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第23話 レベルとは時として残酷。

春めいてまいりましたが、お元気ですか?



この文に気持ちがこもってないと思うのは私だけかな?

「起きて、ヨシハル君」

誰だろうか。この声の持ち主は…

聞き慣れない。でも何処か懐かしい…

俺は目を擦り、その声の持ち主を見る。しかし、ぼやけていて良く見えない。

俺はもう一度目を擦る。

だんだんとぼやけていた存在がハッキリと見えるようになる。

「なんだ…梨奈か…」

俺の目の前には、俺の人生で初めての彼女が居た。

「もう!なんだって何よ。折角起こしに来てあげたのに」

梨奈は顔を膨らませる。

「…ありがとう。…で、今何時?」

梨奈は腕にしてある時計を見たあと、俺の顔を見る。

「7時21分だよ?」

「そうか…7時21……分!?やばっ!こうしちゃあ、居られない!急がなきゃ!」

俺が慌てて起き上がり、布団から出ると梨奈は首を傾げる。

「今日は何かあるの?」

「うん。今日は、製作したゲームのバージョンアップをしないと…」

「確か……リオティオン…だっけ?」

「そう、リオティオ……」

俺はリオティオンという単語で止まる。

「どうしたの?」と心配そうに俺の顔を伺う。

ちょっと待て。

俺って確か、リオティオンの世界にいたんじゃ…

あまりにも、日常的過ぎて、違和感を感じなかった。

しかし、今まで俺はリオティオン世界に居たはずだ。昨日はカヤエに俺の世界の技術の話をしたんだ。

なぜ、俺がここにいるんだ?

まさか、帰って来れたのか?

これが夢だとするなら、あまりにもリアル過ぎると思える。

「ねぇ、大丈夫?時間無いんじゃないの?」

…とりあえず、仕事に向かおう。

「そうだった。じゃあ、行ってくる。わざわざありがとな」

「ううん。いいの、それくらい」

「そうだ、帰りに良いワッフルのお店知ってるから買ってくるよ」

「ほんと!?嬉しーい!んじゃ、楽しみに待ってるね」

俺は起こしに来てくれたお礼にと、帰りにワッフルを買う約束をする。


やがて、俺は製作所に到着。

「遊馬(あすま)さーん。遅いですよ。もう会議始まっちゃってますよ」

「本当か?ごめんごめん。寝坊しちゃって…」

「…じゃあ製作責任者の遊馬善治さんが来たので、リオティオンのバージョンアップについて、意見は?」

この会議の司会を務めているこいつは、田村。

皆から意見を集めようとしている。

俺の意見は、もちろん…

「尻尾もっているキャラクターを増やさない?」

に決まっている。

「だから、今回はストーリーについてですよ。僕は、もっと魔王を強くすべきです。魔王は弱過ぎじゃないですか?」

確かに魔王は弱過ぎると思う。

普通ならば魔王は強い。だが、魔王を倒すイベントが発生する頃には武器も強くなり、レベルも相当上がってる。

つまり、イベントが発生する頃には魔王など敵では無くなってるのだ。

「いっその事、500にしちゃえば?」

そこで俺の「魔王のレベルを500にしちゃえば」宣言。

その後に調子に乗って、常態異常に耐性を持たした。

「他にも、何か増やさない?」

と、色んな案が出たが、俺はもう尻尾以外興味ないので、後は寝て過ごした。






「起きてください」

俺は起こされる。

「あぁ…ごめんごめん。会議中に寝てしまった…」

どうせ怒られはしないさ。

俺はそう思いながら目を擦り、目を上げる。

「……なっ!」

「何を言ってるのですか?さ、もう朝食はできています。皆さんも貴方を待っていますよ?」

俺が居たのは、会議室ではなく、見慣れてしまったリオティオンの世界であった。

そして目の前に居るのがカヤエ。

「わ、わかった…今、行くよ…」

今のは夢、だったのか?

全く…嫌な夢だ。今は元の世界に戻れる方法なんて無いというのに。

俺はため息一つついて、リビングに向かう。

しかし、俺は階段でバランスを崩し、転倒する。

「い、イテテテ…」

また尻尾か。

フェルトザウルスの件から、尻尾のバランスには慣れたはずだが、

少し油断するとすぐ転んでしまう。

「……だいじょうぶ?」

アヤメが手を延ばしてくる。

「大丈夫だよ。ありがとな」

ありがたくその手に捕まる。

「あれー?レイちゃんってそんなキャラだったー?そんな男みたいな喋り方だったかな?」

ギクッ…!

