↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
9/40

第級話 反則とは反則。

「ただいま」

部屋のドアを開けながら呟く。

しかし誰も気付かない。

余りにも呟くのが小さ過ぎたからだ。

するとキッチンの方から良い匂いがしてきた。

「お、良い匂い…」

俺が咄嗟に吐いた言葉に反応して二人がキッチンから出てきた。

「あ!ヨシさん!おかえりなさい」

「おかえりなさいませ」

俺はひょこっと出てきた二人を見て…

エプロンは反則だわ…

カヤエなんか最早エプロンではなくメイド服じゃないか…

お、落ち着け俺。

「た、ただいま」

俺が返事をすると、ジュゥゥゥ!という音が聞こえてきた。

「あ!鍋が!」

慌て出すウラ。直ぐにキッチンに戻っていく。

俺は何もないはずのリビングに行く。

すると其処には三人用の机と三人分の椅子が並べてあった。

「これ、どうしたんだ?」

俺が少し大きな声でキッチンにいる二人に聞く。

その内のカヤエが返事をした。

「それは、私が買っておきました。椅子がベッドだけじゃ困るでしょうから」

うん。確かにだな。

しかしなんて気が利くのだろうか。

ゲーム中では冷酷かつ残酷極まりなかったのに。

すると机の上に布を置きにカヤエが来た。多分この布の上に鍋を置くのだろう。

「貴方は、何か成し遂げたい夢がありますか?」

いきなり変な質問をしてくる。

成し遂げたい夢…か。

やはり元の世界に戻ることだろうか。

でも元の世界に戻ったらウラが悲しむだろう…

「今のところは無いな」

俺がキッパリ言うとガッカリしたみたいに

「そうですか」

声のトーンを下げて返事をした。

そして用は済んだのかキッチンへ向かう。俺はそれを呼び止めるように同じ質問をする。

「カヤエは、夢とかあるのか?」

カヤエの夢。少し気になる…

少し振り返り返事をする。

「あります。大きな、夢が…」

言い終わると、直ぐにキッチンの方に行った。

夢があるのか…カヤエにも。


今日は、鍋…か。

ふと思うが料理をするNPCなんて知らないが…


ん?そういえば、俺とウラはここ3日間くらい飯を食べていない。

普通なら餓死レベルなのだが…

「どいてくださーい」

ウラが鍋を運びながら俺を退かす。

「ああ。ごめん」

俺は直ぐに離れる。

置かれた鍋を見て中身を想像する。

何鍋だろうか?

後ろからカヤエが、

「私は全く味付け等を手伝っておりませんので、ウラさんの味付けに任せております」

箸と皿を持ってくる。

「そうか。ありがとうなウラ」

ウラには本当感謝している。

ウラは少し照れているようだ。

「さ、食べましょうよ」

ウラがそう言って蓋に手をかける。

気になる鍋の中身。

そして蓋が離れ中身が…




な、なな、なんじゃごりゃあぁああぁあああ!


何だこの毒々しい色は!

魔女がいつもグツグツ煮込んでそうな鍋だ。

カヤエは、美味しそうです、とか言ってる。

美味しそうじゃないだろ。

そしてお玉でウラが皆に配る。

俺はとりあえず箸を持つ。

作ってくれたのだ…まずそうとか、言えるハズがない。

手が震え出す…

「ヨシさん?震えてますけど、大丈夫ですか?」

大丈夫じゃない。

こんな物を目の前にして、平然としているお前らが大丈夫か!

「きっと、早く食べたくてウズウズしてるんでしょう。3日間も食べなければ力が入らないでしょうから」

3日間、食事をしていないコトはウラに聞いたのだろう。

そうか、カヤエの言葉からすれば、食べなくても大丈夫なのだろうが、力が入らなくなるのだろうか。いや、今の震えとそれは関係ない

「じゃあ。いただきまーす!」

「いただきます」

「い、いただきます…」

いただきますを言い終わると、

カヤエは直ぐにその毒々しい紫色のスープの中にある塊を口の中に入れる。

「ウラーニアさん。美味しいです」

美味しいのか!?これが。

「ウラでいいですよ!」

「そうですか。ならウラさんで」

「ヨシさん。食べないんですか?」

此方の様子を確認しながら聞いてくる。

流石にこの状況で食べない訳にはいかない。

「あ、いや。ちょっと考え込んでいただけだ」

俺は適当に言い訳を付けて箸をスープの中に入れて塊を取り出す。

大丈夫だ。

やれる!俺ならやれる!

