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第蜂話 カヤエと封印石。

朝が来る。

暖かい日差しが部屋の中に入る。

当たり前だが、この世界にも太陽はあるんだな。太陽があるなら火星や土星もあって…銀河も…って、朝から考えるのはしんどい。やめよう

「あぁぁー」

俺は欠伸をして背中の筋を伸ばしながら起き上がる

「まだ、寝てるのか」

何時も早く起きるはずのウラは横で寝ていた。俺は、ふと昨日の事を振り返る。

少しは女性耐性が強くなったと信じたいが。

途中で、朝から卑猥な事を考えだそうとした自分に嫌気が差してきた俺は洗面所へ行く。


じゃぶじゃぶと顔を濯ぎ、ホテルには必ず置いてあるような真っ白でキレイな布を手にとって顔を拭く。

「ふぅー。スッキリした」


そういえば、昨日、折角ドラグニエル異種倒したのに、ドロップアイテムを拾ってないな…

まだ、誰かに取られてないかな。

ウラはまだ寝てるから寝てる間にでも行ってくるか。

俺は装備に着替えていざ出ようとドアノブに手を掛ける。


ん?ちょっとまて。そういや、ウラを置いて何処にも行かないって言ったよな。早速約束を破るのは気が引ける。

んー。やっぱり起きるのを待つか…

俺は行くのをやめて、ウラが起きるのを待つことにした。

ベッドルームに戻り、ウラを見る。

相変わらずスヤスヤと寝ている。

ピーンポーン。

部屋のベルが鳴った。

「誰だ?」

俺はドアを開けると目の前にインターホンを鳴らした主が現れた。

「すみません。こちらに、女性の方は居られますか?」

「うわっ!…お、お前は…!」

「私を知っているのですか?」


いやいや。知っているも何もコイツは人気投票ランキングで、嫁にしたい、部下にしたい、上司にしたい、彼女にしたいランキング全てにおいて圧倒的差を付けて一位に君臨した、

ヨウシ・カヤエ…!

顔はもちろん美人。髪は腰まで流れる艶々しく輝いていて、頭にはアンテナのように髪の毛がピーンッと立ち、瞳はエメラルドに輝いている。

こいつは、あまり他の人間とパーティは組まず、ソロでゲームをクリアする。

その為、ゲーム中でも仲間になる確率はほぼ0に近い。

ソロでクリアして行くわけなのでそれなりの技術と武器は強い。

すると、

「居ますか?」

痺れを切らしたのか、再び聞いていた。

あ、そうだっだそうだっだ。


俺はウラを起こしに…いや、ちょっとまて、ウラは今薄着で寝ている。

しかもベッドが一つ…この状況は絶対勘違いされる…!

