【最終話】録音(みらい)の向こう側
「一樹くん、最近ほんと変わったよね!」
『そう? 俺は別に変わってないけど』
「うそ〜。成績いきなり学年一位だし、急に話しやすくなったし、前は“近寄るな”って感じだったのに!」
俺は頭を掻いて、クラスメイトを見る。
『……強いて言うなら、恋をしたからかな』
「ええ!? 急すぎ!」
『残念だけど片想いだよ、はは。……じゃ、家この角だから。俺はここで』
「うん、またね! ねえねえ、今度恋の話もっと聞かせてよ!」
『機会があればね』
苦笑して別れ、僕は少し遠回りをした。
目的はひとつ。僕の好きなクレープを買うため。
クリームと果物の甘さに顔を緩めていると、声が飛んでくる。
「双葉くん、ほんと何も変わってないね。クレープ食べてるだけで人生満足みたいな顔して、ウケる」
『一樹くんこそ。僕と二人の時だけ出てくるじゃん』
「双葉くんのお邪魔虫になりたくないし。てかさっきの子、絶対双葉くんのこと好きだったのに、目の前で初恋トークとか、ほんと笑う」
『だって僕の初恋は一樹くんだし。僕のほうが傷つくんだけど? ベロチュまでしたのに付き合ってくれないし』
「いや、それはそれ! これはこれ! 違うの! ていうか俺、双葉くんの親友として双葉くんが“俺の人生”をどう生きるか見届けたいんだってば!」
『じゃあ、もっと頑張らないとね。君が振り向くくらいに』
「なにそれ、意味わかんない!」
そう。
双葉くんは俺を殺した。
俺が苦しいと感じた人生を殺した。
俺は幽霊として、ずっと双葉くんのそばで生きる。
双葉くんは共田一樹として
――そして俺の唯一の友として、生き続ける。
いつか二人が死んで、またひとつに戻る日まで。




