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第伍話妄想は最強だと思う。

ラブコメイベント。

それは一定の女性キャラに対して起きるイベントだ。このゲームにおけるラブコメイベントは他とは一味違う。故に発生させるには難しく、俺でさえできなかった。

いや、女性への接し方の知らない俺にはやろうとも思わなかった。

というか発生は不可能である。

何故かというと

このイベントは友好度、愛情度、信頼度、それぞれが60%以上上げないと始まらないイベントなのである。

いや、もうラブコメとかじゃない。

しかし、このイベントは俺とスタッフ達によるお遊び気分で作られたイベントで、まず友好度、愛情度、信頼度がすべて60%以上は上がらない設定にしてある。

だからそのイベントは発生不可能イベントの内に指定されていたのだ。


しかし、現実とゲームが一体化したと考えられるこの世界では、そんな設定は排除されてしまったのだろうか。

このままでは…









急にシャワーの音が止まった。


「ふぅ…お湯、気持ちよかったです」


そんな声が聞こえてしばらくすると、

バスタオル一枚で俺の目の前に現れた。

な…胸が…でかい…

毎日鎧の装備をしていて、

全然そんなふうに感じさせなかったウラの身体だが、今はいつもと違って感じられた。


「…ヨシさん」


「な、なんだ?」


ベッドに座っている俺が返事をすると、ウラが俺の隣に座った。


「あの時私は、あな……ヨシさんがいなければ、私は死んでました」


そういうとウラがもっと身体を寄せて来る。


「あ、あぁ。うん。そうだな」


「私…実は…そのぅ…ヨシさんのことが…好きです…!」

「え?」


そういって間も無く、ウラは俺の唇にキスをする。

ウラがキスをやめおうとしたが、

俺の身体が勝手に動きウラを引き寄せ、もっと、もっと深く舌を絡ませる。










そして俺は気がつく。



「はっ!俺はなんて妄想を!!」


ちょっと妄想しすぎてしまった。

してみたい気持ちは無い訳ではないのだが流石にそれはダメだ。

そして本当にシャワーの音がとまる。

「ヨシさん?お湯、気持ちよかったです!」

そんな声が聞こえてしばらくすると、バスタオル一枚で…ではなくて、普通のよくあるピンクの寝巻きで出てきた。

「…ふぅ…良かった」


「何がですか?」

俺の隣に座る。


「いや、何でもないよ。じゃあ寝ようか?」

「…は、はい。でも、ヨシさんと話がしたかったです」


「今日はいろいろと疲れたからな。明日にしよう」

俺がそう提案すると

「はい…」

と残念そうにしながら布団の中に入っていく。

「電気消すぞ」

返事もなしに、俺は電気を消す。

部屋の中が月の光だけで薄暗く照らされる。その景色を不気味と感じたのか、

「…なんか、真っ暗で怖いです…ヨシさん」

と、怯え出すウラ。

自分はこの景色は落ち着くから別に良かったのだが、ウラは耐えられないようなので、

「わかったよ。ライト!」

俺は火属性魔法であるライトを使い辺りを柔らかい光で少し照らす。

そしてその柔らかい光が部屋を包む、俺はウラの隣に入っていく。

「綺麗…です」

そういって10分以上も見つめるもんだから少し心配になってきた。

「ずっと見てないで早く寝ろよ」


「はい」

少しイラついたような声で返事をする。

でも良かった。

俺の勘違いだったのだろう。

禁断のラブコメは発生していなかった。

やっぱりな、発生不可能イベントだもんな。

勘違いのおかげで変な妄想までしてしまった俺が恥ずかしい。

俺がここまでこのイベントを拒否するのは、NPCだから、というのがあるからかも知れない。

例えNPCでも女性と2人きりでベッドに入り、夜を過ごすのは初めてだ。

ウラの方向とは逆の向きに向いて

胸のドキドキを抑えながら寝ることに専念していた。

胸の鼓動がウラに聞こえたら緊張しているのがばれてしまう。

そしてしばらく経ってから

ウラがとても小さな声だったが、充分と言える声で俺に話しかけてきた。

「ヨシさん?起きてますか?」

「ん?あぁ。起きてるぞ」


俺は少し寝かけていたのだが、無視するのは可哀想なので返事をする。

まぁ、どうせすぐ寝るだろう。

「ヨシさんは…私のコト…どう思ってるんですか?」

「え?…あ、いや、別に嫌いではないよ」

なんでいきなり、そんなコトを聞くのか、気がしれない。


「好きか…嫌いか…で言うと?」

何故かただでさえ小さな声なのに更に小さい声に変わった。


「…す、好きだよ?」


取捨選択とは言っても初めて人に好きとか言ってしまった。

恥ずかしくて顔が真っ赤になって暑い。

「ほんと?」

「あ、あぁ」


しばらく声はしなかった。

そして

「私も…ヨシさんのこと…好きです。」


「おまっ!」

振り返るとウラはこっちを向いていた。

これは、間違いなく。今度こそ、ラブコメイベント発生だ。

目線が混ざり合う。

そして、ウラはスッと顔を近づけてきた。

このままじゃ…

俺は咄嗟にウラの右手を掴み、抱き寄せた。

「あ…」

「何も言うな…それ以上はダメだ…」

そういうと

「よ、ヨシさんは…私のコト…嫌いなの?」

少し、泣いている。

部屋はライトがしてあるかといってもまだ薄暗くてあまり見えないが、俺の耳元で泣いているのが聞こえる。

俺は強く抱きしめて、

「嫌いな訳じゃない…ただ、こんなことで、ウラを、大切な人を、汚したくない」


「ヨシさん…うぅぅ」

