七日目 PM 港に待つもの…
人間はいざとなれば何処でだって寝れる。
夢と現実のまどろみの中でそんなことを考えていると、船が速度を落としていった。
船内アナウンスでピレウスに『間もなく到着する』の声が聞こえると、ようやく何かしらの動きが取れることにほっと溜息をついた。
旅をしているとおのずと何もせずに待つ…という行為が増える。
バスや列車の到着を待つこともそうだし、それに乗って目的地まで行く同中もそうだ。
貧乏旅行を自負している僕にとっては移動の手段に飛行機に乗る事はまれで、大抵値段の安いバス、列車…今回のようなフェリーになったりする(それもセカンドクラス席)。
過去の例をあげればインドからネパールへのバス。オンボロで錆びだらけ…板みたいなシートのバスに一日揺られて行ったのだが…過酷過酷(笑)。途中で川の増水もあって流れる川にタイヤを沈ませながら渡ったりと、あまりいい思い出はなかったりする。
でもそれによって出会った人、飛行機では決して見ることのできない風景…たとえば観光ガイドには決して載っていない現地の人の集落に立ち寄ったりと、そう言う貴重でかけがえのない思い出も発生したりするので、一概に悪いことばかりとも言えないのである。
でも、インドに行く途中のバスでホモのおじさんに迫られたときは少し焦りましたが…(笑)。
その当時の僕は髪がかなり長く、そっち系の人に見えたのかもしれません(もしかして今も?)
ようやく次の行動が取れることで気持ちも前向きになると、僕は席を立ち何度か伸びをする。
窓の外は真っ暗で何も見えない。漆黒の向こうに待っているのはエーゲ海…この旅が始まったピレウスである。
ようやく僕の旅も終わりを告げることになる。
まだピレウスもギリシアで本当の終わりじゃないんだけど…不思議にそうは思えなかった。
僕にとって、ギリシア本土とエーゲ海の島々は何故か全く別の国という認識が出来上がったいてせいだ…
ピレウスについてすることは簡単である。今夜一晩を過ごす宿を見つけるだけだ。
安い宿のあたりはつけているので、そこに行き宿をとり(たぶん空いている)、明日までただひたすら寝るだけ。ちょっと安い居酒屋でお酒でも飲みたいとも思ったけど、もうそんな余力は無いだろう…
そんなことを考えているうちにフェリーがピレウスの港に到着する。
荷物をまとめてタラップを降りると、オレンジの照明で薄暗いピレウス港の地を再び踏みしめる。
相棒のリュックをかつぎ港を出た僕は、ガイドブックの地図をたよりにホテルを目指す。
潮の香りに鼻孔をくすぐられながら通りを20分ほど歩くと、ホテル『アンフィトリオン』があるの場所まで到着する。
でも、夜で暗いせいか中々見つからない。ビルとビルの間を何度も往復しながら探して、居酒屋でたむろしているおじさん達に聞いてようやくその宿を見つけた。
1930年代…アル・カポネの年代に出来たような古い(ぼろい)ホテルの玄関から受け付けに行って、おじさんに今夜の宿の空きを尋ねる。
当然のことながら空いていたので、僕は値切ることもせず(くらいに安い)にキーを貰い、これまた1930年代のようなエレベーターに乗って部屋に到着すると、リュックを床に投げ出してベッドにダイブした。