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君と僕が統べる夜  作者: 愛猫


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7/7

第7巻・最終巻「最後の夜」

プロローグ ――最初の夜

第1話 「七つ目の扉」

第2話 「最初のヨル」

第3話 「月姫との約束」

第4話 「五人目の記憶」

第5話 「夜の孤独」

第6話 「四人の選択」

第7話 「君が生まれた日」

第8話 「アリスが選んだ未来」

第9話 「最後の敵」

第10話 「夜明けのない世界」

第11話 「最後の夜」

第12話 「君と僕が統べる夜」

エピローグ ――君と僕の世界

プロローグ ――最初の夜


世界が生まれるより前。


そこには、何もなかった。


光も。


時間も。


生命も。


ただ――


《夜》だけがあった。


夜には、意思がなかった。


名前もなかった。


ただ、すべてを包んでいた。


やがて。


その夜の中に、小さな光が生まれた。


それが――世界だった。


世界は成長した。


月が生まれ。


生命が生まれ。


朝が生まれた。


そして。


世界を守るために、四人の王が生まれた。


だが――


最初の夜は消えなかった。


世界の外側で、ずっと見ていた。


そして思った。


『世界は、いつか僕を忘れる』


その寂しさが――


最初の夜を《敵》へと変えた。



第1話 「七つ目の扉」


扉の向こう。


そこには、夜しかなかった。


ヨルは一歩踏み出す。


「……ここが」


アリスが頷く。


「《最初の夜》がいる場所」


ミナとレイ。


そしてオルビスも続く。


クロノスだけが、扉の前に立っていた。


「クロノス?」


ヨルが振り返る。


「俺はここまでだ」


「……どうして?」


「この先は、お前自身の物語だからだ」


クロノスは笑う。


「最後くらい、自分の足で歩け」


ヨルはしばらく黙っていた。


そして。


「……ありがとう」


クロノスは目を細める。


「礼を言うのはまだ早い」


扉が閉じる。


ヨルたちは――


最初の夜へ進んだ。



第2話 「最初のヨル」


暗闇の中。


一人の少年が立っていた。


黒い髪。


黒い瞳。


ヨルと同じ顔。


「また会ったね」


少年が笑う。


「……お前は誰だ」


「僕は、最初の君」


ヨルの胸が痛む。


「俺の……最初?」


「そう」


少年は手を伸ばす。


「世界が生まれたとき、最初に人間になった夜」


ヨルは息を呑む。


少年は王冠を持っていなかった。


剣も持っていない。


ただの人間だった。


「僕は世界を見た」


「そして思ったんだ」


『この世界には、夜が必要だ』


だから少年は、自分自身を夜にした。


その結果――


《夜王》という存在が生まれた。


ヨルは呟く。


「じゃあ……クロノスは」


「僕が作った」



第3話 「月姫との約束」


アリスの前にも、一人の少女が現れた。


銀色の髪。


赤い瞳。


アリスと同じ顔。


「……私?」


少女は笑った。


「そう」


それは最初の《月姫》だった。


少女はヨルを見る。


「あなたが夜を選んだとき」


そしてアリスを見る。


「私は月を選んだ」


二人は最初から――


出会う運命だった。


「私たちは何度も生まれ変わった」


アリスが問う。


「どうして?」


月姫は答えた。


「約束したから」


「どんな?」


少女はヨルを見る。


「夜が終わるまで――」


そして。


「あなたの隣にいるって」


アリスの目から涙が落ちた。



第4話 「五人目の記憶」


ミナとレイ。


そしてオルビスにも記憶が戻る。


かつて。


五人は友達だった。


夜。


月。


生命。


朝。


世界。


五つの力。


しかし。


その中で一人だけ――


王にならなかった。


それが最初のヨルだった。


「僕は、王になることを拒んだ」


記憶の中のヨルが言う。


「世界を誰か一人が支配する必要なんてない」


その言葉が、すべての始まりだった。


だから。


世界は彼を王にした。


皮肉にも――


《王にならない王》として。



第5話 「夜の孤独」


最初の夜が現れる。


巨大な黒い影。


その姿には、顔がない。


『どうして僕を忘れた』


ヨルは答える。


「忘れてない」


『嘘だ』


世界が震える。


『人間は朝を求めた』


『月を求めた』


『生命を求めた』


