第34話 どうしようもない最期
更新遅れましたが、それでも読んでくださる読者様には感謝です!
これからも、読んでいただければ嬉しいです
目を開けると、ごつごつとした天井が目には入った。その天井は、焚き火によって明るく照らされていた。まだ頭がズキズキと痛む。
「...セバス、大丈夫?」
カヤエは申し訳なさそうに俺の顔を覗き込む。
「だ、大丈夫...たぶん...」
「本当にごめんなさい。セバスだってわからなくて...」
「大丈夫だって。それより腹減ったからさ、トラシアスでも調理してくれ」
「うん。もう既にこんがり焼けてるよ」
見ると焚き火の上で見事に焼かれているトラシアスの姿があった。良い匂いが洞窟の中を漂っている。それを包丁でステーキのように切り取って、木で簡単に作った皿に乗っける。それをカヤエに渡して自分の分も切り取るが切り取ったカヤエの分とあわせても、焚き火の上に残ってる肉のほうが断然多い。
「この残ったやつどうする?」
「うーん...じゃあ、セバスが食べてよ」
「これを?」
量にすると数十キロある。必要な分だけ切り取って持ち帰ればよかったと、正直後悔している。
「ほら、美味しいよ?」
大きく切り取って、俺の皿に乗っける。
いや、美味しいのはわっかってる。さっきステーキくらいの大きさのを食べたばっかりだ。
「あ、ありがとう...」
俺は苦笑いをしながら、皿の上におかれた肉を頬ばった。
「はい」
俺がそれを食べ終わる度に、次へ次へと肉をのせていくカヤエ。
「ちょっとまってくれ」
「ん?どうしたの?」
「も、もう食えない...」
「...そぅ...」
なぜか悲しそうな顔をする。
「わ、わかったから。食うから」
「うん!」
そして悲しい顔からいっきに笑顔にあふれたすがすがしい顔へと変化していった。そして、さっきとかわらず、容赦なく俺の皿にこれでもかというくらいに肉が盛られていく。
肉の脂が腹にたまっていき気分が悪くなってきた。それでも皿に肉が盛られていく。俺の頭の中は肉一色になっていた。
肉、肉、肉、肉、肉、肉、ニク、にく、niku......
肉とはいったいなんなのだろうか、俺に何をもたらすのだろうか、俺に吐き気をもたらして何が楽しいのだろうか。
くそ...肉が憎い...
そもそもヤツ(肉)の目的は何だ?俺の体をのっとり、操作するのが目的か?それとも世界制服か?ふふふ、なるほど、人を吐き気に襲うことで優越感に浸るつもりか...
「だ、大丈夫?セバス...やっぱり無理しなくていいよ...?」
そうはさせない。カヤエを肉の魔の手から守ってやる。
「カヤエは俺がまもるから」
そう。肉ごときにカヤエをやられてたまるか。そんなこと、たまったもんじゃない。
「どういうこと?守るって...?」
俺はどんどんと肉を口の中へと放り込み、掃除機のごとく胃の中へと送り込んでいく。そこに俺の意思や理性などなかった。機械のように、ただプログラミングされたとおりに胃の中へと肉を送り込む。
「もういいよ!食べなくてもいいよ!私がたべるから!」
こいつ(肉)は遠隔操作で人の心を操ることができるみたいだな。現にカヤエにも肉を食わせようとしている。こんなヤツの言うとおりにするもんか。
「セバス...?何かおかしいよ...」
俺はいっさいおかしくない。おかしいわけがない。
俺はついにすべての肉を食べきった。それと同時に俺の意識がどんどんと遠くなっていった。
目を開けると、またごつごつとした天井が目に入った。
「はぁ~...よかった~」
カヤエは胸をなでおろしていた。
「あのね、セバスがおかしくなってたから、すこし残っていた肉をよくよく確認してみたら...」
「確認してみたら...?」
「たぶん、セバスはトラシアスだと思ってたんだろうけど。これ、トラシアスじゃなくてテラシアスだよ?」
て、テラシアス!?
