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メイドカフェでクラスの清楚系貧乏美少女が働いていた!?~バイト禁止の学校に通う俺は、同じクラスの美少女と【秘密を共有】する~  作者: 早野冬哉


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29.報告

「じゃあな山下さん」


「うん。……また明日」


 俺はあの後、明日の日曜日に、俺の部屋で山下とガンドランの練習をする約束をして、山下家を後にした。


「疲れた……」


 山下と和解できた安心感からどっと疲れが押し寄せ、俺は家に帰ると服を着替え、すぐにベットに飛び込んだ。何気なくスマホを開くと、ロインに三件の着信が来ている──金城からだ。トーク画面を開くと昨日の夜に、


『ちゃんと鈴と仲直りできた?』


『おーいっ! 町川返事しろー!』


 というメッセージと、構ってほしそうに暴れまわるウサギのキャラスタンプが送られてきていた。


「そう言えば、山下さんの誤解を解いてくれたのは金城さんだったな」


 俺は感謝の言葉を打った。


『悪い。返信遅れた』


『金城さんのおかげで山下さんとまた一緒にいられる。ありがとな』


 すると五秒と経たないうちに既読が付く。さらにもう五秒経つ頃にはポコポコっとメッセージが送られてきた。


『よかったー!』


『それじゃあ鈴の誤解も解けたみたいだしー、明日からはまた全力で落としに行くから覚悟してねっ!』


 金城のメッセージからは、メッセージを打つ金城がいたずらっぽく笑っている様子をありありと想像できた。その姿が、告白の時に金城が見せた太陽のような笑顔と重なり、俺は思わずスマホの画面をベットに押し付ける。


 揺らぐなよ俺! ……金城さんはあくまで友達。山下さんと一緒に居るためには、金城さんと付き合うわけにはいかないんだぞ。


 俺は白い天井を眺め心を落ち着かせると、友達として金城に返信した。


『まあ、明日からも友達としてよろしくな』


***


「フゥ……」


 同日。午後九時五十八分。俺はゲーミングチェアに腰掛け、深く息を吐いた。


 裕太と慎吾なら、受け入れてくれるよな……。


 昨日は休んだが、俺はいつも午後十時から裕太と慎吾の二人とガンドランをプレイしている。そのため、これから俺は裕太と慎吾に山下と四人制の大会に出てくれるように頼むつもりなのだ。


 カチッ……。


 後ろで時計の針が鳴る。パソコンの右下に表示される時刻は、二十一時五十九分を示した。


 今日に限って二人とも遅いな……。


 俺は、ガンドランのホーム画面と参加者一人と書かれたボイスチャットアプリの画面を交互に見る。そうして、果てしなく長い一分が過ぎた頃、ピロンっと音がしてボイスチャットに裕太と慎吾のアイコンが表示された。


