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第七十九話~魔族領・迷宮編~

???「毒武器あるよ~?」


「それでは~お待ちかねの報酬のお時間で~す。皆さん拍手~」

「わー!」

 

 ロゼさんの言葉に、ルナは無邪気に拍手を返す。そんなルナを見ながらほほえましそうな顔をしてマオさんも小さく拍手をしている。いや、よく見るとモフさんも拍手をしてるな。甲冑だから拍手の音が金属音だけども。

 この三人はダンジョンから抜け出した後、ロゼさんの所有する農園までついてきていた。死霊系しか出てこないあのダンジョンを狩場にしていたルナは兎も角、マオさんとモフさんは特にこれといってやることがないからついてきたのだ。

 ロゼさんに視線を戻すとニッコリと笑って俺を見ている。え? これは俺も拍手しなければいけない流れか? わ、わー……


「はい。皆さん拍手ありがとうございますね~。では~早速渡したいところなのですが~……少々お時間を頂いても良いでしょうか~? せっかくレベルが上がったので、もう少し品質の良い物を渡せると思うので~」

「そういうことでしたら大丈夫ですよ。別に急いでやらないといけないこともないので」

「助かります~。それでは、少々お待ちくださいね~」


 そう言い残すとロゼさんはマイハウスから出て毒草を栽培しているエリアへと歩いて行った。ロゼさんを待っている間何をして待っていようかと考えながら手にするティーカップを口に運ぶ。

 これはロゼさんが栽培してい植物の内ハーブ系の植物を使って作ったものらしい。これまでは試してなかったから気付かなかったけど、本当のVRになってからは味覚までも再現されているらしい。

 暖かな温度や口に広がる爽やかなハーブの味を楽しむ。俺はハーブティーなんておしゃれなものは現実の方ではそんなに飲んだことはないからよく分からないけど、同じくハーブティーを口にしているマオさん曰く現実の味と遜色ないらしい。

 ちなみにルナとモフさんはハーブティーは飲んでいない。リビングアーマーであるモフさんは飲む口自体が無いという種族的な理由らしいが、ルナの場合純粋にハーブティーが口に合わないかららしい。そんなルナをロゼさんは子供の口ににも合うようにジュースになる作物を育てておくとやる気に満ちていた。

 ハーブティーを飲めないルナは椅子に座ってソワソワしている。どうかしたのだろうか。


「メイにーちゃん。ちょっと探検してくるです!」 

「探検? あぁそうか。ルナは農園は始めてみるのかな? えっと、ロゼさんが行ったところは危ないらしいから、そこ以外ならいいと思うぞ?」

「がってんしょーちです! 行ってきます!」

「そういう事なら僕が同行しよう。この広い農園で迷子になってもいけないからねぇ」

「あぁ、すいません。それならよろしくお願いします」

「いってらっしゃーい」


 マオさんが同行するらしいので安心して送り出す。同行者は一人でも問題ないと判断したのか、モフさんはルナ達に同行せずにステータス画面をチェックしている。俺もそれに倣うかな。


 ステータス画面を開きレベルを確認する。今回のダンジョン攻略で得られたステータスポイントはレベル216から351で合計586ポイント。何回見ても異常な数字だ。


 本来であればこれだけポイントがあったら好きなように割り振るのだろうが、俺の場合はそうもいかない。どうせどれだけDEX以外に割り振っても、ジョブ補正で全て半減以下に減ってしまう。それならば、むしろDEXにつぎ込んでしまったほうがポイントの無駄をつくらずに済むだろう。たぶん、一番もったいなくないポイントの使い方がこれだ。

 だけどAGIにも割り振って快適な移動というのも魅力的だし、これだけポイントがあるのだから他のステータスに割り振りたくなる衝動にも駆られるけど……ええいままよ! 


【メイ】 Lv.351


HP 21/21

MP 11/11

STR 5

DEF 5

INT 5

AGI 20

DEX 1136



 い、勢いに任せて全部DEXに割り振ってしまった……。割り振った値はこれで、ここにジョブ補正や装備・スキル補正を加えていく。


まず、ジョブ補正でDEXの値に3倍の補正。

一流芸人のスキル補正の2割補正

レプラが作ってくれた装備の効果で1割補正。

これで乗算の値は×3.96

次に、種族補正でDEXにプラス1

装備の補正でDEXプラスが1,12,15,20.