背筋に冷たい何かが走ったのがわかる。

「そ、そうかな?変わってないと思うよ?あは、あははは…」

苦笑いして、その場を乗り切る。

カヤエの料理を食べ、腹が満腹感で浸されたところで、話を進める。

「今日の予定は……」

ピーンポーン。

俺が話そうとした時にインターホンが鳴る。

チッと舌打ちしてその鳴らした人物が出てくるであろう玄関を見つめる。

「出てくるねー」

アルが俺達の雰囲気を悟ったのか、自分から玄関へと向かい扉を開ける。

「ここにヨシハル殿は居るか?」

そんな声が聞こえる。だが、姿は見えない。

「んー、ヨシハル?そんな人知らないよー?」

「とぼけても無駄だ。ここにヨシハル殿が居るはずだ」

「わわっ!わかったから剣はしまって!……ヨウシちゃん、ヨシハルって人知ってるー?」

カヤエは俺の顔を見る。

俺はカヤエの顔を見る。

ダメだ。居ると言ってはダメだ。

本能がそう語っている。

今はレイなのだ、女なのだ。

カヤエは立ち上がり、玄関に向かう。

ついでに俺も一緒に玄関に向かう。

その声の持ち主は次第に俺の目に入っていく。

「…っ!お、おま…!」

慌てて手で口を塞ぐ。

こいつは…!



このゲームではキャラクター最強ランキングというランキングが一度ネット上で公開された。

これは製作者側ではなく、実際にその強さを体験したプレイヤーが集計した結果に基づいた。

第三位はクリスティーヌ・バッファロー

第二位がヨウシ・カヤエ

第一位がリリー・ジェファーソン

というのが上位三名。

あくまでこれは女性キャラクターにおけるもの。

今、カヤエを差し置いて第一位に君臨したリリー・ジェファーソンが目の前にいるのだ!!


「ヨシハル殿はいないのか?」

「いえ、残念ですが、長旅の途中でして、今はどこにいるかわかりません。それより、なぜヨシハルさんを?」

カヤエが上手く受け流して、俺も知りたいことを聞く。

なぜリリーがここに来たのか。

リリーは元々、騎士団の頂点に君臨していて、団長を務めていた。

しかし、だんだんと飽きて来て冒険者へと転職したのだ。

「巷で噂になってるのだ。ヨシハル殿がかなりの強者であると」

リリーは笑みを浮かべてそう説明した。

「成る程。それで戦いたいという訳ですか」

カヤエの言葉に、そうだ、と大きく頷く。

「たかが貴方くらいで、ヨシハルさんは倒せません。私に勝てたなら可能性はありますが」

軽く喧嘩口調でリリーに言い放つ。

リリーはその挑発に乗って来た。

「ふん。面白いじゃないか。なら最初に貴様を倒してやろう。

しかし、ここではやりずらい。表に出よう」

「望むところです」

二人は勝手に対決しようとして、たんたんと物事を進める。

「ちょ、ちょっと待った!」

俺が二人を止めようと声を掛けるが、

「レイさんには関係ありません。ヨシハルさん以外、この戦いを止める権利はありません」

と言い捨て、家を出た。

……ぐっ。

俺がヨシハルだ、と言えないから好き勝手しやがって。

だけど、内心俺はどっちが勝つか気になっている。

普通ならカヤエが負けるだろう。しかし、強化されたカヤエなら、勝てる可能性も高い。

「……いかないの?」

アヤメは後ろから小さく呟く。

「そうだ。こうしちゃあ居られない!止めないと。

アルは家に居てくれ!頼んだよ?」


あいさーという返事を聞くと、アヤメと一緒に表に出る。


ガキィィン!ガッ、ガガガガッ!


既に戦いの最中だった。目の前では物凄い剣の斬り合いが交差している。

お互い、ギリギリで攻撃を避け、装備を少しかすめる。

金属音が鳴り響く中、俺はふと気づいた。

これは…

「命懸けの決闘じゃないか!!」

普通、決闘をする時、ドーム状の薄い黄色の壁ができ、如何なる者の侵入を許さない。

このドーム状の中では、HP、つまり体力が1になれば、自動的に決闘は終了し、勝敗が決まる。

だが、命懸けの決闘ではドームは発生せず、単なる斬り合いとなり、どちらかが死なないと勝敗はつかない。

いま、二人は殺し合っているのだ。


ガキィィィッ!


