(軽度に)ミッションコンプリートする首の引っ込んだ亀
突如やってきたピンチ。
敵ともいえる他の部に審査員協力……
断られれば自動的に部費の削減。(下手したら廃部)
難航を極めるであろうこの指令。是が非でも三部の協力を仰がねば。
ことと次第によっては猛虎落地勢も辞さない覚悟だ。
決めるぜ! 覚悟!
「いいよ」
「いいですよ」
「いいぜ」
「ということで三つの部の審査員協力を申し得ることができた」
オレの言葉にアイドル部の部室に奇妙な沈黙が浮かぶ。
「あの……」
ゆっくりとした手でスズメの腕が上がる。
「ちょっといい?」
「なんだ?」
「君が出て三つの部を回ってここに戻るまで何分かかったか教えてあげようか?」
「ぜひともお願いする」
「三十分よ」
呆れと怒気の混じったマオの答えにオレは自分の目が泳ぐのを感じる。
「じ、じつはな……ちゃんと条件が付いたんだ。龍子、説明お願い」
「了解しました」
まるでオレの秘書を気取ったような態度で龍子は手に持ったタブレットを操作する。
「卓球部が出した条件ははイベントが終わった後、アイドル部の握手会を自分たち優先で行うこと」
「普通だね……」
ネミの眠そうな声があくびとともに部室の壁を叩く。
「握手するだけで審査員してくれるなら安いものだね」
たいして24時間起きてられそうなほどハツラツとした子音の笑い声が響く。
「次ですけど……」
龍子の指がタブレットの画面をスワイプし、みんなに見せる
「ソフトボール部は星字学院の時だけでいいからライブの良席を用意すること」
「麟道生徒会長の危惧していた問題に差し掛かりましたね」
犬養の涼しい目がオレをとらえる。
「で、次の柔道部ですが……」
龍子の目が憂いを含む。
「犬養けんすけの柔道部助っ人の要請……以上!」
「……」
「……」
「……」
「……」
「……」
「……」
なんとも言えない沈黙が訪れる……
「こほん……とりあえず一言」
犬養の渋い声と同時に、四つの指(inスズメ、マオ、子音、ネミ)がビシッとオレを刺す。
「玄斗(くん)全然、あてにされてないね!」
「うるせぇ!」
ズバリと言いやがって!
「とりあえず一応の心配は去った! 後は星字学院に勝つだけだ! 自分から打ったケンカだ。絶対に勝つぞ」
「「「「「おう!」」」」」
パシンッとこういう時だけ一致団結し手を叩きあうバカどもにオレは本当に大丈夫かと心配になる。
「ところで演目やらなにやらはもう決まったのか?」
「それはバッチリ」
マオの笑顔にスズメが歌うように身体を揺らす。
「星字学院には一度勝ってるからね。楽勝楽勝♪」
「ネミ……休みたい」
「ねぇねぇ、アドリブとかたくさん考えていい?」
「……」
頭がズキズキし、今にも割れそうだ。
本当に大丈夫なのか、これで……
嫌な予感が頭から離れず今すぐラーメンでも食いに行って現実逃避したくなった。
ていうか今夜はラーメンにしよう……