テラシアスはトラシアスの逆の効果をもつ。美味しさの設定はしらないが、こいつを倒すと、レベルが一下がるのだ。ちなみにこいつは魔王を倒すには通らないといけないエリアにうじゃうじゃといるうえに攻」してくるからとても厄介だ。容赦なく襲ってくるテラシアスを倒してしまえばレベルがどんどんと下がっていき、魔王のところにたどり着いたころには残念なことになっているのだ。
「だけど、テラシアスだからどうだって言うんだ?」
「まさか、セバスは知らないの?」
「何が?」
「混乱ナイフって、テラシアスを素材としてつくられているんだよ?」
「え...」
混乱ナイフとはつまり、敵に攻撃を加えれば30パーセントの確率で混乱状態にする道具のことだ。確率が低い上に、なぜか、値段が高いためあんまりお世話になったことがない。
「つまり、テラシアスを食べた俺は混乱状態になったってことか...」
「うん。私は混乱状態にならなかったけどね。で、それに気づいたから、状態回復魔法使ったってわけ」
「そうか...」
洞窟のそとはまだ真っ暗だ。焚き火の火が小さくなっている。
「あの...さ?」
「ん?」
「あの時、見たよね...?」
「あの時?」
「ほら、セバスが私のは、裸みたとき...」
「あ、いや、あれは違うんだぞ!?別にやましいこととか―――」
「しっぽ!しっぽ...見たんだよね...」
「しっぽ...?」
そういえば、あのときはしっぽは見えなかったな。それよりもカヤエの月に照らされた体と歌に見とれていて、考えていなかった。
「...やっぱり......気持ち悪いよね...人じゃな―――」
「見せてくれないか?」
「え?」
「正直そんなの見えてなかったんだ。だから見せてくれよ」
「...見てないなら、見てないままでいい...よ」
「だめだ、見せてくれ」
そういえば最近、カヤエのしっぽを見ていない。見たいという衝動に駆られた。もはや「よしはる」と書いて変態と呼ぶにふさわしいほどだ。全国のよしはるさんに謝りたい。
「...そんなの、嫌...セバスに嫌われたくない」
「嫌いになんてなったりしない!」
しっぽなんて見てしまえば、嫌いになるどころか、もっと好きになってしまうだろうが。
「ほんと?」
「あ、ああ。ほんとだ、ほんと」
ここは押しどころだとおもって、強く言った。
「じゃ、じゃあ...すこしだけ...」
カヤエは身にまとっていた装備をはずす。
「後ろ、向いてて...」
「わかった」
俺が後ろを向いているときに俺の言った内容を思い返す。俺の言葉はほとんどが変体発言だということに気づいてしまった。さっきから、見せてくれとしか言っていない。
「いいよ...」
その言葉が聞こえたとき、俺は瞬時に振り向いた。
「あ...」
俺はその姿に言葉が出なかった。脱いだ服を前に抱えこんでいる。しっぽが後ろからふるふると左右に揺れている。黒く艶々としていて可愛らしい。
「幻滅、したよね...?」
「あ、いやそんなことは―――」
「いいの...いいの...ごめんなさい...」
「なんで謝るんだよ」
「斬るから...」
「え?」
「このしっぽさえなければいいんだよね?じゃあ、斬る」
カヤエはしっぽに剣を突きつける
「おい、やめろ!」
俺は剣をもっている手をつかむ。
「とめないで......!」
「なんでこんなことするんだよ!」
「だってこのしっぽのせいで...みんなが私から離れていく...」
「はははッ!ばかかよ。そのしっぽでどれほどのゲーマーが救われるか...」
「げーまー?」
「あ、いや、なんでも。とにかく、こんなことはやめてくれよ」
「...うん」
説得させたうえで、手を離す。
「触ってもいいか?」
「...少しだけな...ひぅ...!」
「すごいふさふさだ!すばらしい!」
「もぅ、やめて...!」
カヤエは俺の腕をしっぽからはなす。
いや、それにしてもフッサフサだったなぁ。
「セバス?」
「な、なんだ?」
「鼻血、出てるよ」
バッと手で鼻を押さえる。手の隙間からこれでもかというくらいぽたぽたとたれ落ちる。
「ちょ、ちょっと川で洗ってくる!」
俺は急いで川へと向かった。
それにしても変なことを考えすぎたようだ。にしても、本当に変なことを想像するだけで、鼻血が出るもんなんだな。
自分の変態行為と発言に反省しながらも感心していると川に到着してしまった。到着すると、迷わず顔ごと川の水だ洗う。
「ふぅ~...さっぱりする~」
しかしまだ鼻血は止まらない。
そういえば、鼻血は状態以上とかに含まれるのだろうか。気になるし、試してみるか。
ポケットの中から状態回復薬を取り出して、自分に使ってみる。が、鼻血はぽたぽたとたれ落ちていてとまる気配がない。
ということは回復薬ならどうだろうか。
今度は回復薬を取り出して、自分につかう。
「お、とまった」
回復薬で鼻血がとまることがわかった。正直、なんの役にも立たないことはもうわかりきっている。もう一度、顔を洗う。
グルルルルルルルルルルルルルルッ!