目の前でリリーの剣が弾き飛ばされ、リリーは地面に倒れる。

「終わりです」

カヤエがリリーに向かって剣を振りかぶる。

ガキィィィィンッ!!

しかし、振りかぶられた剣は俺によって妨げられる。

「どいてください」

剣と剣がギリギリと接触しながら、カヤエは俺に向かって言ってくる。

「何も、ここまでする必要ないだろ!?」

「……」

カヤエは黙ってはいるが、剣に力が入っている。

「レイ殿…とか言ったかな?」

倒れているリリーの声が聞こえる。

「もういいんだ。私は負けたということだ。戦場では負けるということは死を意味する。私は死なないといけない」

「何言ってんだよ、リリー!ここは戦場でも何でもない!死ぬ必要なんてないんだよ!」

俺が叫び終わるとカヤエは剣から力を抜き、やがて腰に納刀する。

「今回は…無かったことにしましょう。次、戦う時は、いくら貴方とはいえ、まとめて相手します。それと、口調直した方がいいですよ、レイさん」

と言いながらスタスタと家に帰った。

俺は慌てて口を手で抑える。つい取り乱れてしまった。

「…くっ」

リリーは悔しそうな顔をしながら下を向く。

俺はリリーの剣を拾い、それをリリーの手に渡す。

「あんな事言ってるけど、本当はカヤエって良いやつなんだよ」

許してやって欲しいと、リリーに言った。

しかし、リリーは下を向いたまま、何も言わない。

「そうだ!なんなら、おれ……私達とパーティ組まない?」

人は多い方が良い。仲間は早めに多く集めていた方が後々楽になる。

「…パーティ、に?」

「うん、そうだよ。アヤメ、良いよな?」

アヤメは隙をみせずに、

「……うん。かんげい、する」

珍しく微笑みながらそう言った。

「…有難いが、私は今まで一人で冒険者をしてきた、今更…」

ぐぅぅぅ…

リリーのお腹が鳴った。

リリーは少し顔を赤らめてから言う。

「…あ、やはり…その、ご、ご飯をいただけないか…?」

チラチラと俺の様子を伺う。

「うん、いいよ。さ、私達の家に帰ろう」

俺は横になっているリリーの手を引っ張り、家に帰った。

リビングのテーブルには、一人前の料理が置いてあった。

「やはり来ましたか。リリーさんの動きには少し隙がありました。きっと空腹から来たのだと思います。

そしてレイさんなら、誘うのではないかと」

というわけで、俺達の考えや行動はカヤエにはお見通しだったみたいだ。

「あ、ありがとう…」

相当腹が減っていたのか、リリーはガツガツと食にありつく。

やがてリリーは箸を置く。

「美味しかった、ヨウシ殿」

「それはそれは。ありがとうございます」

カヤエは綺麗に食べ尽くされて何も残っていない皿を回収する。

「あ、あのだな。そのぅ…レイ殿。やはり、仲間に入っても良いか…?」

リリーがそう言った瞬間、カヤエのアンテナが一瞬だけピクッと動いた気がする…

「うん、何時でも歓迎するよ」

「じゃあ、宜しく」

これでリリーが仲間に加わった。

このメンバーでストーリーを進めれば、魔王討伐も夢じゃない。

今のメンバーは俺、カヤエ、アヤメ、アル、リリーとなっていて、多分この中で一番弱いのは俺だろう。

アルは何時も本気で戦おうとせず、本気になった時の強さは計り知れない。

アヤメも同様。

あの時、スライムがアヤメを襲いかかったとき、スライムは目の前で止まった。もしこれが、スライムが本能的にアヤメとのレベルの差に怖気付いたのだとしたら。

大変なレベルになる。

カヤエやリリーについては強さに説明する必要は何もない。

今からでも魔王を…

「レイさん、言いかけていた今日の予定を教えてください」

「あ、うん」

俺はゴホンと一息付ける。

「今日の予定は…何もない」

えっ、という声が聞こえたが、構わず続ける。

「今日は各自、好き勝手に行動してくれていい。装備を揃えるなり、道具を買うなりとね。

俺の名義ならなんでも買ってもいいよ?金ならいくらでもあるから。

それに、リリーが仲間に加わったばかりだから、仲間と仲良くならないとね、特にカヤエとか」

「言われなくともします」

「ならいいんだ。私は早速用事があるから。じゃっ!」

俺はスタスタと家を出る。

その後にどんな会話がされたなんてのは知らないが、俺は装備を揃えにいく

。

今の装備は

「太刀」スカスミエル

「装備」メイド服

とまぁシンプルである。メイド服が装備に入るのかは別として。

今、欲しいのは、この周辺の店で最強の防具が欲しい。