大丈夫だ。大丈夫だ。心配ない。

俺は自己暗示をかけて、それを口に運ぶ…

「お、美味しい…」

なんだ、この見た目とのギャップは!美味しい!美味しいではないか!

見た目は子どもで頭脳が大人みたいなギャップだぞ!

俺のその言葉にウラが照れる。

箸が止まらない程美味しい。

見た目さえ気にしなければ。

「そういえば、カヤエ。確か、夢があるって言ったよな。カヤエの夢って何だ?」

俺が話を変えてカヤエの話にする。

カヤエは頭のアンテナをビクッと動かす。あ、いや、カヤエは無意識なんだろうけど。

「私の夢ですか。私の夢は……それより、ウラさんの夢は何ですか?」

あ、こいつ。話をズラしやがった。

「わ、私ですか?私の夢はですね…とりあえず強くなることです」

強くなること…かぁ。

強くなることに意味があるのだろうか…

今も俺の箸は止まらない。

「良く食べますね」

「あ、本当だ!…ちょっと嬉しいです」

もう鍋の底が見えていた。

「次は…」

ウラが言いかけた時に俺が重ねて言う。

「いや、俺が次、作るから」

味は美味しかった。たが見た目がダメだ。

見た目と美味しいの両立。それが出来てこそ料理と呼べる。

実は俺は料理人を目指していたからな。修行もした。

「ヨシさん。大丈夫なんですか?」

ウラが心配そうに見つめてくる。

「ああ。安心しろ」

「でしたら、食材などは冷室に置いてありますのでそれを使ってください」冷室とは冷蔵庫みたいなもので、沢山物が入る。

「わかった。ところでカヤエは今日、どこで泊まるんだ?」

なんなら俺が探してやろうかな。

「ヨシさん。カヤエさんは、これからここで泊まるんですよ?」

そうか…泊まるのか…って、えええええ!?

「はい。泊まらせていただきます」

泊まるってベッドは一つだぞ?

「さ、もう、片付けましょうよ」

「ヨシさん?」

俺はその後、頭が真っ白な状態で片付けていたからその間の詳しい記憶はない。

「ヨシさん。お風呂、誰から入ります?」

ウラの提案に真っ先に乗っかるのはカヤエだった。

「私は最後で構いません」

「なら私は二番目で」

とウラ。

俺に選択肢は無くなった…

「じゃあ先に入ってくるな」

俺は風呂に入る。

その間、カヤエ達は…

「それにしても、ウラさん。あの人を疑問に思ったことはありませんか?」

その言葉にウラは

「ありませんけど…?ヨウシさんはあるんですか?」

「はい。あのレベルであの魔物を倒すのは異常です。一度お手合わせしてみたい」

カヤエの目が恐くなる。

「こ、恐いですよ。ヨウシさん…」

怯えているウラに気づいたカヤエは申し訳なさそうにする。

「いや、ただ。あの人を見た時、心の底から何かがビクッときました。まるで何処かで会ったような。」

「ま、まさか…ヨウシさん…ヨシさんのコト…?」

「え?あ、いや、そんなのじゃありません。」

少し動揺している。

「そうですか」

ウラは安心したように確認した。


俺は早めに風呂を上がる。

きっとあの二人じゃ話が進まないと思ったからだ。

俺は寝巻きに着替えて二人の所へ。

「風呂空いたぞー」

俺はそう告げ、ウラと入れ替わる。

俺はカヤエの隣の椅子に座る。

「カヤエは、いつから冒険者になったの」

俺が少し疑問に思ったことを言ってみた。

「私は父に認められた時に冒険者になりました。その時は丁度15歳程度のでしょうか」

「そうか」

そんなことがあったのか…

恐らくゲームとは少し違うのだろう。

いや、この世界はゲームではない。

ゲームに似て異なる世界なのだ。

「貴方は…何処かで私とお会いしましたか?」

俺はカヤエの目を見つめる。

その内容に考えられることは、ただ一つ。ゲームの中での俺とのコミュニケーションだ。

いや、それはないか。

俺は本当にゲームでしか会ったことはない。

まさか…な。

考え過ぎか…

カヤエと目が合う。

すぐに返事をしないと余計に怪しい。

「いや、会ったことはない。でもなんで?」

俺は聞き返す。

「そんな気がしただけです」

そんな気がしただけって…

まぁいいか。

再びカヤエを見る。

相変わらずメイドの服を着ている。

ほんとに可愛いすぎ…じゃなくて。

「なんでメイド服なんだ?」

そうだ、これだ。

やはり聞かずにはいられない疑問だ。

「これしかなかったので」

だとさ。

おかしいだろ?普通なら持ってもないような服だぞ?

