初日 PM β'
モナスティラ駅からピレウスまでは、電車で約一時間と言った所だろうか。
地下鉄の駅から電車に乗った僕は、リュックを下ろすと電車のシートに腰をおろす。
電車には学生らしい男女が乗り込んでいて、楽しそうに話している。日本人の僕を見てもさほど珍しそうな様子はない。
電車は地下から地上に出て、車窓から流れる街並みの風景が見える。僕にとって目新しい風景も、彼らには何でもない日常なんだな…
とそんな事を考えながら、学生達の会話を何気に聞いていた。まあ、聞いても内容なんか、さっぱりわからないんだけど…
ピレウスについて電車を降りた僕は、駅周辺の散策をする。目の前にあるピレウス港はとっても大きな港で、ここからエーゲ海の島々、トルコ、イタリアにも行けたりなんかする。
駅の周辺のツーリストに入った僕は、まずトルコ行きの可能性を探ろうと、やたら愛層のいい受付のおじさんに尋ねる。
すると…オフシーズンにもかかわらず、トルコ行きの船があった。身を乗り出しおじさんから話を聞く僕。
何々…?ここ(ピレウス)からフェリーで22時間…(汗)。駄目だ…そんなに長くフェリーに乗っている忍耐と気力は無い。
じゃあやっぱりクレタ島か…僕はおじさんからクレタ島行きの船のが出る船着場の場所を聞くと丁重に礼を言い、ツーリストを出た。
駅前のカフェ、色々なお店を回り何とか時間を潰した僕は、クレタ島行きの船着き場に向かう事にした。
でも、歩けど歩けど一向に船着き場に辿り着かない…遠いのだ。
このピレウス港、上から見るとカタカナの『コ』の文字みたいな形をしていて…僕がいた場所、向かっている船着き場はこの『コ』の文字の端から端を歩くような感じで、おそらく一キロ以上の距離があるだろう(いや、体感的にはもっと?)。
重いリュックを背負い、何とか船着き場にたどり着いた僕は、これから自分が乗船するフェリーを見上げる。
到着まで9時間を共にする船はさすがに大きく、迫力があった。フェリーに乗るなんて何年ぶりだろう?最後に記憶があるのって、小学生くらいじゃなかったっけ。
僕は船着き場にある小さなチケット売り場でチケットを買い、夜を超すための食糧…お菓子をいくつか買って、フェリーのタラップを上って行った。