第55話 屋台と孤児たちの囲い込み
マイマリツゥの広場に、アイリスは簡易の屋台を設置した。肉ダンジョンで手に入れた肉と、街で仕入れた野菜や調味料を使って、モツ煮込みや揚げ物などを販売するためだ。香りを漂わせるため、鍋を火にかけ、油で唐揚げを揚げる。
ガルドとリーナは屋台の準備を手伝い、鍋や食材の管理を行う。リーナが揚げ物の油の温度を調整し、ガルドはモツ煮込みの味を確認する。
「油の温度、これで大丈夫かしら?」
「うん、揚げるタイミングも完璧だ」
アイリスは屋台の看板を掲げ、周囲の通行人に声をかける。
「モツ煮込みと唐揚げ、美味しく出来ました! どうぞ召し上がれ!」
最初は数人の通行人が立ち寄る程度だったが、香りが広がると徐々に人だかりができ始めた。そしてその中に、街の孤児たちが混じっていることに気づく。
小さな身体を寄せ合い、目を輝かせて屋台を覗き込む孤児たち。彼らは食べ物の匂いに惹かれて集まってきたのだ。
「……こ、こんなに子供が?」
アイリスは軽く驚きながらも、すぐに笑顔を浮かべる。
「仕方ないわね。せっかくだし、みんなで囲って食べさせてあげよう」
ガルドとリーナも頷き、孤児たちを屋台の周りに集める。小さな手に食器を持たせ、モツ煮込みや唐揚げを少しずつ分けていく。
「はい、みんな。熱いけど気をつけてね」
孤児たちは夢中で食べ始める。モツ煮込みの柔らかい肉と濃厚な味、唐揚げの香ばしい香りに、思わず笑顔を見せる子もいる。
「うまい……!」
「こんな美味しいの、初めて食べた!」
アイリスはその様子を見て心の中で微笑む。戦闘や冒険だけではなく、こうして人々の生活や幸せにも関わることができるのは、自分たちの力が確実に街に影響を与えている証拠だと感じた。
孤児たちの中には、屋台に慣れてきたのか、少しずつ料理を取り分けるのを手伝い始める子もいる。小さな手で皿を持ち、隣の子に分け与える姿を見て、アイリスは改めて仲間たちの大切さを思い出す。
「こうやって皆で助け合える場所を作れるなんて……」
リーナが小さく呟き、ガルドも頷く。
「食べ物だけじゃない。士気や信頼、絆も育てられるな」
アイリスはアイテムボックスからさらに唐揚げを取り出し、孤児たちに振る舞う。すぐに空になった皿は、笑顔で返される。街の人々もその光景を温かく見守り、屋台には自然と列ができる。
「美味しい! もっとちょうだい!」
子供たちの声が街中に響き、パーティの活気もさらに上がる。アイリスは台所の前で鍋をかき混ぜ、次の料理の準備を進める。
「これなら、毎日少しずつでも皆に食べさせられるわね」
ガルドは孤児たちの様子を見ながら、手伝いの指示を出す。
「皿を持つ子はここで待機、分けるのは順番だ。焦らずに行こう」
リーナは小さな子供に食べやすく分け、笑顔で見守る。
「みんな、無理しなくていいのよ。ゆっくり食べてね」
孤児たちは笑顔で頷き、安心して食事を楽しむ。屋台はただの食事の提供場ではなく、孤児たちにとって安全で温かな場所となった。
夜になり、屋台は片付けが終わると静かになるが、孤児たちの笑顔はパーティの心に残った。アイリスは窓から夜空を見上げ、思う。肉ダンジョンで得た肉が、街の人々や子供たちの笑顔に変わる瞬間が、何よりも自分たちの力を実感できる時なのだと。
アイリスは心の中で誓う。次の冒険でも、仲間と共に力を尽くし、迷宮での戦いだけでなく、街や人々の生活にも貢献していくと。
屋台を囲んで食事をする孤児たちの笑顔が、次の挑戦への活力となり、物語の幕はまだ下りない。




