プロローグ
何処か見覚えのある部屋で俺は立っていた。
「ねぇ見て!!、──の子供だよ!!」
可愛いらしい黒髪の少女が笑う。
その小さな腕に抱かれている小さな命を必死にこちらに見せようとしている姿は凄く愛らしく感じてしまう。
「──!私──の事大好きだよ!──」
花が咲くような笑顔とはこの事だろう、非常に愛らしく笑う少女。
その少女に対して俺はこの子を絶対に『守らなきゃいけない』と思った───
その運命が来ないことを知らなくても
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真っ暗な牢獄の廊下をコツッコツッと歩く。
大きな黒い布を羽織り、白い髪と顔を隠し、ポケットには短刀を忍ばせた見た目10~11歳ほどの子供──僕は歩いていた。
ただ目的地にたどり着く為に。
ほとんどの牢屋の中には誰も居らず、けれどたまに聞こえてくる物音を不気味に感じながら。
目的地へ歩く。
そして数分がたった頃、目的地の前にたどり着く。
一つの牢屋、中には黒髪で幼い顔立ちをした12歳くらいの子供が一人だけいた。
中の子供はこちらに気付いたようで不思議そうにしている。
相手がどう感じていても構わない。
先程盗んだ牢屋の鍵を扉に差し、鍵をあける。
そしてゆっくりと子供に近付く、ゆっくりとゆっくりと、まるで肉食動物が小動物を狩るように。
短刀を取り出して、その少年に向ける。
タイミングを見計らい短刀を振りかざす……がそれは少年にいとも簡単に防がれてしまった……
……テーブルナイフで……
…………
……
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牢獄の外に出ると錆びれた鉄臭い匂いは消え、たくさんの星々が満月の光が美しく照らしていて、もはや素晴らしい以外の言葉が見つからない光景だ。
いつもなら、気分良く夜を過ごせた僕でも今回に限っては気分は晴れない。
「これが空か!!!初めて見た!!!」
いつの間にか後ろを追って来ていた少年、自分が殺し損ねた少年にため息が出る。
さっきまでの大人しさはどこへやら、すっかり興奮仕切った表情で周りを見渡し何かを探し回っている。
さっきから何回も殺そうとしているのだが、結局はすべてテーブルナイフで防がれてしまって何も出来なかった為に諦めて出直そうと牢屋を出ると勝手について来てしまったようだ。
「なぁなぁ!恩人さん!あれってなんだ!?」
そしてこの少年は自分の事を変な監獄から助けてくれたヒーローだと思っているらしい。
なんともまぁお花畑だ。
少年の言うあれ、とは木の実の事だった種類は知っているし、食べたら美味しい木の実だと知っているが、その子供には何も言わない。
言う義理も、声帯もないのだから。