最後にドラゴンスレイヤーのスキル補正でプラス10

これで加算値は69


 今更な話だが、計算式はステータス値は乗算→加算らしいので、1136×3.96+69。

つまり俺の補正込みのDEX値は端数切捨てで4567となるわけだ。


 純粋にこれまでの倍近く。まっとうなプレイをしている他のプレイヤー達と比べるとこの数字は頭のおかしい数字だろう。戦闘面ではそこまで劇的に変わるという訳でもないだろうけどな。


 例えばこれだけの数字がSTRやINTといった攻撃に関するステータスであればほどんどのモンスターでも一撃で倒すことが出来るだろう。所謂モルガーナやサオリのタイプだな。

 ルナの様に防御に関わるDEFステータスであれば、多くのモンスターの攻撃を大きく抑え、0ダメージに抑えることが出来るだろうし、AGIであれば早く動ければそれだけ回避も攻撃にも移りやすい。そういった事がDEXは薄いもんな。

 まぁ会得経験値量が上がってくれるのはどれだけ増やしても過剰分となって消えることがないのは救いだな。


 続いてスキルの方はっと……おや? 見覚えのないスキルが増えてるな。いったいなんだ?


【愚行権】

 スキル【愚者の道】の上位スキル。元々あった他のジョブに転職できなくなる効果は消失した。自身を対象としたデバフ・デメリット・ペナルティ効果を無効化できなくなる。現在のジョブ系統以外の系統のジョブに転職したとき、このスキルは消失する。


【愚の骨頂】

 スキル【愚者の道】の派生スキル。デメリット・ペナルティ効果が増加する。【愚行権】スキルが消失するか条件を満たすまでこのスキルの効果は消える事はない。


 うわ。なんだこれ? 完全にマイナススキルじゃないか。二つ目の方はデメリット効果を増加させる効果ってことは、道化師ジョブのDEX以外のステータスを下げる効果も増加してるのか? という事は、さっき誘惑に負けてステータスポイントをDEX以外に割り振っていたら殆ど無駄に消えていた……? あっぶな! 背中に冷や汗が流れたわ!


 一応、転職すればスキルは二つとも消失してくれるらしいけど、なんかこれ罠の匂いがするんだよな。

 わざわざ転職できるように戻して、そのうえで転職したらデメリットスキルが消失するだなんて分かりやすい事を書いているし。【愚の骨頂】の方なんて特定条件を満たせば~なんてあからさまなことまで書いている。これは転職するよりも条件を探したほうが得策かもな。

 第一、DEX特化だなんて他のジョブに転職してもまともに戦えるとも思えないしな。

 

 

 そうしてスキルやステータスを眺めていると籠一杯に毒々しい色をした植物を詰め込んでロゼさんが戻ってきた。


「お待たせしました~。思いのほかこれまでよりも高品質で収穫出来ましたので、期待していてくださいね~。では、次はこれを毒薬にしてしまいましょう~」

「毒薬ってそこまでできるんですか?」

「もちろんですよ~。調薬アイテムもちゃんと持っていますよ~」


 そう言って、すり鉢やすり棒を取り出すとロゼさんは毒草をすりつぶし始める。だいぶ前にレプラが生産はオートで作成するよりもマニュアルで作ったほうがボーナスがかかり品質が良くなると言っていたからな。装備だけじゃなく消費アイテムも同じくその仕様があるのだろう。

 

 ゴリゴリと毒草を潰し、ビーカーへと搾った汁を集めていく。更にそこから煮詰めてつつかき混ぜていく。一見地味に見えるがマニュアル作成であればこの動作一つ一つに品質を決める為の判定が入っているのだろう。楽し気に毒薬をつくっているロゼさんの手は非常に丁寧だ。

 最後にビーカーの内容物を空の瓶に移し入れると、ロゼさんは満足げに頷いた。



「完成しました~。品質はA+! しかも上級! 自己新記録です~!」

「上級のですか!? それはすごいですね」


 MPポーションをよくがぶ飲みしていたモルガーナが言うには、上級以上のポーションを作る難易度自体も難しいことながら、位の高いポーションで高い品質を出すのは非常に難しいとのことだった。

 上級ポーションでなおかつA+の品質を出せるなんて、ロゼの腕や使った素材の品質がそれだけ高かったんだろう。

 続けて更に別の毒草を使って他の毒ポーションを作成していき合計三種類の毒ポーションがテーブルに載った。それぞれ体に悪そうな紫色、黄色、青色をしていて如何にも「これは毒です」といった色だ。