ま、まぁ可愛いから許す。

「可愛いな…」

思っていたことがつい口に出てしまった…

悪い癖だと思う。

「えっ、あ、ありがとうございました」

俺の言葉に完璧に動揺しているのがわかる。。

返事が過去形になっているんだもん。

それにアンテナがクルクル回っているし顔が赤いだもん。

あーもー、反応も可愛いじゃないか。

言って正解だな。

…って変態だろ。俺。

するとウラが風呂を上がる。

「あ…ウラさんさんが、お、お風呂上がりましたので、私、入ってきます」逃げるように風呂場に行った。

動揺し過ぎだろ。

ウラさんさんって何だよ。

そしてウラが俺の隣の椅子に座る。

ウラは寝巻きだった。

うん。正解だと思う。

風呂上がりに防具を着てでてくるなんて流石におかしい。

いや、別に俺がバスタオル一枚を期待していたわけじゃないよ?

勘違いしないでいただきたい。

「ヨシさん?」

上目遣いで聞いてくる。だから何なのよ、その目…

男を誘惑するのが上手い女だな。

「何だ?」

しかし俺は惑わされない。

もう慣れた。

「キスしませんか?」

こいつはいきなり何を言うんだ。

「駄目に決まってるだろ?」

「いいじゃないですか?」

「カヤエがいるんだ。カヤエが可哀想じゃないか」

何が可哀想なのかはわからないが。

俺はカヤエがいることを口実に諦めさせる。だが、今回は引き下がろうとしない。

「じゃ、しゃあ。ヨウシさんも一緒に…」

「なに言ってんだ。無理に決まってんだろ」

俺はカヤエとなら…あ、いやいや。

そして遂に諦める。

諦めてもらわないと困る。

「もういいから先にベッドに行ってろ」

不満なのか少し顔を膨らませて

「…わかりましたよ」

少し怒りながらスタスタとベッドルールに行った。

少し経って…

無言で風呂を上がってくるカヤエ。

本当に無言で物音一つ立てないで出てくるもんだから

俺が気づいたのは姿を現した時だった。

ガタッ!

俺は椅子を後ろに倒してしまいながら立ち上がる。

「おま…」

俺の目にはカヤエのバスタオル姿が映った。いや、バスタオル姿よりも…その、後ろから生えている…しっぽが目立った。

「変…ですか?」

きっとそのしっぽのコトを言ってるのだろう。

変も何も……鬼に金棒とは良く言ったもんだよ。いや、例えが変か。ゲームではカヤエはいつも装備をしており、そこからしっぽは見えない。だから普通はそんなのが生えているなんてわからない。

俺はもう一回、マジマジと見つめる。

…反則だ。

レッドカードで即退場のレベルだぞ。

俺は冷静を装い…

「べ、別に変ではないぞ。た、ただ…」

「ただ…何ですか?」

俺は少し踏ん切りを付けて

「あ、いや何でもない…なんでバスタオル一枚なのかなー?って」

俺の言葉で何かを取り戻したのか、自分のその姿を確認しては、顔をみるみる赤くして一瞬で風呂場に戻った。

「気づかなかったのかよ」

声に出してツッコミを入れてしまったよ。ほんと。

そして出てきた時はまたメイド服だった。しっぽは隠れてしまっている。宝の持ち腐れとはこう言うことだ。

俺はしっぽ出せ。

なんて言えず、一緒にベッドルールに行った。

ウラはもう寝ていた。

「さ、寝るか」

俺はそういうと、

「じゃあ私は右側に」

するとカヤエは布団に入る。

ウラは左側でスヤスヤ寝ているわけで…ということは、自動的に俺が真ん中になるわけで…

……やられたな。

何がやられたのか解らないが、やられてしまったのだ。

俺は電気を消して真ん中の布団に入る。

するとウラが…

「暗いの…怖いですぅ~」

「そ、そうか。」

良く確認すると、ウラは完璧に寝ている。今のは寝言か…

ま、一応

俺はライトを使う。

「あなた…よくそのレベルで、その魔法を…」

右側でカヤエが耳元で呟く。

近い…

本当に近いって…

「私がお風呂を上がった時に、見ました?」

見たか、だって?

