(軽度に)悪魔が微笑むかもしれないアイドル部の運命
次の日、学校につくとオレに待っていたのは地獄だった。
「ああぁっ!? アンタ達、手段って言葉を知らないの!?」(マオ)
「刃物屋でネズミを切り裂いていた人が言う言葉かねぇ……」(子音)
「ネミは……間違ったことしてない」(ネミ)
「君が一番間違ってます!」(龍子)
「って、えらくいい表紙の本を持ってるねぇ?」(スズメ)
「いいでしょう♪(ドヤァ) デジモンアドベンチャーの漫画の最終巻です! 玄斗くんにプレゼントしてもらいました♪」
「「「「玄斗!」」」」
「代金を払わされただけだ!」
「はいはい……(手を叩く)ケンカはそのくらいにしてこれから大切な話があるんですから落ち着きましょう」(犬養)
「「「「「……」」」」」
犬養の言うことだけは聞くな、コイツら……
「皆さん、昨日の時点でたくさんアピールしたみたいでなによりです」
「あれはアピールでなく脅しだ」
「結果が貴方を苦しめたなら私としても問題ありません」
「あのなぁ……」
「さぁ……(合掌)運命のルーレットタイムです!(ニヤニヤ) 誰かを選んでキスをもらい。選ばれなかった子に殺されてください」
「……」
実はもう決めてあるんだよなぁ……
「さぁさぁ♪(ワクワク) 亀梨玄斗、人生最後の選択をどうぞ♪」
「……虎神マオ」(玄斗)
「……」(スズメ)
「……」(龍子)
「……」(ネミ)
「……」(子音)
「……ぐふふ♪」(マオ)
気が付くとオレはマオの膝枕の上で目を覚ます。
「マオ……」
「動かないで……(優しい声)こんなに傷ついてかわいそうに」
あの後、オレはなにがあったんだ。
頭が物理的に痛くって思い出せない……
「ふふっ……」(マオ)
「き、機嫌がいいな?」
「当然よ! アンタが私を選んだんだから機嫌だっていいわよ」
「いや……一応、理由はあるけどな」
「怒らないから言ってみなさい」(笑顔)
「え、えがおがつめたくない?」
「言って……」(頸動脈をつかむ)
「え、えっと……昨日の時点でオレに唯一、損益がなかったのはオマエだけだったからな」
「損益?」
「ネミには監禁され、スズメからは舌を壊すようなカレーを食わされ、龍子からは漫画本を奢らされ、子音からはプロレス技を受けた。比較的オマエのほうがマシだった……消去法だな」
「……」(ぴき……ぴきぴき)
「マ、マオ?」
「わたしがいちばんすきだからえらんだじゃないの?」
(むしろ嫌いだよ……)
「……」(マオ)
「……」(黒斗)
「……」(怒れる狂猫)
「……」(絶望する食用亀)
「玄斗……あんた……」(手が伸びる)
「え……え……えぇぇぇえ!?」
「ハッ……」
目を覚ますと笑いを必死に堪える犬養の目が映る。
「お、おれは……いきてるのか?」
「いやぁ……(手を叩く)なかなかいいエンディングでしたよ♪」
「夢を見ていた……みんなが仲良くして、みんながオレ以外の男とデートしていて、オレは一人でラノベを読むというとても幸せな夢だった」
「それは文字通り儚かったでしたね。ふふっ……」
「悪魔……」
「みんなは私が説得しておきました。とりあえず、マオで納得してステージの準備に入るみたいです」
「じゃあ、オレも動かないと……」
「動かないで……(肩を押さえる)どうやら今回の件であの子たちもそれなりに考えるものがあったみたいで出し物は自分たちで決めたいと言ってきました」
「自分たちで決める」
「いいんじゃないですか。あの子たちだって自分で出し物を決めるチャンスがあっても?」
「犬養……オマエは任せてもいいと思うのか?」
「あの子たちを少しは信じてあげましょう。多少、行動と考えに難がありますが貴方に認めてほしいという思いだけは本物ですよ」
「……」
「……どうします?」
「まぁ、いいか……ただし、しっかりと見守らせてもらうぞ」
「私も協力しましょう♪」
「頼む……」
大事なイベントを自分が介入しない。
本来あり得ない話だがある意味、今回のイベントはあいつ等の人気がものをいう。
ここで躓くようなら先の話はないだろう。
とりあえず、ここは静観させてもらおう。
こうしてアイドル部の部費をかけた一世一代の大勝負はこともあろうにオレは介入せず進めることになった。
それが吉と出ても凶と出ても、たぶん、悪い結果にはなるまい。
たぶん……
「このアイドル部は悪魔がほほ笑む時代ですからね……」
「……」
精神的苦痛だけならマオとネミが一番ですが肉体的苦痛ならスズメと子音。で経済的苦痛は龍子……
どこがマオが一番マシだって?
まぁ、そこは個人の主観で……
亀梨玄斗個人はマオが一番、マシだと感じたんです。そうなんです。




