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第四話レヲちゃん

容赦無く向かって来る魔物に、俺は白色のある物を投げつけた。

途端に魔物はその白色の何かに向かって猛突進し、それを捕まえたかと思うと急に転がりだす。

俺はそのすきに部屋の奥の方の今日の獲物である、石ころの様な大きさの緑色に輝く秘宝を戴いた。


「さ、帰るぞ」

秘宝はきちんと頂いて、要は済んだので、さっさと引き返そうとする俺に対し、ウラは

「え…?は…?ん?へ?」

ウラが混乱しだしたので、一応説明しておく。

まず、あの魔物の名前はレヲンファントス。

だから正式名称が「宝を探せ!レヲンファントス!」となっているのだが、

キーポイントとなっているのが俺が投げた白いもの。

お解りの方もいるだろうが、実はあれ、スケルトンの骨なのだ。

俺は爺の卸売を訪問した時、スケルトンの骨も一緒に買っていた。

レヲファントスにとってスケルトンの骨は猫にマタタビを与えるのと同じ。

骨を渡せば一瞬で友達なのだ。


本当いうと、俺はスキルやアイテム担当なので、レヲファントスがスケルトンの骨が好きだと知らなかったが金に困ってストーリー進行に行き詰まっていた俺がスタッフに良い金稼ぎとして教えてもらったのだ。


