龍脈のショック死と、おこおこドラゴン(合流編)
オニキスはゴクリと山のような大きさの喉を鳴らすと、リクの誠実な態度と、何よりその匂いに抗えず、巨体でステーキを一切れ、パクリと口に放り込んだ。
次の瞬間、伝説の古代竜の脳内に、激震が走った。
「――ん、んまァァァァァいッ!!!」
あまりの美味しさに、オニキスの巨体がビクンと跳ね上がる。
「なによこれ! お肉が柔らかすぎて、噛む必要すらなくお腹に消えていくわ! この赤いお酒も、深みが凄すぎて今まで飲んでた泥水みたいな酒は何だったのよ!?」
一瞬にして激怒の炎が消え去り、美味さのあまり身悶えするドラゴン。
リクはその様子を優しく見つめながら、穏やかな口調で提案を持ちかけた。
「気に入っていただけたなら嬉しいです。もしよろしければ、これからもここで、俺たちと一緒に暮らしていきませんか」
その言葉に、すかさず色とりどりの精霊たちがオニキスの周りへと飛びついた。
金髪のエルフ風をした光の精霊エレナが、オニキスの巨大な鼻先を撫でるように笑う。
「そうだよ、オニキス! 今ね、世界は色々と大変だけど、リクのそばにいればこんなに美味しいものが毎日たくさん食べられるの!」
青いツインテールの水精霊ミーナも、オニキスの瞳の前で楽しそうに宙返りをした。
「ここで一緒に美味しいものを食べて、楽しいこといっぱいして、みんなで一緒に遊ぼうよ!」
紫色の短い髪をした風の精霊シルフも、頬を赤らめながらも誇らしげに胸を張る。
「家がなくなったなら、新しく作ればいいじゃない。私たちも手伝ってあげるから、ここで一緒に楽しもうよ!」
ピンク髪のお団子をしたフローラと、茶髪ロングのテラの双子も、
「一緒にすまうの!」「楽しいよ♪」
と、愛らしさ全開でオニキスの心を優しく包み込んでいく。
知った顔である精霊たちの、嘘偽りのない楽しそうな笑顔に、オニキスの大きな瞳が和らいでいく。
そこへ、王冠をいただいた伝説の巨大な白狼フェンリルが、一歩前へと歩み出た。
同じ「伝説の超生物」として、オニキスと対等の目線を交わす。
フェンリルは低く、けれどどこか親しみを込めた声で、ガルル……と喉を鳴らした。
その声は『オニキスよ。この人間の用意する干し肉も肉も、この世のものとは思えぬほど極上だぞ。我の言葉に嘘はない。お前もこの群れに加わるがいい』と、古き友を誘うように響いていた。
「フェンリル、お前ほどの誇り高き獣が、そこまで言うか……」
オニキスが驚きに息を呑む中、最後に歩み出たのは、エルフの女王――リアだった。
リアは可憐な美少女の笑みをたたえながら、女王としての気品を込めて優しく語りかける。
「ええ、オニキス。エルフの女王として、あなたの新しい安らぎの場所は私が責任を持って保証するわ。だから、リクの差し出したその美味しさに免じて、私たちと一緒に暮らさないかしら?」
リクの心のこもった謝罪と、とっておきのご馳走。
精霊たちの無邪気で温かい「一緒に遊ぼう」という誘い。
フェンリルの格の証明と、リアの女王としての優しい歓迎。
全員の温かい言葉に包まれ、オニキスの頑なだった心が、完全に、心地よく溶きほぐされていった。
「……ふっ、精霊どもにフェンリル、それに女王までがそこまで言うのなら、仕形がないわね」
まばゆい光が巨体を包み込み、光が収まったそこには――
黒い鱗の意匠が入ったライダースジャケット風の服を着た、お腹を空かせた、最高に可愛い居候ニート竜人美少女が立っていた。
オニキスはふん、と可愛く鼻を鳴らし、腕を組んでリクを見据える。
「素晴らしいわ! 謝罪の態度も、この美味しい料理も、我を満足させるに足るものよ! 決めたわ、我、今日からここに住む! 毎食これね!」
こうして、伝説の古代竜オニキスは、誰か一人の言葉に流されたのではなく、他種族連合という「正気で温かい群れ」を認め、対等な関係を結んだ最強の居候セコムとして、最高の形で身内に仲間入りするのだった。