何か手段は…


「居るんですね。でしたら、失礼します」

部屋に入ろうとするカヤエ。


「ちょっと待った!その前に武器は預からせてもらう」

「何故です」

「何故って、必要ないだろ?戦う訳じゃないんだから。…いや、大丈夫だって!襲うとか考えてないし」

いや、カヤエを襲うとか最早自分の死を意味することになる。

自殺したい方はどうぞカヤエの元へ。

「そうですね。では」

カヤエは腰に納刀していた刀を俺に渡す。

受け取ったと思ったら直様部屋の奥へ行こう足を進める…

だが、

その足は突然止まった。


「間に合った。ごめんなカヤエ」

カヤエの足が止まったのではない。

時が止まったのだ。

いや時が止まったのではない。

空間が止まったのだ。

俺がしたのは空間停止スキルだ。カヤエの武器であるソウセイ剣と俺の元愛刀のセイクリッドソードのみ使えるスキルで、やはりコツを知らないと使えない。


その空間に居る自分以外の全ての生き物を停止させるのだ。

止められた本人は止められた事に気づかないようになっている。

計画通り…!!じゃなくて…

「よいしょっとぉ!」

俺はカヤエを運ぼうとして持ち上げるが、1番持ちやすいのがお姫様抱っこのため仕方なくその方法にしたが…


「うっ!」

その方法だと…バスケットボールを直視してしまう…が仕方ない。

とりあえず、教会に運ぶか。

カヤエはいつも教会付近にいる。


そして何とか教会に運び終わり、俺はソウセイ剣をカヤエの腰に戻し、ホテルに帰り、空間停止を解除した。


「いまごろ、戸惑ってるんだろうな」

そんなカヤエを想像しながらウラを起こしに行く。


「ウラ…。ウラ…!」

俺は出来るだけ優しい声で身体を揺すりながら…うっ!だめだ。揺するのはやめよう…

「あ…ヨシさん。お、おはようございます」

「ああ、おはよう。さっ、早く着替えて」

「あ、はい。…でも、まさかヨシさん。女性の着替えを見るつもりで?」

「あ!そうだっだ…じゃあちょっと洗面所行ってくるわ!」

慌てながら洗面所に向かう。

正直、ゲーム中に着替えるシーン何てなかったから考えてなかった。着替えるシーンなんてカットだからな。

「別に、ヨシさんなら良いんですけどね…」

小さく呟くその声はヨシハルには届かない。

しかしなぁ。

俺は洗面所に手を付けて悩んでいると、着替え終わったウラが後ろから抱きついてきた。


「お前はなぁ…」

俺は慌てずに抱きついてきた手を外す。やっぱり耐性がついたな。うん。


「別にいいじゃないですか」

「それじゃあ、まるで彼…」

途中で止めた俺にオウム返しをする。

「まるで?」

「いや、何でもない」

「もー!何ですかー?」


必死に誤魔化そうとするが、今日のウラは中々騙されない。

あの可愛さは何処へやら…

すると


ピーンポーン。インターホンが鳴る。

「ほら、人きたから」

俺はインターホンに救われて玄関へと向かう。恐らくカヤエだろう。

彼女はきっと何が起きたかわかっていない。

だから俺は初めて会ったと装う方がいいだろう。


「はい」

俺は普通にでる。

さぁ久し振りの皆お待たせ、迫真の演技の初まりだ!


「あなた…何をしました…?」

顔にはあまり顔に出ていないが声でわかる。すんごい怒っている。あと頭のアンテナが俺の方に鋭く尖っている。

尚更、知らないふりをする方が良いだろう。


「え?何言ってんの?」

すんごい嘘つきだな。自分でも最低だと思う。だけど勘違いされるのは嫌。

「とぼけないで頂けますか?先ほど私は一度、ここに訪ねた筈です。部屋にも少しですが入りました」

「んな訳ないだろ…?まさかお前…不法侵入…!」

俺は自分のしたことを隠し、さらにカヤエを勝手に部屋に上がり込んだ不審者に仕立て上げようとする。

ほんっと最低だな。

いや、最低なのは俺だけどな。

「違います!」

うん。知ってる。

だが、ここで後を引くわけにはいかない。ただ勘違いをされたくない。そんな子どものような我儘な俺がトドメの一撃を発しようとした時、ウラが後ろから

「あっ!あの時の…!」

「何だウラ、カヤ…あ、いや何でもないが、あの時の…って?」


つい、カヤエと言いそうになった。本当に俺の口は口走るよな。


「お久しぶりです。やはり、ここにいましたか。少し失礼します」

勝手に部屋に上がり込む。

俺は仕方なく許して案内する。

ちょっと待って。よく考えてみればリビングには何も無い訳で…座るところがベッドしかない。

「じゃあここ座ってください。」

ウラがベッドにご案内。

「ベッドは一つなのですか?」

「そうですけど?」

何かカヤエに嫌な目で見られた。

結局勘違いされてしまった。俺の野望は儚く散った。

「で、何でウラはこの人を知ってんの?」

「そういえばヨシさん知りませんでしたね。ヨシさんが死んじゃった時にこの人が助けてくれたんですよ?」

あ、だからか。

ウラが復活の呪文が解るとは思えなかったからずっと疑問だったが、

カヤエが居たからか…

「あ、そーなの」

ということは、命の恩人にかなり酷いコトを…

「言ってませんでしたが、私はヨウシ・カヤエと申します」

「ヨウシさん…ですか。ずっと気になってたんですよね。私はウラーニアです」

「俺はヨシハルだ」

俺は知ってたけどな。

「私が来た理由はただ一つです。私とパーティを組んで頂きたい」

「は?」

パーティを組む?カヤエと?

「私はあのドラグニエルを数発で的確に仕留めた貴方とパーティを組みたいのです」

とウラの方を向いて。


「いやいや、私じゃあないですよ!ヨシさんです!ヨシさんが倒したんですよ!」

ウラの声にあわせて俺は軽くドヤ顔をする。


カヤエは、えっー。こんなやつがー?みたいな顔している。

ついでに頭にあるアンテナみたいな髪の毛がこっちを向いている。

「それに、あれはドラグニエル異種だったしな」

もう俺の顔はドヤ顔祭りじゃ。

「ドラグニエル異種を見分けるとは…貴方が倒したコトで間違いないようですね。」


「俺のレベル値は低いが大丈夫か?」

俺は確認しておく。カヤエはレベルの低い相手とは喋りかけるどころか、見向きもしない。

「大丈夫です。ドラグニエル亜種を倒したのですから、それなりのレベルはあるはずです」

「そうか。ならOKとしよう。因みにウラはレベル21だ。ギルを倒しまくったからな」

俺が軽く褒めるとウラは照れている。

「貴方は?」

「ん?俺か?俺は16だ。」

いきなり部屋が静まり返った気がした。ま、仕方ないだろう。

ウラよりレベルが低いのに、あの魔物を倒したんだから。


「年を聞いてるのではありませんが。」

いや、レベルだけど?ってゆうか俺ってそんなに若く見えるかな。

「それが本当なら…いや、何でもないです」

「ならギルドカード見るか?」

俺は懐からギルドカードを取り出しカヤエに差し出す。

「ほ、本当…みたいですね」

「流石はヨシさんです!」


いや、ありがとう。

今の俺は本当にドヤ顔王子だな。

そして俺たちはギルドカードにあるパーティ欄にお互いの魔力を注入し、パーティ登録を完了した。

「さてと…正式にパーティを組んだことですし…早速クエストを受けに行きますか?」

「いや、カヤエの考えは解るが、店を回らないといけないし、俺は取れなかったドロップアイテムを取りに行ってくるしな」

俺がカヤエと呼び捨てにした瞬間、頭のアンテナがビクッと動いた。

うわぁ…かわい…じゃなくて。

いきなり馴れ馴れしかったかな?

