れられないだろう。


「ウィル王子はな、今とっても大事な時期なんだ。今までのように俺の家でコソコソ練習する時間もだいぶ減るだろう」


「……はい」


「お前を妹のように可愛がっている事も知っているが、お前はウィル王子の何なのか考えた事があるか?お前も6歳、もうすぐ7歳になるならそれくらいわかるだろう?」


「あなた、その辺にしてあげて」


ヒートアップしていく父は母の静止も虚しく更に続けた。


「お前はウィル王子の妹ではない。はたまたメイドでもない。…そして、お妃候補でもない。どれだけ仲良くなってもこの先にお前達の未来はない」


「っ……ぅっ……はい」


「どんなに仲良くなってもいつか会えない間柄になる。もっと仲良くなって離れる方が辛いだろう。これはお前の為に言ってるんだ」


「……っ……はい」


気づいた時には涙がこぼれていて、でも父の前で泣くのは子供と思われそうで。必死に声を抑えて泣いていた。


「ローズ、あなたにもあなただけの王子様がいつか現れるから、その日の為に体力をつけて、淑女の教育頑張ろうね?」


「……っはい」


母は静かに泣く私の元に駆け寄って背中をさすって慰めてくれていた。

 

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