「いらっさいませーっ!」

陽気な店員をスルーして店の一番奥にある「ファントス一式」を手に取る。

「それを手に取るとは、流石、お目が高いです!…でも、それは男性用ですが?」

あ、ほんとだ。

俺は手に取ったそれを置き、隣りの女性用を手に取る。

店員が隣りに張り付いて、煽ってくる。

それを手に取ったまま、武器コーナーへと向かう。

俺はある木刀を取り出す。

「木刀ですか?剣道でも?」

店員がしつこいからその木刀で店員を叩く……と捕まっちゃうから我慢する。

「君にはわからないよ」

どうせ店員にわかるはずがない。

その後、冒険者の必需品、回復薬と給水薬を何十個を店員が渡して来たカゴに入れる。

たまには気が利くじゃないか。もう一個回復薬入れといてやろう。

そしてレジへ。

「ありがとうござっしたーっ!」

最後まで陽気な店員の声におくられ、店を後にする。

「あとは…」

俺は並んでいる店を見渡す。

「あっ…」

カヤエとリリーが防具専門店に入っている。

俺も本当は行きたいよ。防具専門店。

だけど、防具専門店に入れるのはレベル200を越す冒険者だけ。

俺もランクが無ければ入れただろうけど、ランクのせいでレベルは振り出しに戻っちゃってるし…

…でも、レベル200以上の冒険者って中々いないぞ?

そんなんで儲かってんのか?


俺はその店をスルーして、今度は武器専門店へ。

武器専門店はレベル150以上ではないと入れない。


……なんでアルとアヤメが?

いや、アルならわかるけど、アヤメってレベル150以上なんだ、な…

まさか…俺だけレベル二桁!?

俺はその店をスルーする。

その先にはレベル100以上でないと入れないアイテム専門店があるが、スルーする。

そして俺は気づいた。

「レベルって……残酷だな」

何故か、俺の心は一本の道を歩いただけでバキバキにされた。

俺は道路にポツンと置かれているベンチを見つけたので、座る。

俺は袋に包まれた木刀を出す。


「あっ!!」

俺は立ち上がる。

思い出したぞ!

「レベル調節スキル……」

レベル調節スキルは基本、魔王を倒した時に王の祝福で授かるスキル。

しかし、俺は武闘大会の日に確かめたから間違いない。

今の俺はゲームの時に使えたスキルを使えるんだ。だからムーメント・ムーブメントも使えた。

早速、役に立つな…

レベル調節スキルは、基本的に侍刀でしか使えない。

しかしこの木刀は…なんと、一部を除く、全てのスキルが使えるんだぜ!

だけどこの木刀は一回しか売っていないため、無くしたり盗られたり壊したりしたらもう終わりだ。

では、このスキルのどこが強いか?


それはその名前の通り、レベルを調節できる。

これは一回、不具合が生じたのを修正するために作られた。

魔王を倒した後は、まだまだイベントはあるのだが、

そのイベントの中にレベル200以下限定というイベントがあった。

しかもこのイベントは魔王討伐後にしかできない。

しかし、レベルは上げることは出来るが、下げることはできない。

唯一、ランクを手に入れれば下げることはできる。

しかし、簡単に手に入れれるランクは魔王を倒した時点で、既に手に入れてしまっている。

こんなことが起こって苦情が来たため、修正パッチを配布した。


で、このレベル調節スキルは、200を基準として調節される。

例えばレベルが250なら一匹魔物を倒すだけでレベルが1下がる。

200になった所で、もう下がらなくなる。

こんな時にネットである者が現れた。

それはそいつが魔王討伐後に実況プレイしている時に仲間に変態な事をしたため、流離いの変態がついた。

その時、レベルは振り出しに戻るのだが、彼は気付かず、レベル200以下のクエストを受けるため、レベル調節スキルを使い、魔物を次々と斬殺していた時、彼は気づいた。

「あれ?レベル120になってる」

彼はその時、レベル200になってもバグで下がり続けるのではないかと考え、レベルがマイナスになったらどうなるの?となった。

それから続けると、魔物を倒す度にレベルは上がっていく。

つまり、レベル調節スキルは、

レベル200以下ならレベルは上がり、

レベル200以上ならレベルは下がるのだ!!




と言うわけで、

今から魔物を斬殺してきます。

レベル150以下はヨシハルだけ。

ヨシハルのレベル快進撃が始まる!

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