第1-1話
初投稿です!生暖かい目で見ていただけると嬉しいです。
その日、男は死んだ…
享年80歳、家族に看取って貰いながら眠るように逝けたのは幸せなのだろう。柔らかな笑みを浮かべながら眠った…
意識が遠のき謎の浮遊感ののち、ふと気付けば男は河原にいた。
「ん?あれが三途の川かな?」
あっさりと恐らく成仏したのだろうと、そう呟きながら進もうとして気づく。
「あれ?俺、若返ってるな。てか、何故にスーツ?」
川の反射で自分を見て気がつく。20代に若返っていると。さらに何故かスーツ姿。
「どおりで身軽なわけだ。リクルートスーツかな?これ」
深く考えずそう独りごちながら川の中へ入る。
川を渡るための船を探すのも面倒なのでそのまま進む。
幸い川底は深くなく浅瀬程度なので、気にせず対岸まで進んで行く。
「あ、なんとか婆さんと賽の河原の子供のイベ見るの忘れてたな…まぁいいか」
些事は捨て置きと色々スルーしながら対岸へたどり着く。
「確か知り合いが手を振ってるんだっけか?」
うろ覚えでこれからどこに行くかと知り合いを探す。
が、正規の渡し船ではなく徒歩で川を渡ってしまい、周りを見渡しても誰もおらず、知り合いが迎えに来ているわけもない。
「まぁ、てきとーに歩いてりゃ鬼かなんかいるだろ。そこで聞けばいいか」
楽観視しながら歩いてると、数名の人に気づく。
「あ、すいませーん。死んでここに来たんですけど、どこに行けばいいかわかりますか?」
「え?」
一人が気づき振り返る。
「…………角がある!鬼だ!本当に居てるんだ!でもなんで鬼も同じ様なスーツなんだ?」
リアル鬼である。ただし、服装はスーツ、革靴のリーマンさんだが…
「どうしてこちらに?渡し船には乗らなかったのですか?そちらから閻魔庁へ進めますのに」
丁寧な対応をしてくる鬼に違和感を感じながら、男はツッコミを我慢しつつここまでの経緯を説明する。
「あぁ、迷われたのですね。しかし普通は川を歩くなんて出来ないんですけどね……うーん、補佐官どうしましょうか?素質が有りそうですが」
と、リーマンさんが上司と思しき鬼に問い合わせる。
(素質てなんだろ?てか、あの世でもスーツ姿で話す事になるとは…)
苦笑いをしながらもルール違反をしたらしいので大人しく沙汰を待つ男。
「はい?なんですか?………ほぅ…」
そう言いながら男を見てくる鬼…一人和服姿で鋭い目線、低い声から中々の威圧感を放っている。
だが、男は疑問を抱く…
(どっかで見た気がする……あの世…補佐官…威圧感…ん⁉︎)
「もしかして鬼◯さん⁉︎」
某アニメの冷徹な鬼である。
「あぁ、最近よく言われますが違います。見た目に関してはそう見えるようですね」
と、補佐官。
「私のことはチャチャと呼んでください。」
にっこり微笑みながら補佐官と呼ばれる鬼が、そう告げる。
「あ、失礼しました。私は…あれ?誰だっけ?」
と、男も自己紹介しようとしたが出てこない。
「大丈夫ですよ。亡者の方の名前は消えやすくなってるんです。輪廻転生に向けて生前の記憶が薄れてきますから」
「へぇー、通りで…。ん?三途の川に迎えに来てた人たちは?どうなってるんです?」
記憶が無くなるなら迎えに来た知人は誰を呼びに来たのやら。
「彼の方達は実際には居ません。亡者達が見る幻覚とでも言いましょうか…。まぁ細かい事はいずれまた。それより貴方の素質を見込んでお願いがあります」
いきなりのお願いにさっぱり意味がわからない男。それもそうだろう。死んですぐ三途の川に来てそこから一人でここまで来たのだから。鬼に話しかけたら素質があるからお願い。怪しさMaxである。
「いやいや、なんの説明もなくお願いって言われても困ります。詳細を確認しないと話になりません。」
困惑する男をスルーしニヤリと笑いながらチャチャは続ける。
「異世界で動物に転生しませんか?」