「ドロップアイテムであれば、私が拾っておきましたよ」とそのドロップアイテムを差し出してくる。


「ああ。ありがとうカヤエ」

またビクッと…

「呼び捨ては駄目か?」

一応確認しておく…


「いや…別にこれといって問題はありません。ただ。父から、カヤエと呼ぶのは私か、私の夫になった人だけにしろと言いましたので…」

そ、そんな…問題大アリだろ!

「で、ヨシさんは、どんなお店に行くんですか?」

とウラが聞いてくる。

「いや、実は封印石を買いに行きたいんだ」

「封印石…ですか?なんですか?それ」

俺が説明しようとした時に先にカヤエが、

「封印石とは、この世界の神が100年に一度だけ人間に与える石で、神域の石とも呼ばれ、邪悪な闇を封印するために使われる高価なアイテムです」


と、攻略本に書いてあることを一字一句間違いなく説明するカヤエ。

流石だ。

「へぇー。凄いんですねー。確かにヨシさんは闇を嫌いますしね」


「ま、なんでも良いから速く行こう。話してるだけで、ほら外みてみろ。もう夕方だ」

そう、パーティとか話とかなんやかんやしていたらもう夕方なのだ。


「今日は時が進むのが早いですね。では、速く店に行きましょう」

ま、時が進むのが早いのは俺のせいでもあるけどな。

俺たちは店に向かって出発。

カヤエのリードに任せて俺たちは店に着いた。実は店で封印石は売っている確率は低い。日替わりするアイテムなのだ。

果たして…売っているのか。

「いらっしゃいませ!」

威勢の良い声が店内に響き渡る。

店内を隈なく探すが、見当たらない。

「やっぱりか…」

次の店に行こうとした時にカヤエが

「すみません。封印石はありますか」

無いハズなのに聞いてくる。

「封印石ですか…?いえ残念ながら…」

ほら。やっぱ無いじゃん。

しかしカヤエは引き下がらない。

「ありますよね。封印石。嘘をついても無駄です。何も奪おうとは思ってません。代金はきっちり払います」

すると店員がその威勢にビビったのか慌てて奥の方から封印石を持ってきた。

おお。凄い!何か罪悪感があるが凄い!

「二つだ。封印石は二つ必要だ」

俺が便乗して告げる。


そして店員は二つ持ってくる。

「20000Nになります」

俺はきっちり払った。

そして店をでる。

でもどうして店の人はあんなに封印石を隠していたのか。

「気になりますか」

俺の心は見抜かれていたようだ。カヤエは直ぐに俺の疑問に察知した。

「少し気になった」

「最近、この近辺で封印石を狙った強奪事件が多発しているのです。ですからそれなりに店の人も気をなさっているのです」

「ふーん」

なるほど…それなら納得だな。

俺は少し歩き、しなきゃいけない事を思い出す。

「そうだ、カヤエ。頼みがあるんだが」

「なんでしょう」

「ウラをホテルに連れていってくれないか?」

「ヨシさん?どこに行くんですか…?」

「大丈夫だよ。すぐに帰るから」

「でも…」

ウラは気に入らないのか、ずっといじけている。

「カヤエが居たら心配ないよ。じゃ頼む」

「わかりました」

カヤエはウラを抱きかかえ速いスピードで返っていった。


多分あれはバックシールドからのターンシールドの組み合わせだろう。

流石だな。


そして俺はある所に辿り着く。

魔王城の入口だ。

街の外れにあるんだが、魔王はいないのではないかと言われている。

しかし、いないのではない。

封印されているのだ。

昔の勇者によって。

俺は魔王に挑もうと来たのではなく、この封印石を、魔王城の扉にはめ込みに来た。

でないと、ゲーム中盤のレベルがまだ低い状態でこの魔王城の封印が解け、魔王を倒さなければいけなくなる。

それは不可能だ、魔王は簡単に倒せない。

俺はすぐに封印石をはめて、ホテルに返った。

作者がノロのため今回はわたくし、受付嬢のリサーナが後書きをお送りします。

今回はわたくしの出番がなく、とても残念です。

因みにですが、皆さんのレベルを紹介しておきましょう。

ヨウシ・カヤエさん

レベル104

ウラーニアさん

レベル21

ヨシハルさん

レベル16

となっておりますね。

ではではまた次の話でお会い出来たらと思います。

さよーならー!

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