俺の頭上で、なにかうなるような声が聞こえる。
「ま、まさか...」
顔を上げると、そこにはプチウスがいた。こいつは、昼間の間は、こいつはとてもおとなしくて、人を襲うことなんてまずありえない。それどころか、その容姿のかわいらしさから、こいつを嫌う人はまずいない。しかし、それはあくまで、昼のすがた。
こいつの夜の姿といったら、昼間とまるで反対でとても凶暴で、あいてが自分よりも強かろうが弱かろうが関係なくいきなり襲ってくる。
攻撃力もすさまじいもので、簡単な装備なら一撃でやられてしまうほどだ。
「やるしかないか」
俺はため息一つついてから剣を抜き出す。
「あれ、あれ!?な、ない!?剣が!」
洞窟に置き忘れてしまった!やばい!
まず、スキルというものは武器を持っていないとつかえない。単にパンチだけの攻撃は敵にまったくといっていいくらい効果がない。それどころか、プチウス夜バージョンは鮫肌のようにトゲトゲしていて、とても殴れるよなものじゃない。逃げるというもまずできないだろう。
「絶体絶命...か」
カヤエはおそらく洞窟にいたままだ。ここにくることは考えられない。
ガァァァァァァァァァァァァァァァ!!
成す術のない俺にプチウスは容赦なく襲い掛かってくる。しかし、その威勢もすぐになくなり、何者かによって切り刻まれる。
「一体全体、このようなところでなにをしているのですか?」
「か、カヤエ!?」
「あなたがいきなりいなくなってしまったので気になってあなたの居場所を特定してここにきた次第ですが...無様ですね、あなたともあろう人が」
「助かったよ」
「礼など不要です。それよりも、いますぐ帰りましょう」
「あ、いや、すぐには帰れない...」
「なぜです?」
「それはだな...」
カヤエの面倒をみるからなんて言えたもんじゃない。
すると、遠くのほうから俺を呼ぶ声が聞こえてきた。
「セバスー?どこー?」
「や、やばい!カヤエ!こっちにこい!」
俺は草むらのほうにカヤエをひきこむ。
「きゃっ!な、なんですか、いきなり!」
「すこし、黙ってくれ」
「なぜです?......んんっ!」
俺は手でカヤエの口を押さえる。このままだと、この時代のカヤエと鉢合わせてしまうかもしれない。確か、そんなことをすると、タイムパラドックスというものが起こってしまうと、どこかで聴いた気がする。
「あれ?行き違いになったのかな?」
川の近くにいるカヤエはそういうと洞窟の方へもどっていった。
「...んー!んんー!」
「あ、ごめん」
「はぁはぁ、説明、して、はぁはぁ、ください!」
「あー、ええと...」
顔が赤くなっていて、息をきらすカヤエを見ると、また変な想像を...
「ちょ、ちょっと、横に、はぁはぁ」
そうとう息を止めさせてしまったのか、カヤエは横になって肩で息をする。
か、可愛ぃ...じゃなくて。
「説明すると...だな、この森で迷子になった子どもを守っているんだ、うん」
本当のことを言ってしまうと、きっと確認せずにはいられないだろう。だからあえてうそをつく。
「冗談はもういい、はぁはぁ、ですから、本当のことを...げほッ、はぁはぁ」
「おい、大丈夫か?」
「はぁはぁ、くる、しいです、はぁはぁ」
「回復薬とかは!?」
俺は即座にカヤエの持っていた回復薬と状態回復薬を使った。が、いっこうに治る気配がない。
「はぁ、はぁはぁ!はぁはぁヨシハル、さん」
どんどんと息が荒くなっていき、胸を押さえる。
「なにが起きてるんだ!?」
「もぅ、はぁ...だめ、です、はぁ......」
ぐてっと魂のなくなった人形のように意識をうしなう。
「おい!カヤエ!カヤエ!返事しろ!おい!」
いったい何が起きてるんだ?
