第42話 真実はいつも一つ
ルシファーが仲間に加わってから対して時間は経っていないはずなのに、もう既にアイドルの立場を確立してしまった。
ルシファーが「にゃー」といい、手を舐めると、カヤエは可愛いと声を出し、アヤメはルシファーのふさふさとした感触を楽しむ。
そして俺は、孤独を味わうことになった。ウラ達が居ない今。話し相手はカヤエくらいしかいない。アヤメは何を話しかけても簡単な応答しかしてこないし、話してるっていう実感が湧かないのは事実。とはいえ、カヤエに話しかけてもルシファーと遊んでいるからといって相手にしてくれない。
「この状況は…どう考えても…」
ぼっち!!?
まさか、騙されたような形とはいえ結婚をし、周りに女性が二人もいるのにぼっちになるとは思いもしなかった。
俺はルシファーに全てを取られてしまった。
「はッ…!? まさか!!」
まさか、ルシファーは最初からこれが目的なのではないのだろうか。ルシファーにメロメロな女性陣二人はいいとして、対してメロメロではない男の俺を迫害し、ぼっちにすべく、あのような仕草をし、女性陣二人を惹きつけ、俺をぼっちにする。
そのうえで、二人のスキをつき、ルシファーは二人を襲うのではないのか?
猫とはいえあくまでルシファー。いや、悪魔でルシファー。本当の姿はもっと恐ろしいものなのかもしれないではないか。
このままでは、俺のパーティがのっとられてしまうのではないか!?
のっとられ、挙句の果てには女性陣たちを奴隷のようにこき使い、そのパーティの力を持ってして、この国を手始めに征服し、やがては世界を……。
「うぉぉおおおおおおおおおあ!!!」
こうしてはいられない!
俺はルシファーめがけて走った。ルシファーを捕まえ、あいつを倒さないといけない。見かけは猫でも中身はルシファーという悪魔だ。カヤエとはいえどスキをつかれたら殺されるという可能性もなくはない。それに周りを見渡しても黒本が見当たらない。きっとこの猫が隠したのだろう。
俺は全力でカヤエの前にいる悪魔、ルシファーに近づいた。
「はァッ!!」
スキルを使って走った俺に、カヤエの目の色が変わる。右手には剣があり、その剣は俺めがけて斬りつけようとして……。
「あぐぁッ…!」
カヤエの剣が俺の足を容赦無く無数に斬りつける。
「ほぅ…ヨシハルさん…まさか、ルシファーに手を出すおつもりで…?」
崩れる俺を立ち上がったカヤエが見下すように見る。そしてカヤエの目が赤くなり、猫耳が生えだす。
「ちょ…ッ…ちょっと待て…ッ! な、何も斬りつけなくても…ッ」
あまりの痛さに言葉を出すのに苦労する。汗はダラダラと流れ出すのがわかる。同時に血も、かなりの量だ。
「ヨシハルっ…!」
声をあげて俺に近寄るのはアヤメだった。アヤメは倒れる俺を持っていた回復薬で回復させる。斬りつけられた足の傷は綺麗に治っていく。
「っていうか、カヤエ!今のそれって邪神の力じゃ…あ、危なッ!」
俺めがけて数本のナイフが飛んでくる。投げた主はもちろんカヤエだ。かなり的確に俺の頭と、心臓めがけて飛んできた。俺は咄嗟にアヤメを抱きかかえ、バックシールドを使い、移動する。
「目が赤く、耳が生えている…あれは間違いなく邪神の力を使ったときのカヤエの姿…」
邪神の力を使ったカヤエの強さは俺にはわからない。カヤエの父親でさえ、この扱いには気をつけていたほどだ。今の俺にカヤエを鎮められるのだろうか。
「邪神の力…? なんでしょうか、それは。そういえばさっきから、計り知れない力を感じます…」
この様子だと…邪神の力を制御できている…のか?
「と、とりあえず…! 剣をしまえ、剣を!」
意外だった。カヤエはおとなしく剣をしまった。あれが愛刀の刀でなくてよかったと思っている。
「……ルシファー、めっ」
沈黙していたこの空気の中、そんな声が聞こえた。俺がパッと振り返ると、後ろにいたはずのアヤメがいない。前を向き直ると、ルシファーのところに行って、ルシファーの額をペチッと叩き、そんなことを言っていた。
すると、途端にカヤエの目は元の色に戻り、猫耳はなくなった。
「…あれ? 私はなにを」
カヤエはキョトンとした顔で俺を見つめた。「なにをって言われても、俺を斬ったんだよ」というと、真剣な顔でアンテナをせわしなく震えさせながら俺に謝った。
理由は全くわからないものの、俺は机のしたに隠すように落ちていた黒本を拾い、中身を開いた。もしかすると答えが載っているかも。
「ええと…? これは猫を封印する書物です。しかし、この猫はただの猫ではなく…」
俺が読み上げていくうちに、全ての謎が解き明かされた。
「…それから…? この猫は防衛のため、身の危険を感じると近くの生き物の脳を操り、身を守ります。脳を操られないためにはこのアクセサリーを…」
俺はしっかりと説明を読まなかったカヤエに冷たい目線を送ると、後ろのほうでアヤメがボソッと呟く。
「……しんじつはいつも、ひとつ」




