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街の外れまで見送りに来た老デュラハンは、ユリの小さな手のひらに、ピンクのウィプスをのせた。
「鬼火というのは、実に大人しい魔物でな。怒らせでもしない限りは、炎も熱も出さん。ただ光りながら漂うだけの、かわいい生き物じゃよ。」
「旅、エサ、大変。」
「大丈夫じゃ。ほんの少し魔力を食らわせてやれば、飢えることも無い。実に飼いやすい魔物じゃて。」
スライムが覗き込み、手のひらよりもさらに小さな魔物がぷるりと伸びをするさまに、笑顔を模った。
「もらっておけよ。ジジイはウィプスに関しちゃあ、有名繁殖家だぜ。おまけに、ピンクのウィプスなんて、俺ですら初めて見たよ。」
「……感謝。」
ちょいちょいと指先で魔物を弄ぶ少女に寄り添う男は、この上なく柔らかな生き物のように見えた。その耳元でクアネがささやく。
「育てようによっちゃあな、ムーディーでエロエロな雰囲気の演出灯にもなるぞ。」
「う? あ? いや、俺はロリコンじゃねぇぞ! ソウイウコトは……」
「何を言っておる。中身はちゃんとオトナじゃろ。」
「別に! ソレが目的であいつの寝台になったわけじゃねぇよっ!」
「じゃあ、何が目的なんじゃ。」
「ジジイにゃ教えてやんねぇ。」
魔物と戯れる純真な姿を見守る眼球液はあくまでも優しく、その身を溶かすほどにあまやかなものであることを、老人だけは見抜いていた。
「まあ、お前がそれで良いなら?」
「いいんだよ。それに、あいつの理想はイケメン値3000だぜ。俺じゃぁ、無理だろ。」
「イケメ……?」
「いい男ってことだよ。」
「ほう?」
クアネは首をぐいっとユリの前に差し出す。
「嬢ちゃん、わしはいい男か?」
ウィプスから離れた銀の視線が、ナイスミドルな首をじっと見つめた。次いで、首のない体を、じっと見上げる。
「3200イケメン。」
「はああああ? 3000越ええええ?」
微かな恥じらいを見せるユリと、勝ち誇ったようにニコニコと笑う好々爺を交互に見たスライムは、がっくりとうなだれた。
「さすがに、首と胴体が離れるのは……無理だ!」
首をぐいっと小さな耳に近寄せて、クアネはこそっと聞く。
「あの小童は?」
ユリは自分の表情を隠すように、ぷいと横向いた。
「内緒。」
こうして、スライムの旅はまだ続く。
次章製作中です。一週間程度で書きあがるかと……
しばしお待ちを。
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