体をゆすってもまったく反応しない。
「なんだよ、何が起きたんだよ!」
手首を触り、脈をみた。だが、鼓動は感じられなかった。
「そうだ!教会に!」
教会は、死んでしまったキャラクターを復活させることができる場所だ。プレイヤーがしんでしまっても、教会になんて行かずにセーブポイントに戻るだけだから、仲間キャラ専用だといえる。
気づけばこの時代のカヤエのことなんてすっかり忘れて、脈のないカヤエをかかえて教会へと走っていた。ただひたすらに地面を蹴ることだけを考え、それに集中していた。スキルも使えない中、カヤエの持っている武器を使えば良いのに、そんなことも考えられないほど俺は焦っていた。息も絶え絶えにしながらも、やっとのことで教会に到着した。
「はぁ、はぁ、彼女を、生き返らせてください」
白い髭の生えた神父に頼み込んだ。
「任せなさい。君は落ち着いて、そこに座っておきなさい」
彼は自信ありげにカヤエを受け取った。
もう大丈夫だ。俺は深呼吸をして、気持ちを落ち着かせた。しかしなぜこんな事がおきたのだろうか。この世界では状態異常、体力くらいしか死因はないはずなのに。
状態異常なら毒くらい、体力なら敵、又は混乱状態における自分に対する攻撃で体力が0になれば死ぬ。スキルの使いすぎによるスタミナの消耗は単なる酸欠による頭痛。魔法の使いすぎによる魔力の使いすぎは意識を失うだけであり、この場合は体力は関係ない。
あと考えられるのは呪いくらいだ。呪いの種類によってその効力は変化していく。のろいさえ使えれば、相手を状態異常にさせることなんてとても容易だ。殺すことも簡単だ。だが、呪いを使えば術者にも影響がでてくる。
例えば、相手をマヒ状態にするために俺が呪いをかけたとする。呪いは100パーセントの確率で成功するから当然相手は呪いによりマヒ状態になる。しかしデメリットとして、相手にかけた呪いの種類と同じ呪いが自分にもかかる。人を呪わば穴二つということだ。
だから、まず、人を殺すための呪いをかけてしまえばかけた本人も死んでしまうことになる。そんなことをすることはまず考えられない。
それに呪いは簡単に使える技ではない。プレイヤーの場合はゲームをコンプリートでもしない限り、呪いは使えないだろう。このゲームでは、オンラインとオフラインの両方ともを利用することができる。それぞ つまり、オフラインで魔王を倒すところまでストーリーを進めれば、魔王を倒した装備で、オンラインでストーリーをこなせるため、最初に現れるレギオンなんて瞬殺できる。
そこで、呪いを使えるようになった人がオンラインで、ほかのプライヤーを呪って毒状態にする嫌がらせが流行したため、オンラインでは使用禁止となり使えなくなった。もちろん使った側も呪いにかかり、毒状態になるわけだが、そういうやつはたいてい状態異常無効化の装備をつけているため、状態異常にはかからない。一番酷かったのは、「即死効果無効」の装備をしたやつが、呪いでオンラインプレイヤーを大量暗殺したことだ。
俺も一度、殺されたこともあって、かなりむかついて速攻で使用禁止にしてやった。
だがもちろん即死効果無効の装備なんて手に入れるなんてのは、まず不可能なことであり、殺すための呪いを習得するのもまず難しいことだ。
今はどうでもいいことだが。
「お、おかしい...」
さっきまで自信満々の表情で復活の儀式をしていた神父が汗を流しならその表情がかえていく。
「どうしたんですか!」
座っていた俺は立ち上がり、神父のところへいった。
「おかしい点は2点ある。まず一点、彼女の冒険者としてのレベルはどのくらいかな?」
「えぇーと、詳しくは覚えてませんが、かなりのレベルです」
「それは200を越すくらいかな?」
「はい、たぶん」
彼はその白い髭を触り、小さく唸ったあと、話し出した。
「あと一点は、彼女の存在の時間と空間がずれている」
「そ、それは...」
それは、俺たちがこの時代にきたことだろう。でも空間ってのは?