『未来を求めた』


『誰も夜を求めなかった』


ヨルは黙る。


最初の夜は続ける。


『だから僕は――』


黒い影が膨れ上がる。


『世界を、最初に戻す』


ヨルは剣を抜いた。


「それは違う」


『何が違う?』


「夜は、終わりじゃない」


ヨルは前へ進む。


「朝を待つためにあるんだ」



第6話 「四人の選択」


最初の夜が四人を攻撃する。


しかし。


王冠はもうない。


力もない。


それでも。


アリスはヨルの隣に立つ。


「一人で戦うつもり?」


「……いや」


ミナが笑う。


「最初から五人でしょ」


レイも頷く。


「僕たちはもう王じゃない」


オルビスが言う。


「だからこそ――」


五人は手を重ねる。


「同じ人間として戦える」


その瞬間。


失われた王冠が一瞬だけ輝いた。


黒。


銀。


白。


青。


世界色。


そして――


王冠は消える。


代わりに。


五人の手に小さな光が宿った。



第7話 「君が生まれた日」


ヨルは過去を見る。


世界が生まれた日。


最初の夜の中で。


一人の少年が目を覚ました。


それがヨルだった。


誰かに命令されたわけでもない。


誰かに作られたわけでもない。


少年は自分で歩いた。


そして。


初めて世界を見た。


「……綺麗だ」


それが、ヨルの最初の言葉だった。


世界は完璧ではなかった。


悲しみもあった。


争いもあった。


それでも。


少年は世界を好きになった。


そして決めた。


『この世界を、夜で包もう』


『でも――』


少年は笑った。


『朝も、ちゃんと残そう』


ヨルは涙を流す。


「……これが」


「俺の始まり」



第8話 「アリスが選んだ未来」


アリスも自分の始まりを見る。


最初の月姫。


彼女は夜の少年に言った。


『いつか、あなたは自分を嫌いになるかもしれない』


『そのときは――』


月姫は手を差し出す。


『私があなたを思い出させる』


今まで何度も。


ヨルとアリスは出会ってきた。


時代が変わっても。


名前が変わっても。


世界が変わっても。


二人は必ず出会った。


アリスは涙を拭う。


「だからだったんだ」


ヨルを見る。


「初めて会ったときから――」


「ずっと知ってた気がした」


ヨルは笑う。


「俺も」


アリスは手を伸ばす。


ヨルも手を重ねる。


「今度は、過去じゃない」


「……ああ」


「未来で会おう」



第9話 「最後の敵」


最初の夜が世界を飲み込む。


空が消える。


大地が消える。


時間さえ止まる。


『世界は終わる』


ヨルは立っている。


「終わらせない」


『お前一人に何ができる』


「一人じゃない」


アリス。


ミナ。


レイ。


オルビス。


五人が並ぶ。


『王の力はない』


ヨルは笑う。


「いらない」


『ならば何で戦う?』


ヨルは答える。


「自分で選んだからだ」


その瞬間。


五人の光が一つになる。



第10話 「夜明けのない世界」


最初の夜は最後の幻を見せる。


そこには――


誰も傷つかない世界があった。


戦争もない。


悲しみもない。


別れもない。


永遠に穏やかな世界。


アリスが呟く。


「……綺麗」


ミナも見つめる。


「でも」


レイが首を振る。


「朝もない」


オルビスが気づく。


「未来もない」


ヨルは静かに言う。


「そして――」


仲間を見る。


「俺たちも、いない」


最初の夜が問う。


『それでも世界を選ぶのか?』


ヨルは迷わない。


「選ぶ」


「間違えるかもしれない」


「傷つくかもしれない」


「失うかもしれない」


それでも。


「生きたい」


五人の光が、夜を照らす。



第11話 「最後の夜」


最初の夜が崩れていく。


『なぜ……』


ヨルは近づく。


「お前も、一緒に来ればいい」


『……僕が?』


「ああ」


『僕は夜だ』


「俺もだ」


『僕は、世界の始まりだ』


「俺たちは世界の途中だ」


ヨルは手を伸ばす。


「だから――」


「一緒に終わって、一緒に始めよう」


最初の夜は沈黙する。


そして。


初めて。


笑った。


『……それも、悪くない』


黒い影が光へ変わる。


世界を覆っていた闇が――


静かにほどけていく。



第12話 「君と僕が統べる夜」


世界に朝が来る。


太陽が昇る。


月が沈む。


しかし。


夜は消えなかった。


夜は残った。


月も。


生命も。


