1話
刃が降りてくる音。そしてがつん、という衝撃。
そこで私の意識は途切れた。
私、小都 翠琴の人生はギロチン台で幕を閉じた。
この異世界に来て、「魔女」と呼ばれるようになり約40年。心残りなのは飼い猫のミミと、そして一人の少女のこと。柔らかな金髪のウェーブヘアに、ルビーのような赤とエメラルドのような緑の鮮やかなオッドアイ。あの子の人生がせめて少しでも幸せなものであれば。それが最後の祈りだったはずだ。
意識が浮上する。誰かが呼んでる。
「魔女様、魔女様」
あの子だ。キアラが呼んでいる。鈴を転がすような声。それが、どんどんと低くなり、最後には男のような声になっていく。
目が覚めた。目が開いた。
何故?首は確かに斬り落とされた。痛みを感じる間もなく意識が飛んだ。それなのに。
「魔女様、魔女様」
まだ目がはっきり見えない。少しずつ色を認識する。ルビーとエメラルド。
「キア、ラ様…?」
口が無意識に動いた。酷くかすれた声だった。途端に力強く抱きしめられる。大きな身体が私を包み込むように。泣いている。微かに震えている。
はて。
あの子は、キアラは、王女は。
こんなに身体は大きかったか?私より小さく小柄で華奢だったはずだ。今私を抱きしめている腕は力強く、肩幅も何もかもが大きい。
こんなに声は低かったか?
こんな匂いだったか?
髪の毛は黒く短かったか?
私を抱きしめて泣いていた人間がやっと私から離れる。
目の前にいたのは、黒髪短髪の大柄な美丈夫。
小柄で華奢な金髪の姫君のキアラではない。
でも、涙をぽろぽろと零すルビーとエメラルドの瞳だけが何も変わらない。
「魔女様。やっとあなたを生き返らせることができました…!」
そう私の手を握る。その仕草は何も変わっていない。恐る恐る尋ねる。
「姫様…?」
男は泣き笑いのような顔で頷いた。
夢で見たものが元ネタです。




