第62話 転写と転移のスクロール
ダンジョン都市オアナハニカでの作り置き準備を終え、アイリスたちは一息つく間もなく、商業ギルドへ向かった。今日は新刊の漫画と小説を卸す日だ。
「さて、今回の作品も楽しんでもらえるかしら」
アイリスは微笑みながら作品をギルドの棚に並べる。ガルドとリーナ、レオ、アリエルも傍で見守る。
訪れた冒険者や市民たちが次々と立ち寄り、新刊を手に取る。ページをめくり、色彩や文章に感嘆の声を漏らす者もいる。
「おお、この作者は新しい技法を使ってるな」
「文章も読みやすいし、ストーリーに引き込まれる」
リーナは微笑みながら、反応を観察する。アイリスの作品が人々に喜ばれるのを見て、胸の中に静かな満足感が広がった。
その時、棚の隅に置かれた巻物が目に入る。転写のスクロールと転移のスクロールだ。転写は物や情報をコピーする魔法の巻物、転移は空間を飛ばして移動できる魔法の巻物。
「これは……転写と転移のスクロール?」
アイリスは驚きと興奮が入り混じった声を漏らす。ガルドも興味深そうに覗き込む。
「転写なら、コピーを作ってマイマリツゥ街でも活用できるな」
「転移は……移動の手間を省くのに便利ね」
アリエルも頷き、レオは巻物を手に取り、使用感を確認する。
アイリスは転写スクロールを一つ購入すると、すぐにアイテムボックスに入れて数を増やした。出せば常に出来立て、コピーの精度も完璧だ。これで必要な数のスクロールを確保できる。
「これで、マイマリツゥ街に戻ったら孤児たちにスクロールを読み込ませられるわ」
ガルドが興奮気味に言葉を重ねる。
「つまり、子供たちが漫画や小説の作成を手伝えるようになるってことか」
「その通り。スクロールを読み込ませれば、手や思考の補助ができるの。物理的に筆やペンを使わなくても、作業が速くなる」
アイリスは計画を練りながら、棚のスクロールを整理する。転移スクロールも同様にアイテムボックスで数を増やし、必要な時にすぐ使えるように準備を整える。
冒険者たちはスクロールを見て驚き、興味を示す。
「これって、本当に便利そうだな」
「私も欲しいくらい」
アイリスは笑みを浮かべながら、購入者に説明する。
「転写スクロールは物や情報をコピーできるの。転移スクロールは空間移動が可能よ。ただし使用は慎重にね」
ギルドの店員も興味深そうに見守る。アイリスの作品とスクロールは、どちらも価値ある品として扱われていた。
商業ギルドでの用事を終え、アイリスたちはマイマリツゥ街に戻る準備を始める。転移スクロールを使えば距離を短縮できるが、今回は仲間全員で帰路を楽しむことにした。
「さて、スクロールを使えば孤児たちも作業を手伝える。これで屋台や小説、漫画の進行も早くなるわね」
リーナが笑顔で頷く。
「これなら、子供たちも楽しみながら作業できそうね」
ガルドも興奮気味に言葉を添える。
「数ヶ月分の作り置きもあるし、冒険と作業、どちらも支障なくこなせるな」
アイリスはアイテムボックスから転写スクロールを取り出し、孤児たちに読み込ませる方法を想像する。子供たちはスクロールの力で作業効率が上がり、漫画や小説の制作により集中できるだろう。
街に戻ると、孤児たちの笑顔が迎えてくれる。ルクとセリルも用意していた作業場で準備を整えている。アイリスは転写スクロールを読み込み、子供たちに手順を教える。
「スクロールを使うと、手やペンを動かさなくても作業できるの。これで皆も手伝えるわ」
孤児たちは目を輝かせ、操作を試してみる。ルクやセリルも魔法の補助を受けながら作業を開始する。
「わあ、簡単に作業が進む!」
「これなら私もお手伝いできる!」
アイリスは満足そうに頷き、仲間たちの作業を見守る。これで屋台の準備や漫画、小説制作の効率が格段に上がる。
夜、作業を終えた孤児たちは笑顔で休む。アイリスはアイテムボックスを確認し、材料やスクロールの数をチェックする。出せば常に出来立て、作業の効率はさらに上がる。
物語の幕はまだ下りない。宝石都市での探索と商業ギルドでの発見、そしてマイマリツゥ街での孤児たちの成長。転写スクロールと転移スクロールを手にしたアイリスたちは、冒険と創作の両立を新たな形で進めていくのだった。