朝も。


世界も。


すべてが共存している。


ヨルは空を見上げる。


「……終わったな」


アリスが笑う。


「うん」


ミナが叫ぶ。


「朝だー!」


レイも笑う。


オルビスは初めて見る朝に、目を細める。


そして。


ヨルの影を見る。


そこにはもう――


王冠はなかった。


ただ一人の少年の影だけがあった。


クロノスの声が聞こえる。


『――王冠を捨てたか』


ヨルは笑う。


「もう王じゃないからな」


『それでいい』


「クロノス」


『何だ?』


「また会えるか?」


少しの沈黙。


『夜は、いつでもそこにある』


ヨルは笑った。


そして。


アリスの隣に立つ。


「じゃあ――」


アリスが空を見る。


「これからは?」


ヨルは答える。


「普通に生きよう」


アリスは笑う。


「それ、難しそう」


「なんでだよ」


「だってあなた、普通じゃないもの」


「お前もだろ」


二人は笑う。


朝の光が二人を照らす。


百年間、存在しなかった本当の朝。


そして。


その夜。


月が昇る。


ヨルは夜空を見る。


アリスも隣にいる。


夜は終わらない。


朝も終わらない。


世界はこれからも続いていく。


――王が統べる世界ではなく。


――神が決める世界でもなく。


誰か一人が選ぶ世界でもない。


みんなが、自分の意思で未来を選ぶ世界。


それが――


ヨルたちが選んだ世界だった。


「アリス」


「何?」


「これからも――」


ヨルは夜空を見る。


「一緒に夜を見よう」


アリスは笑った。


「うん」


そして二人は歩き出す。


夜と月。


生命と朝。


そして――


そのすべてを選んだ人間たち。


物語は終わる。


けれど。


世界は終わらない。


なぜなら。


夜の先には、必ず――


朝が来るから。



エピローグ ――君と僕の世界


数年後。


ノクティス。


かつて夜狩士のための学院だった場所は、今では普通の学校になっていた。


ヨルは窓際の席で眠っている。


「ヨル!」


アリスの声。


「起きなさい!」


「……あと五分」


「また寝る!」


教室に笑い声が響く。


ミナは外で夜獣たちと遊び。


レイは朝の光を研究している。


オルビスは世界の仕組みを学んでいる。


クロノスは――


誰もいない夜空から、時々彼らを見ている。


もう王はいない。


もう世界を支配する存在もいない。


それでも。


夜は存在する。


月も。


朝も。


生命も。


そして。


人間も。


放課後。


ヨルは屋上へ向かった。


空には月が浮かんでいる。


「……綺麗だな」


アリスが隣に立つ。


「そうね」


二人はしばらく黙って空を見る。


そして。


ヨルが笑う。


「なあ、アリス」


「何?」


「この世界ってさ」


「うん」


「結構、悪くないな」


アリスも笑う。


「私もそう思う」


月明かりが二人を照らす。


その影が、静かに伸びていく。


もう王冠はない。


そこにあるのは――


二人の影だけ。


そして。


夜空の向こうから、ほんの少しだけ朝の光が差し込んだ。


夜と朝が重なる。


二人はその景色を見つめる。


――これが、彼らの世界。


――これが、彼らが選んだ未来。


『君と僕が統べる夜』


その物語は、ここで終わる。


けれど。


最後の一行だけは――


誰にも決められない。


それは。


これからこの世界を生きる者たちが、自分自身で書いていくものだから。


――夜の先に、本当の朝を。


『君と僕が統べる夜』を最後まで読んでいただき、本当にありがとうございます!!


まさかここまで長い物語を書き切ることができるなんて、最初は思ってもいませんでした笑


ヨルたちの物語をここまで続けてこられたのも、少しでも「面白い!」と思ってくださった皆様のおかげです。


夜、月、朝、そして「王」というテーマから始まったこの物語


最後まで彼らの物語を見届けていただけたこと、本当に嬉しく思います!!


ここまで応援してくださった皆様、本当にありがとうございました!!


『君と僕が統べる夜』はこれで完結です。


ですが――


また新しい作品を思いついたら、きっと投稿すると思います!


そのときは、ぜひまた読みに来てください!!


それでは、また次の物語でお会いしましょう。


最後まで読んでいただき、本当にありがとうございました!!


――また、新しい物語で。

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