「悪い春馬。遅くなった」


「ごめんね春馬。ボクお腹壊しちゃって、今日途中で抜けるかも」


「……ああ、大丈夫だ。こっちこそ昨日は急にできなくなって悪かったな」


 ヘッドホンを通じて聞こえてくる中学からの親友たちの声に、俺は平常心を取り戻す。


「ハハッ……」


 俺は何をそんなに緊張してたんだ。相手は裕太と慎吾だぞ。


「どうした春馬? 急に笑い出すなんておまえらしくないぞ」


「疲れてるなら今日もなしでもいいよ?」


 俺の自嘲の笑い声を聞いて心配してくれる二人に、俺は一切の不安なく口を開く。


「いや、大丈夫だ。それより二人に相談があるんだ。聞いてくれ」


 それから俺は、二人に事情を話した。もちろん、山下が学校に隠れてバイトしていることは話さずに。


「それってつまり、初心者を連れて世界大会で優勝しようってこと!?」


「そうなるな」


「いやっハハハッ! 相変わらず春馬は無茶言うぜ!」


 俺の説明に慎吾は驚き、裕太は相変わらずだなぁと笑い飛ばす。中学時代から何度も見てきたこの光景は、俺の胸の内を温めた。


 ハハッ……やっぱり裕太と慎吾は俺の親友だ。


 自然と表情が緩む。俺は、ヘッドホン越しの裕太と慎吾に答えのわかりきった問いを投げかけた。


「どうだ? 引き受けてくれるか?」


「オレは当然やるぜ! 前代未聞の挑戦って感じで楽しそうだしなっ!」


「ボクももちろんやるよ。だけど、やるからには優勝させてね? ボクらの参謀!」


「だな! 今回も誰も考えつかないようなすごい作戦を期待してるぜ春馬!」


 俺を参謀と呼んだ慎吾と、全幅の信頼を寄せる裕太。彼らの期待に応えるために、俺は今回の作戦を話し始めるのだった。


***


 翌朝。山下がガンドランの練習をしに、俺の部屋に来る予定の日曜日。俺は朝の九時頃に目が覚めるなり、すぐにベットから這い出た。


「今日は、ここに山下さんが来るんだよな……」


 山下の家にはゲーミングパソコンやその他ガンドランに必要なものがあるはずもなく。そこで俺は、前まで使っていたゲーミングパソコンやヘッドホンを捨てずにとっていたのを思い出し、山下を自分の部屋に誘ったのだ。


***


「うん……わかった」


 もじもじと目を伏せ、小さな声で返事をする山下を見て、俺は自分が何を言ったのかを理解し、慌てて取り繕った。


「あっ……悪い。山下さんは嫌だよな。今他の手段を考えるからちょっと待ってくれ」


「ううん。わたしはそれで大丈夫……」


「山下さん。無理しなくても──」


「いいじゃないの。お母さん、町川くんになら安心して鈴を任せられるわ」


 いやダメだろ!


 山下母は、のどかな声音で娘が男の部屋に連れ込まれるのを承諾する。危機感のない彼女に、俺は白い目を向けた。


「いや、親がそれでいいんですか? 俺、男ですよ?」


「でも、町川くんは鈴にそういうことしないでしょ?」


「それはそうですけど……」


「それに、鈴は嫌がってるんじゃなくて、恥ずかしがってるだけなのよ」


「お母さん……!」


 母親の突然の爆弾発言に山下は頬を赤く染め、声をひっくり返した。


***


 そんなこんなで今日、山下が俺の部屋に来る。予定は午後一時半。俺はそれまで、身支度から部屋の掃除、山下が使う予定の機材の確認までを入念に済ませた。


「これでいいよな……掃除もしたしパソコンの動作確認もした。あとは……」


 昼ご飯も食べ終え、時刻は午後の一時過ぎ。あとは山下を待つだけ。そうなると今度は落ち着かない。


 俺は十二畳のワンルームをグルグルと歩き回りながら、何度も掛け時計の時間を確認した。


「そろそろか……」


 もう何度部屋の中を行ったり来たりしたかわからなくなった頃、ようやく時計の針は一時半を指す。そのことを確認すると俺は息を吐き、インターホンの親機の前に立ち止まった。


 ピンポーン。


 来た……!


「はい」


「あ……町川くん。山下、です……」


「ああ。今開ける」


 敬語になるほど緊張している山下がインターホンに映る。それを確認すると、俺はすぐに玄関に向かい扉を開けた。


「いらっしゃい。山下さ──」


 俺は、なるべく平常心で山下を招き入れようとした。だが無理だった。なぜなら、マンションの四階、俺の部屋の玄関前に立つ山下の姿に見惚れてしまったから。


 今日の山下は、以前二人で出かけた時に「のんける服屋」で俺が山下のために選んだ服の一つ──ゆとりのある白のショートスリーブに、ふんわりとしたベージュのロングスカートといった、清楚かつ山下のかわいさを引き出す服を身に纏っていた。


 これ……現実か?


 学年トップの美少女が俺の選んだ服を着て俺の部屋に来る。その到底現実とは思えない状況に、俺の脳は完全に思考を停止した。

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