彼から、思いもしない言葉が発せられた。
「残念だが、彼女を救うことはできない。だがそう落ち込まないことだ。人は何れしぬ」
「は、は?」
彼は俺の肩に手を置く。
「そんな筈はない...教会では必ず復活できるはず...」
「...非常に残念だが」
「そんなこと!設定していないっ!!そんな設定なんて存在しないんだぞ!?」
「な、なんのことだね?」
「バグか!?不具合か!?」
「落ち着きたまえ!!君はまだ死んでいない!君の人生はまだあるはずだ!彼女のためにも、彼女の死をうけとめなさい!」
もう、いい。俺は考えれなかった。
「もう、いい。俺が、やる」
「そんなことできるはずが―――」
「カヤエに触るなっ!!」
神父の手をつかみ、それを押し飛ばした。カヤエを抱え、倒れている神父をほったらかし、教会を後にした。
しかし、そんなことをしてもカヤエを助ける方法なんて思いつくはずがなかった。
「...とりあえず、ホテルにいこう...」
カヤエをきれいなところに置かないとと思った。
「あ、ヨシさん!何してたんですか?みんな―――」
「どいてくれ」
俺はウラを押しのけて俺の部屋に入り、カヤエをベットの上に置く。
俺が帰ってきたことを聞きつけて、みんなが部屋にはいってきた。
「どうしたんだ?」
みんなを代表するようにリリーが小さくつぶやくように言った。
「カヤエが...死んだ...」
「えっ......」
部屋が静まり返った。
「俺は...何も、できなかった..」
「でもっ!何か方法はあるはずです!」
「そうだぞ、あきらめ―――」
「ないんだよ。カヤエを救う方法なんてのは...」
「そ、そんなはずないです!絶対なにかあります!」
「じゃあきくけど、なにがあるってんだよ」
「そ...それは...」
「俺は製作者なんだぞ?このことについて誰よりもしってんだよ!何もわかってないのに、何も知らないくせに、簡単そんなこというな!」
「よ、ヨシさん...?」
自分の言ったことの内容に気づき、ふと、われに返った。力が入ってしまい立ち上がった俺は力を抜いて再びベットへ座り込む。
「あ、ごめん...」
すると、ずっと黙っていたアヤメがそっと俺の隣に寄った。
「......よしはるは何をのぞむの?」
そっと俺の耳元でこそばいくらいの声で囁いた。
「カヤエを...生き返らせたい...」
「......でも、何かしないといけないこと、ない?」
なんだ、今日のアヤメはよくしゃべるな。
...しないといえないことか。
そのとき、ふとあることが頭をよぎった。
「そうだっ!!」
「...うん、行ってきて」
アヤメに背中を押されて、俺は走り出した。俺はすっかり忘れていた。この時代のカヤエのことを。もうカヤエは助からない、そんなことはわかってる。アヤメもきっとそれを察したのだろう。
俺はきれいに整備された道路を駆け抜ける。ところどころに居る人々を押しのけて。だんだんと整備の整っていない道路へと変わっていく。道に草が生えはじめ、それが木へと変わっていく。
息も絶え絶えにしながら、やっとのことで洞窟へと辿りついた。
「はぁ...はぁ...か、カヤエ?」
焚き火は消えていてほとんど真っ暗で何も見えない。
「...ライト」
光を発する魔法を使い、あたりを照らす。
「そ...んな...うそだろ...カヤエ!!!」
そこには血の海に沈んでいるカヤエがいた。カヤエは目を半開きにして、苦しそうにしゃべりだした。
「...セバスぅ...おそいよぉ...私、てっきりしっぽのせいで嫌われたとおもっ...げほっ、げほっ...」
カヤエの右手にはナイフが握られていた。
「そんなわけないだろ!!回復薬は!?」
「...セバスに嫌われたとおもってね...?もう、死んで楽になろって...思った...」
「くそ、回復薬は...!!!」
俺はカヤエの言葉を聞きながら回復薬を探す。
「もう、いいよ...」
「良くない!少し黙ってろ!」
「私はどうせあの時死んでたんだから...」
「何で回復薬がないんだよ!そうだ!魔法だ!回復系の魔法!」
俺は木刀を取り出す。
「しまった...!これじゃあ回復系の魔法が使えない!」
「貴方と会えてよかったなぁ...ありがとう...」
「なんだよ!さきから死亡フラグばっか立てやがって!」
「最後に、きいて......?」
「最後になんてしねーぞ!絶対!」
俺はカヤエのバックの中の道具を全部出して、何か方法がないか模索する。
「きいて......?」
「これじゃ、だめだ。セリノの爪の合成は状態回復薬しかできない」
それでも聞かない俺に、カヤエは無理にその体を起こして、今までにないほど、声を荒げてさけんだ。
「セバス!!!...けほっ...ごほっ...」
「なにやってんだよ!」
「へへ、ちゃんと、最後まで、きいてね...?」
「わかったから、はやく言えよ。もたないだろ!」
「私を、抱きしめて...」
「わかった」
俺はすぐさまカヤエをだきしめた。さっさと黙ってほしかったからだ。カヤエが喋るたびに血が流れ出てしまう。
カヤエの体はすっかり熱を失っていた。そして、カヤエは耳元で囁く。
「セバス...?私、セバスが...好き......」
「ああ、ありがとう。でも今はカヤエが危ないだろ?.......カヤエ?」
俺がカヤエを横にすると、開けられていたはずのカヤエの目は閉じられていた。
「ぉい...うそだろ、おい!カヤエ!おい!!ふざけんなよ...なんでだよ!!ありえないだろ!!」
俺は、二回もカヤエを救えなかった。なにもしてやれなかった。
「ぁ...ぁぁぁ...くそがぁぁぁあああああああああああああっ!!!!!」
もう、どうしようもなかった。