 瓶に入ったそのポーションを自分でも手にとり確認する。



【上級毒ポーション「痛」】(品質:A+)

作成者:ロゼ

 一定時間ダメージを与え続ける、紫色の毒のポーション。ダメージ・効果時間・蓄積値全てが非常に高性能。


【上級毒ポーション「痺」】(品質:A+)

作成者:ロゼ

 一定時間スタン状態にする、黄色い痺れ毒のポーション。スタン時間・蓄積値共に非常に高性能。


【上級毒ポーション「眠」】(品質:A+)

作成者:ロゼ

 一定時間眠り状態にする、青色の睡眠毒のポーション。効果時間・蓄積値共に非常に高性能。


 具体的な効果時間やダメージまではは実際に使ってみないと分からないけど、これで戦略ほ幅が大きく広がるはずだ。

 


「今のは試供品という事で~実際に試してみてくださいね~。この性能に満足していただけたら、数を増やしますので~」

「良いんですか? ありがとうございます。では失礼して……」


 試しに短剣を取り出して紫色の毒ポーションに漬け込んでみる。数秒ほど時間をおいてから取り出すと短剣は紫色に染まっていた。慌ててステータスを確認する。

【毒の短剣「傷」】

強化元:鉄製の短剣

・武器補正

攻撃時、STRの値+5

常時、DEXの値+1

効果付与

攻撃時に毒を蓄積させる。残り20回



 思った通り、短剣に毒を付与することが出来た。流石に補正効果までは増えなかったけど、俺でも瓶につけるだけで済むのは簡単でいい。

 残り20回は……多分毒効果の使える回数だろう。何せ、毒の瓶につけただけだからな。回数制限があるのは妥当だ。


 使った瓶の方を確認すると(9/10)という表記が追加されていることから、瓶1つで10回は使える。つまり瓶1つにつき200回の毒攻撃を行えるのか。

 毒の効果はロゼさんの作った上級ポーションなわけだし、コストパフォーマンスは良好といえる。


「最高ですよ! ぜひこの毒ポーションを分けてほしいです。」

「それを聞いてホッとしました~。なにせこれだけレベリングに付き合ってもらったのにで、報酬が不釣り合いだったらと少し不安だったのですよ~。ポーションの本数は奮発させてもらいますね~」

「全然不釣り合いじゃないですよ。それに、俺がやった事といえばただパーティを組んで一緒にダンジョンに潜っただけ。実質タダでポーションを貰ってしまうんだから俺のほうが……」

「途中で止めないとー、その謙遜ずっと続くよー」


 途中でモフさんがツッコみを入れてくれたところで謙遜の仕合いは終了した。ダンジョンで出会った時の第一印象ではマオさんの方が切れ者なのだと思っていたけど、こうやって話をしてみるとモフさんの方が頭脳役担当だったのがよくわかる。

 相変わらず話し方はすこぶるゆっくりだけど、要所要所で的確な意見を出してくれるしな。確信はないけど多分俺の戦い方を一番よく観察していたのはモフさんだったと思うし。

 謙遜の仕合いが面白かったのか、ゴリゴリと毒草をすりつぶす作業を続けているロゼさんがクスクスと笑う。


「フフフ。それもそうですね~。では~これは正当で公平な取引だったという事で~」

「そうですね。それが一番いい落としどころですね。それじゃ、残りのポーションもよろしくお願いします」

「任せてくださいね~」

「ただいまです!」


 ルナ達が帰ってきたようで元気な声が聞こえてくる。毒草を弄ってるところだけど大丈夫か? いやまぁ、マオさんやモフさんも見てくれているし大丈夫だろう。

 ともかく、これで取引は無事に済みそうだしダンジョン攻略も済んだし一件落着かな。まぁ次にやることを考えないといけないんだけど……何故だろう。何か忘れている気がする。

 思い出せずに何だったかと考えている所にルナが不思議そうな顔で尋ねてきた。


「ところでメイにーちゃん。ミツバねーちゃんはあそこに置いてきて大丈夫ですか?」

「「「あ!」」」


 そうだ! そういえば途中でログアウトしたミツバの事すっかり忘れてた!!

 明日は練習試合って言ってたしログインできないんじゃないか? 置いてけぼりにしてしまった事が分かったらあのバトルジャンキーが何を言い出すか分かったものじゃないぞ。


 ……………どうしよう

 

書いてて迷走を感じた。

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