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第十二話 もう一度

サトは家の戸を閉めた。

囲炉裏に火をおこして座った。


何もできなかった。

ケイは手を伸ばせば届く距離だった。それでも届かなかった。

膝の上で手がわずかに震える。


ケイの背中が浮かぶ。振り返らない。こっちを見ない。

ただ木に向かって斧を打ち込んでいた。


おかしい...

あれは、ケイじゃないのかもしれない。


でも、見間違いじゃない。

声を出せば届くはずだった。なのに、できなかった。ソウジの戒め...

サトはため息をついた。

少女なのに目元が疲れ果てていた。


怖い。山も、あの音も。

あそこにもう一度入れば、今度は自分が戻れないかもしれない。


ソウジ爺さんの顔が浮かぶ。何か知っているのに、止めるだけで何も教えてくれなかった。

考えがよくわからない。


今、何が起きているのだろう...

どうすればいいのか。何一つ分からない。

それでも、このまま終わるのは怖い。

私が知っていたケイがいなくなる、きっと。

自分もこのままではいられなくなるような何かが...あそこにはある。

それを置いて帰ってしまった...


サトは、よろよろと立ち上がり、入り口の戸に手をかけた。

ケイが調整してくれた戸は、まだ抵抗も少なく開けられる。


夜気が冷たい。

村は既に静かになっている。寝静まったようだ。

山の方を見る。暗い闇に沈む景色。

一歩、進もうとして止まる。

怖い。あそこにまた行っても、何もできないまま終わるかもしれない...



明け方、サトはソウジの家の前に立った。

しばらく迷った末に戸を叩いた。

ソウジは起きていて、すぐに戸を開けた。

サトをじっと見詰めるが、何も言わない。

サトはうつむいて言葉を探した。


「山に行きたい...」サトはソウジの目を見て言った。

ソウジは顔をしかめて山の方を見た。

「山では喋るな」しわがれた声で答えた。

サトはうなずいた。


聞きたいことはある。ケイに近づこうとするのをなぜ止めたのか。

何を知っているのか。

あれは何なのか...


だが聞けなかった。

教えてくれないかもしれない。

はぐらかすかもしれない。

自分で確かめないと...



空が白み始めている。東の端が明るい。

サトとソウジは歩きだした。言葉はない。


サトはソウジの顔をうかがった。

何を考えているのか分からない顔。やはり信用できない。

それでも一人では行けない。


山は怖い。ケイも、あの黒い斧も。

あれはもう、いつものケイじゃない。

それでも置いて帰ることはできない。


どうしたら連れて帰れるのか...



山へ向かう道に入る。昨日と同じはずの道だ。

ソウジが前に出る。振り返らない。

サトは少し距離を取って、その背を追う。


山の奥に入ると空気が変わった。

怖い...


それでもサトは進む。

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