ついに大きく泣き出してしまうウラ…

どうしてこれだけの時間で俺のことをここまで思うことができるのだろうか。

俺はさらに強く、だけど優しく抱きしめて、そして緩めて少し離し、ウラの目を見つめる。

「ウラ…」

まだ泣いている。俺はウラが出来るだけ傷付かないようにしたつもりだ。

「もう、寝よう」

俺が優しくそう告げて、頭を撫でると

「じゃ、じゃあ右腕だけでも…」

「右腕…?」

「は、はい。抱きつくだけなら、いいですよね?」

正直、ウラの気持ちはわからないがこれを断るともっと泣いてしまうだろう。

「あ、ああ」

俺が右腕を差し出すと、何をするのかと思ったが、ウラは俺の右腕に両腕を巻きつけて

「ヨシ抱き枕…です」

いや、意味がわからない。


「そ、そうか。じゃあ、お休み」


「おやすみなさい…」

暫くして、ようやくウラは泣き止んだ。

ウラは俺の右腕に抱きつくようにして寝る。

そして、俺たちはそれ以降一切話さずに夜を過ごした。


次の日の朝。

俺は少し遅く起きた。


「あ!ヨシさん!おはようございます!」

「…あぁ。おはよう」

昨日の事が無かったかの様に元気な、おはようだった。

「でも、嬉しかったです。昨日、ヨシさん起きなくて…」

「起きなくて…?」

「あ、いや、なんでもないですよ!?」

「なんか怪しいぞ」

「さ!は、早くしてくださいよ!準備!」

「何かあるのか?」

「何ですか?まーさか聞いてないんですか?ギルドに呼ばれてるんですよ!私達!」

いや、そんなの聞いてないし…ってかそんなコト、いつ聞いたんだよ。


「さ、早く早く」

「わ、わかってるよ」

俺はやけに動揺しているウラに急かされながら薄着の上からスカル一式を装備する。


「よし、準備できたぞ」

「じゃあ行きましょっか!」

俺はホテルの受け付けに行こうとするが、ウラは出口に向かう。

「どこ行くんですか?」

「いや、受け付けだけど」


俺は、お前本当に天然だな。普通は会計済ますだろ。


「何言ってるんですか。私達はこのホテルに5日間くらい滞在するんですよ?あの時に受け付けしたじゃないですかー。ヨシさんったら」

「あ」

そうか、あの時だ。

俺がツインベッドと頼もうとした時。ウラが割り込んできた時だ。

そういえば全て任せっきりだった。

「じゃ、行きますよ!」

俺はウラに手を引っ張られながらホテルをでる。

少し経って、ギルドの前に到着した。俺はここで、あることを聞いておく。

「ウラ」

「は、はい?」

「入る前にちょっといいか?ウラって武器は何を使うんだ?」

「短刀ですけど…何でですか?」

「いや。短刀なら大丈夫だ」

ウラが短剣使いなのは

俺は微笑みながらギルドの扉を開ける。

そしたら待ち伏せでもしてたかのようにギルドの受け付け嬢が2人やってきて


「ヨシハルさんと、ウラーニアさんですね。奥へどうぞ」

受け付け嬢に案内されながら…


俺はこの受け付け嬢を見て何時も思う。

実は迎いに来てくれる受け付け嬢の一人は女性キャラの内でTOPを争うほど胸がでかいしとても美人。

俺が受け付け嬢ばかり見ていると

「ヨシさん!?」

鋭い目線が俺に刺さる。

「あ、いや。なんでもないよ?うん」

俺が必死に否定していると

「着きました。ギルドマスターの部屋です。ギルドマスターには礼儀正しくお願いします」

遂にギルドマスターの部屋に到着する。

俺はギルドマスターの部屋の扉を開けた。

俺たちが部屋に入るのと同時に、

「おお。来たか。あんたらがあの秘宝をもって帰れた上にあの化け物をペットにしてしたという奴か!」

大きな声が部屋中に響き渡る。

これがギルドマスターだ。顔には歴戦を繰り広げ、百戦錬磨したのがわかるくらいに傷だらけだ。

「はい」

「そうかそうか。実はワシも昔、秘宝を取りに行ったんだが…見事に死にかけて…何とか今生きてるんだよ」

その時に戦ったと思われる傷がスキンヘッドの頭に残っていた。

「あの化け物…いや魔物はやはり…」

「はい。レヲンファントスです」

俺の言葉にすかさずウラが

「違いますよ!ヨシさん!レヲちゃんです!」

「お前なぁ」

「はっはっはっはっ。レヲちゃんか!いやぁ可愛い名前だな!」

「ギルドマスターもそう思いますよね!ほらヨシさん!やっぱり可愛い名前じゃないですかぁ」


いや、別に名前が可愛いとか可愛くないとかそんなんじゃなくて。

するとギルドマスターは何かを思い出したのか

「そうだ!忘れておった!アレをもってくるから待っておれ!」


そう言われて、待たされる俺たち。

本当にギルドマスターって一言一言声がでかいよなぁ。

そう思いながら待っていると…


「これだこれ!あんたらにこれを渡しておくぞ!これは聖剣ダマスカスソードだ!あのサラマンが残したものだ!クエスト成功の祝福として、これをやろう!」


ウラがその大剣であるダマスカスソードを受け取る。


「お、おもっ…

でも、この模様って何なんですか?古代文字みたいな…しかもこの二等分にされたけど溶接しましたー、みたいな跡は…?」


「それはワシにもわからん!サラマンに聞いてくれ!ガッはっはっ!」


ギルドマスターにもわからないみたいだが、俺はその聖剣をウラから受け取り、

そして…

「聖剣…滅殺…天空斬り!」

俺が叫び聖剣を宙に投げ、そして…

パキィィィィン!

俺はその聖剣を真っ二つに叩き割った。


これからもよろしくお願いします。


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