第拾参話 過去 未来 そして現在。
空間停止スキルを使った後の俺の手際は最早職人レベルだった。
まずは停止したミクニを持ち上げてフィールドの外へ運ぶ。
ルールではフィールドの外へ出るというけとは試合放棄と見なされ負けとなるからだ。
そして、せっせと運び、せっせと元の位置につく。いや、正直楽しかった。ただ運ぶだけなのに。
そして空間停止スキルを解除すると…
「最終奥義!!エクストロアーム!!」
フィールドの外からそんな声が聞こえたと思えば、轟音が会場に広がり、
スカイツリーを横にした時の四つ分の広さもある会場の四分の一が吹き飛んだ。簡単に言えばスカイツリー一つ無くなった。
あんなのが今の俺に直撃したら、即ノックアウトだ。
その後はしばらく会場の空気が静まり返り、審判も何があったのかわからず、アナウンスからは何も聞こえなかった。
だから代わりに俺がアナウンスをしてやった。
「俺たちの勝ち!はい!終わり!」
手をパンパンと叩きながら気絶してるカヤエを持ち上げ、部屋に帰る。
俺がフィールドを降りてから、ようやく歓声とアナウンスが聞こえ、後ろからミクニが俺を呼び止めた。
「ヨシハル君!」
行き成り口調が変わり、俺の側に駆け寄る。そして耳元でカヤエが気絶していることを確認して…
「いやー。凄かった!実に素晴らしい!まさか君が空間停止スキルを使える何てねー?」
あ、ばれちゃった。流石はカヤエの父だわ。全てお見通しみたいだな。
そして直ぐに…
「…次に、空間停止スキルなんて卑怯なスキルを使ったら…容赦なく叩きのめすからな…!!」
ボソッと呟いたその言葉に俺はチビりそうになりながら、無視を貫き通して部屋に帰った。
…別に卑怯じゃないのに。
「あ!おかえりなさいです!」
ウラが威勢良く出迎えてくれた。
ウラの声を聞くのは何だか久しぶりな感じがする…
「ああ。それより、カヤエを頼む。」
俺がお姫様抱っこをしていたカヤエをソファーに置き、ウラに任せた。
「ぐへへへ…任せて下さいよ…」
恨みがましい声に聞こえたのは俺だけか…?その後に聞こえるか聞こえないか位の声で
「日頃の恨みを…」
と言っていた気が…。
まぁ当然ながら直ぐにカヤエは起きて、ウラが大変な目にあったのは言うまでもない。
「ありがとうございます。」
俺の前でアンテナを下に向けて頭を下げるカヤエ。
「…ん?何が?」
「私の作戦は上手くいかなかったものの、理解してくれたことです。」
…あれか。夫婦ゴッコか。
別にあれは良い。何か気分的に最高だったしな!…やべ、鼻血出そう。
「それと、ここまで私を運んでくれたことです。」
それは当然のことだ。誰でもそうしただろう。
「当たり前だろ?仲間なんだから。」
何故かその一言で静まり返る…
え?当然じゃないの?当たり前じゃないの?何か恥ずかしいじゃないか!
そしてカヤエが…
「…フッ。面白いですね、貴方は。」
いや、何が面白かったのかわからん。これが女心というやつか?さっぱりわからん。
するとカヤエの後ろから鋭く光る目が見えたと思うと
「隙ありです!」
急に後ろからウラがカヤエの隙をついて襲い出す。
「まだ、甘いです。」
こそばそうとしたウラの両手はカヤエにすんなり避けられ、そして反撃をくらい、ウラは沈黙する。
本当に平和なんだか、くだらないのか…
「まだまだ甘すぎです。」
俺も参加しようかな?と思ったが、俺がやったらただの変態だろうから止めた…
しかしウラが
「ヨシ…ひゃんも、協力してくたはいよ…」
最早言葉になっていない情けない声で俺に助けを求める。
するとカヤエが
「いくら貴方でも容赦はしませんよ。」
と、身構えしだす。
本当に…まったく…
「あ、そうだ。これ、返しとくわ。カヤエの愛刀。」
「ありがとうございます。」
カヤエは愛刀を腰に納刀する。
「そう言えばですが、貴方のその剣…」
カヤエが俺の背中に納刀されている剣に目線を送る。
「ああ。これな。ミクニから貰ったよ。使えないなら要らないってな。」
いや、俺はこうなる事はわかっていた。というか、ミクニのスペシャルイベントでないとセイクリッドソードは手に入らない。
運が良かった、というべきだろう。
「そうですか…」
アンテナが、げんなりと垂れ下がる…まさかコレは隙ありだな…
「くらえっ!」
俺の両手はカヤエの腰回りに手を回し、こそばす。
「ちょっ…不意打ちは…ひゃあ!」
ふっふっふ。やはりな。カヤエはアンテナに弱い。あれ?今の俺、変態?