良く考えても見てほしいが、サラマンの様な武力のない金持ちがレヲファントスを従えるには何かが必要だとはすぐにわかるはずだ。

それがスケルトンの骨だとは誰もわからないのだが…

だからこのイベントはある意味で1番簡単なのだ。

ま、1番と言うとなると矛盾が生じてしまうが…

一応ウラにはそんな情報を手に入れていただけ、と言った。

そしたら

「そうだったんですか!なら先に言ってくれればいいのに」

そういいながらレヲンファントスを撫でている。ほんと、ウラって単純。

レヲンファントスは骨をくれた相手は絶対に襲わない。友達だもの。

「案外可愛いじゃないですか!この子」

さっきまであんなにビビってた彼女が嘘の様だ。

終いには

「名前付けません?」とか、勝手に自分のペットにしてしまった。

ほんとにもう順応が早いったら…

で、なんやかんやでペットになったレヲこと、レヲンファントスだが、

流石にこんな巨体を三日三晩連れ回すのはダメなので、とりあえず屋敷に置いとく事にした。

「レヲちゃん…」

ただ屋敷からギルドに戻るだけなのに、もう一生レヲと会えないくらいの勢いでいるウラ。

しかもそれに対して反応する様にレヲも「クゥゥン」とその巨体のどっから出てくんの?っていう程の可愛い声を出しだす始末。

もう、めんどくさいことこの上ない。


「帰るぞ。…また来るから…なっ!とりあえず戻ろう。なっ!」

「はい…ぐすっ…」

少し目に涙を浮かべるウラだったが、なんとか俺が必死に説得してギルドに戻ることができた。

それでも途中に

「レヲちゃん…」とか、「私たちがいないと、他の冒険者に殺されちゃう…」とか言っている。たがあのレヲファントスはそんなに弱くないだろ。と正直思った。


そしてギルドの受け付け。

「クエスト成功おめでとうございます!凄いですね!今まで誰も成し遂げれなかったのに!」

受付嬢のその声に周りの冒険者も耳を傾けている。俺はその不気味なプレッシャーの中、押し潰されないように、何とか返事だけする。

「あぁ、はい」

今まで達成された事のないクエストを無傷でクリアしたのだから流石に気になったようだ。直ぐに聞いてきた。

「でも一体どうやったのですか?確か最強の魔物が居るって噂でしたが…」

今まで成功したどころか、帰ってきた者すらいないって設定なのになんでそんな噂が出てるのか不思議だが、まぁそれはゲームだから、という事にしよう。

「え、いやちょっとね。」

とりあえずその質問にはあやふやに返しておいた。

「倒したんですか?」

「いや、はい、まぁ」

「倒したんであれば、素材を剥ぎ取って…」

あまりにもしつこい上に何故か素材の取り引きを始めようとするもんだから、

流石の俺も耐え兼ねて口に出してしまう。

「ペットにしました…」

と言った瞬間。


ギルド中の時間が止まったかの様に静まり返った。


「う、嘘です…」

俺がこの空気に耐えきれず、前言撤回した。

「で、ですよね。流石にそんな…」

やはり信じられなかったのか、受付嬢の肩の力が抜けたように見えた。

やっと切り抜けたように思えたが、

「ヨシさん、なに言ってるんですか。レヲちゃんはペットじゃないですか!」

ウラのこの発言で受付嬢の肩にまた力が入る。

「レ…ヲ…ちゃん…?」

受付嬢が声を途切れ途切れにさせて言うと即答でウラが

「はい!レヲちゃんです!今日そのクエストでペットにしたんですよ。案外可愛いんですよねー!耳の所とかぁ?」

そして数分くらい、レヲについて熱く語り出す。

俺はもうそのプレッシャーに押し潰されて限界に達していた。

その後、受け付け嬢がいろいろ言っていたが頭はもう真っ白で何も入らなかった…




数時間後。

俺は意識を半分もうろうとしながらも路上のベンチに座っていた。

「大丈夫ですか、ヨシさん。目がすわってますよー?」


誰のおかげだと…

いや、ウラには悪気はない……怒るのはやめておこう。

そうだ、忘れよう!

忘れてしまおう!忘れるのが一番だ!

俺は心に刻み込む。


「本当に大丈夫ですか?」

俺を本当に心配してくれているみたいで、少し焦りが見える。

「あ、あぁ。大丈夫だよ。あ、なら、とりあえず秘宝。売りに行くか」

何かを忘れることに必死だった俺は重要なことも忘れかけていたみたいだ。

「そうですね!すっかり忘れてました」

その後のウラの話は全て左へ受け流した。

そして武器屋に到着。


正直、ゲームでは普通にこの秘宝が売れたが、実際の世界のようになってしまったこの状態で、しかもかなりの高額とも言えるこの秘宝を買ってくれるのか心配だったが、

普通に売れた。

69000Nで。やはり高い金額だと思う。

ゲームと同じ買取り価格なので、とりあえず安心した。


実はこの世界は現物で金と言うものはない。

現実で言う電子マネーみたいなものだ。

この電子マネーは基本、ギルドカード、または身分証明とされる魔力カードに入る。


俺たちは魔力カードを持っていないので、その半分を自分のギルドカードに入れ、残りをウラのほうに。


最初は何もしてないからと遠慮していたが、必要になるかもしれないから、ってことで受け取って貰った。


「もう夜ですね」

「そうだな」

店から出るともう既に日が落ちて夜になっていた。

「取り敢えずホテルに泊まるか」

「え…?あ、はい…」

何かまずい事でも言ったか?と思ったが、どうせ詰まらないことだろう。と一蹴りしてホテルに向かった。

俺はホテルの受け付けに行き、

「あの、一等部屋のツイン…」

俺がツインベッドって言おうとしたらウラが

「シングルベッドでお願いします!」


「ちょ!」

「いいんですよ、ヨシさん。こういう契約とかするの苦手でしょ?」


いや、別に苦手じゃないけど。

ってゆうかホテルに泊まるだけで契約って大袈裟すぎだろ。

結局、ウラが最後まで受け付けした。

そして一等部屋へ。

俺は見るからに高級そうなドアを開ける。

「おお。すごい!」

「すごいです!」

久しぶりにこんな綺麗で広い部屋を見た。

ウラなんかもう修学旅行にでも来た女子高生みたいにはしゃいでいる。

「取り敢えず荷物おいて…と」

「俺、先に風呂入るわ」

「え…あ、はい…」

俺はシャワーを浴びながら

今いる世界の事について考えることにした。

ゲームならあり得ない事……一日で数え切れない程起こった。

NPCが紙に書き込む方法を知らなかったり、レヲファントスをペットにしたり、普通じゃ考えられない程空気が読めなかったり。

いや、NPCというのはもう語弊か…普通の何ら変わらない人間なんだな…

「一体、ここは、どこなんだ…」

なんとか帰る方法を探さないとな…。

数分後、俺は風呂を上がりウラの元へ…

「風呂上がったぞー。ん?どうした?」

何処か雰囲気の違うウラ。

「いや、何でもないです。あ、私お風呂入ってきます!」


「お、おう」


ウラが風呂に入っている間、俺は装備をもう一度確認する。

装備はやっぱり初期装備か…

俺は聖剣セイクリッドソードという大剣を持っていた。

俺にとって最強の愛剣だったが、今はもう刃の欠けたバスターソードしかない。

防具もスカル一式か。


何だかんだ考えているとシャワーの音が耳に入る…

「ん?ちょっと待てよ…」

俺は周りを即座に確認する。

何かがおかしい。

何か違和感を感じる…

この違和感…高級ホテル…シングルベッド…シャワーの音…

「これは…!!」

道理でウラの態度が変だった訳だ…

しまった!あの時にツインベッドと言っておけば…!

いやいや、早すぎるぞ。

早すぎる。

会って二日だぞ。

一日目に助けて二日目にイベントこなしただけだぞ?

これは…まさに。

ラブコメイベントが今、始まろうとしている!!!!

ラブコメイベント突入!

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