「しっぽの事か?」

「…はい」

本当に小さな声で呟く。

じゃあ、あの時の変ですかって質問は何に対して言ったんだ?

「ああ。見たけど…?」

「その…あなたは…しっぽ、好きですか?」

何だよ、この雰囲気…

何かいつもこの布団に入ると皆こんな感じになるんだよなぁ。

「ああ、大好きだ。触りたい位だ」

俺が変態宣言をしてしまう…

すると、無言で服からしっぽだけを出してきた。

ちょっとまてよ…こんなフサフサでモフモフそうなしっぽを差し出されたら…

俺の手は止まらない…

俺は触ってしまう。


思っていた以上にフサフサだ…!モフモフだ…!

「…優しくお願いしますよ」

わかってるよ。

うん。わかってる。

こんな機会は滅多にない。

ずっと気持ち良さそうに触っている俺に後ろから…

「ズルいですよ。二人だけで、コソコソと」

「あ」

見つかってしまった。

しっぽを堪能しているのを。

「これは…ですね。ウラさん」

カヤエが言い訳をしようとするが、

「ヨウシさんも好きなんですね。ヨシさんの事」

「ウラさんさん?ち、違いましたよ?」

ダメだ。隠しきれていない。

また過去形になってるし、ウラさんさんになってるし…

俺も否定しようとする。

「違うんだよ。ウラ。これはだなぁ」

「もう騙されませんよ。私だってしっぽくらい…しっぽ…」

しっぽを出そうするウラ。

いや、お前にしっぽはないから…

ん?もしかして…

「ウラ。まさか寝ぼけてるんじゃ…」

良く確認すると目は閉じている。

「寝ぼけてますね…」

俺たちが確信した後、突然俺に馬乗りになり、俺の両手を押さえつける。

「な!何を!」

俺が離そうとするが、

強い…強すぎる…。

カヤエが隣で直様起き上がり魔法であるスリープを放つ。

「無駄だ!こいつは寝ぼけてるだけだ。スリープは効かない。…くっ!」

だんだんと、顔が近づいてくる。

「ヨシさーん…キスぅ~」

完全に寝ぼけている。

何かに取り憑かれたみたいだ。

「…止めろって!起きろ!」

しかし起きない。

このままでは…

もうウラの顔が目の前に。

諦めかけた時。

俺を押さえつけていた手の力が急に弱まったかと思うと、ウラは力無く俺の胸に抱きつくようにもたれかかった。

「どうしたんだ?こいつ」

急の出来事に驚き、カヤエに確認する。

「封印石を使いました」

平然とそう言う。

「てゆうことは…」

「はい。間違いありません。邪悪な何かに取り憑かれていた…もしくは強い気持ちがそうさせたのでしょう」

そうか。

封印石は邪悪な物しか封印しない。

「じゃあ寝るか」

そして俺は再びしっぽを触る。

フサフサ…モフモフ…

「っ!!ちょ、ちょっと!強すぎですよ」

「そうか?」

俺は遠慮なしにしっぽを触りまくる。

「気持ちいいのか?」

「…恥ずかしいですが。力が抜けて気持ちいいです」

俺はそれを聞くと、つい嬉しくなって強く触る。

「…はぅ」

我慢出来なかったのかしっぽから俺の手を離し、俺の方を向く。

しっぽ…

「私の大事なしっぽを触ったんですから…今度は私の番です」

「お前…何考え…」

「動かないでください。…スリープ」

俺の意識は遠くなった。


「今日はワシが後ガキをする!

ワシが誰かだって!?

ギルドマスターを忘れたのか!

失敬な!

この場でお主をこの愛刀!セイク…」

「申し訳ございません。ギルドマスターが暴走したため、後書きは中断させていただきます。では、さよーならー。」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。