「私も私も!」
ウラが此処ぞとばかりに仲間に加わる。するとカヤエは力を振り絞って俺の手を払い、ウラに反撃をした。
やっぱりウラだけは反撃されるんだな…
「…さっきは油断しましたが、次は本当に容赦しませんから。」
カヤエの鋭い目線と鋭くとがったアンテナが此方に向けられる。
「あ、いや。ちょっと加わってみたくなって。」
ついつい、やってしまうのは俺の治らない癖さ。
そしてアナウンスが流れ、死にかけていたウラが復活して
「あ!アナウンスですよ!」
ウラがアナウンスの音に気づいて知らせてくれた。
《…えっーと…ですね。準決勝なのですが。ヨシハルチームとザッカスチームの組み合わせだったのですが、ザッカスチームが棄権しましたので、ヨシハルチームの無条件勝利となり、
今回はタミヤチームとサカズキチームとなります。
そしてスリーバトルですので三人全員出場していただきます!
それでは両チームはフィールドにお集まりくださーい!》
あれ?アナウンスのキャラ、変わってね?
俺が皆に言うと、何が気に食わなかったのか、
…部屋にまた、沈黙が訪れた。
「何故、向こうチームは棄権したのでしょうか?」
そういや、カヤエは気絶していたので勝った方法を知らない。その前に俺たちは負けてしまったと思っていたのだろう。
「んー。そりゃあそうだわ。だって一瞬で勝っちゃったから。相手がビビるのも無理ない。」
カヤエはアンテナを左右に揺らしながら、疑いの目で俺を見る。
「貴方が…父を一瞬で?」
うわ、俺今すげぇ疑われてる…
お前の証拠は全て揃っている!吐けよ!みたいな感じ。
いや、わけわかんない。
「そうだけど?」
俺のその言葉でカヤエは、へたッと地面に崩れ落ちた。
ウラからは何やったんですか?みたいな目で見られたが、直ぐにカヤエが
「…はは。遂にやったんですね…」
急に変な事を言い出した。
…何だ?急にカヤエの雰囲気が変わった…アンテナは周りの髪の毛と同じ感じになっている。
「何があったんだ…?大丈夫か?」
俺は力が抜けて抜け殻の様になっているカヤエの肩を持ち、ソファーに座らせる。
「…ありがとうございます…」
「いや、良いんだけどさ。何があったの?」
正直、俺がゲームを作ったと言っても全てを担当したわけではない。
前にも言ったが、俺はアイテム担当。それ以外、今までの経験で培ったものしか知らない。
だから今、カヤエに何が起こったのかはわからない。
そしてカヤエはその重い口を開いた。
「私には夢があると言いましたが…実は二つありました…
一つは私の父、ミクニを倒す事です。ミクニを倒し、ひれ伏す姿を見る。ただそれだけです。
しかし、私はどうしても、それが出来なかった。
私にとって父は大きな壁だったのです。私がこれ程の剣技を持てたのは才能でも興味でもありません。
例えるならば英才教育です。」
ここから、カヤエは昔の事を、一つ一つ、ゆっくりと話していった…
そして数十分位か、それ位で話が終わった。
「そうか…そんな事がなぁ。」
「うううっ…ぐすっ…感動です…。でもヨシさんって最低ですね!」
簡潔に言えば俺が最低…って話でいいな。うん。
「いや、それはごめん。」
俺は両手を合わせて頭を下げる
「いいですよ。そんなこと。私は父を倒せただけで。充分です。…っと、アナウンスです。
《決着が、今つきました!!勝者はサカズキチーム!!
それでは決勝戦はサカズキチーム対ヨシハルチームだ!!両チームはフィールドにお集まりくださーい!!》
「さぁ!行くぞ!今回もスリーバトルだ!」
俺が気合いを入れた声でウラとカヤエに言う。二人も威勢良く返事をする。
「はい!全力で頑張ります!」
「…私も、貴方となら、相手が誰だろうが構いません!」
そして決勝戦、開始のベルが鳴った。
今日は私、ヨウシ・カヤエが作者の代わりに後がきを務めさせていただきます。
私の過去の話、ではございますが、
次の話、外伝にて書かせていただくとのことです。
それにしても、あの人の物知りぶりには驚愕ですね。
あの人の戦いを見習いたいのですが、私には不可能でしょう。
まぁいいです。
これからもよろしくお願いします。
それでは、私はこれにて。




