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第14話 奇跡の白羽の矢

武具を揃え、勉学に励んでいるうちに…時は過ぎていき、いよいよ件の中間試験が近づいてきた。


「中間試験か…」

「どうなるんだろうね」


放課後にシェリド君と共に中間試験の実技試験の依頼書を見る。

ラムさんとキャシーさんは依頼の内容が似ているとの事ので先に作戦会議?だとか言ってこの場にはいない。

…中間試験の学校から支給される依頼書の内容は完全にランダム。こういうのをやりたいとかそういう志望は…残念ながらできない。

俺の専用魔術や得意とするモノ的にも戦闘類の依頼が来れば、満点とか取れるかもしれない。如何せんそこが難しい所でもあり、運任せな所でもある。


「シェリド君はどういう依頼が来たんだ?」

「これ」

「該当する物を採取して調合。聞く限りは簡単そうだけど、問題が採取する物がねぇ…」

「ハイ・エリクサー…か」


薬草と薬品を混ぜて作る飲むタイプの回復薬。

それをエリクサーと呼ぶが、それよりも良いモノであるハイ・エリクサーは通常のエリクサーよりも回復力が高いが調合に使う物のグレードも上がる。

普通のエリクサーは薬草とあるキノコを使う。

んで、ハイ・エリクサーになるとキノコが変わってくる。そのキノコがマンドラゴラになる。引っこ抜いた際に聞こえてくる悲鳴でよくて鼓膜破損、悪くて発狂…そんなのを要求してくるのか。


「大丈夫なのか?」

「まぁね、対処法とかそういうのも知ってるし」

「…なら大丈夫か」

「マガツ君は?」

「これだよ。まぁよく分からないんだが」


俺に課せられた依頼。

それは…


「『剣聖の墓場で暴れる魔物の排除』?」

「あぁ」


俺に課せられた依頼は剣聖の墓場という場所にいる魔物を排除すること。

戦闘系の依頼のお陰で俺のスペックは発揮できる。

だが、問題が一つあった。


「け、剣聖の墓場って…剣聖シルバの?」

「らしいんだよな」


ローダム国の伝説である『剣聖シルバ』。

50年前の伝説であり、50年前にあったローダムでの戦いで名を刻んだシルバの事だ。

生まれた時から親はおらず、何者でもない子供だったが生き物を愛し、秀でた剣術を持っていた。当時の話だと何倍もの体格を持つ大人相手に一方的に殴り勝ったらしい。まぁ…それはいいとしてシルバは他の騎士とは違い馬に乗るのではなく、魔狼『フラッシュ』に乗って戦いこの国に勝利をもたらした。

まさに一騎当千。彼らの絆を切り裂くことはできず、同時に倒すこともできない。

だが…その伝説はある出来事により、幕を閉じた。

シルバは剣聖でありながら、当時のローダムの姫君『ゴルドラ・バエル』を愛していた。

まぁ国王様もそのことを知っていてシルバをローダム国の王国騎士としてゴルド姫の側近として突き従っていたが…敵国にゴルドラ姫を攫われてしまう。

シルバは相棒の魔狼『フラッシュ』と共に敵国に乗り組み、単騎で救い、ローダムに逃げつつ戦った。

だが…ローダムのある洞窟で息をひそめている間にシルバは長期戦で受けた傷のせいで息を引き取ってしまう。それこそ『剣聖の墓場』であり、同時に『剣聖シルバ』と『姫君ゴルドラ』の愛の証でもあった。

ゴルドラ姫もシルバを愛していた。一騎当千の実力も持ちつつ、常に愛を唱えるほど一途。そんな彼に惚れるのも無理もないが、目の前で愛するシルバを失って…そこで共に死んだと伝説には残っている。


「そんな墓場で…魔物か」

「うん、罰当たりもそうだけど…あそこって魔物が入れないほどの結界があるよね」


100年前にシルバとゴルドラが眠っている剣聖の墓場で二度と覚めぬ眠りについた際に、当時の王国の魔法使いが強固な結界を作り、その結界は未だに破られたこともない。

そんな結界の中に魔物、か。


「そう聞いたが…まぁ依頼主に問い合わせる。原因とか聞かないと何とも言えないしな」


破られた理由、どんな魔物か、何故魔物が居るのを知っているのか。

そういう情報が欲しい。


「そっか…うん?」

「どうした」

「何か、とんでもない覇気が近づいてきているような…?」

「何だそれ」


なんて話していたら


――バァァンッ!!


「マガツ!!」

「」


教室の扉が勢いよく開き、真っ赤な覇気が一気に教室内に放出される。

…五本柱、オメガ・ゼパル。

もう何度、あの人の覇気を浴びたのか分からない。事あるごとに俺に生徒会のスカウトか戦いを要求してくる。

俺は良い感じにいなしてるが…流石に長期にわたりすぎて少々めんどくさくなってきた。


「…何ですか?」


戦いか?スカウトか?と疑問に思ったが、オメガ・ゼパルさんからの言葉は意外な言葉だった。


「ちょっと来てくれないか?俺の親父がお前に用があるんだと」

「…は?」


ーーー


「すまないな、急に呼び出したりして」

「い、いえ…」


ここは…ローダムの魔術監査警備局の本部。

何で俺がこんなところに呼び出されたのか分からないまま、オメガ・ゼパルさんの父親が俺の前に座った。

なんかやらかしたのかと疑問に思っていたが、どうやらそういうわけじゃないらしい。

何でも聞きたいことがあるとのこと。


「私は『アルファ・ゼパル』。この魔術監査警備局の警備長だ、君がマガツ君だね」

「はい…」

「話は聞いているよ。オメガからも、世間からもね」

「そ、そうですか…」


オメガ・ゼパルさんは俺の事を何て言っているんだ。


「して、君に聞きたいのは…君の中間試験の依頼書の事だ」

「これですよね」

「おぉ、現物を持っていたのか。助かるよ」


俺が受け取った依頼書をアルファ警備長に渡す。


「…俺の貰った依頼書に何か?」

「いや君が貰ったことにもレギオンがそれを渡したことには何の不備はない。だが…少々厄介な事があってな」


アルファ警備長は少し悩んだ後、俺に『deadORalive』と記された指名手配の紙を渡してきた。


「これは?」

「最近、勢力を上げてきている盗賊団だ。現状、名もない為『ネームレス』と呼称しているがね…それで君に出された依頼と何の関係があるのかを話そう」

「…はい」


俺が思っていたことが顔か、口から出ていたのか分からないが…アルファ警備長は話し続ける。


「剣聖の墓場に侵入した盗賊団がこのネームレスだ、これは確定している。何でも剣聖の墓場の最深部には金銀財宝が眠っていると」

「その情報をどこで?」

「手先を一匹捕まえ、それから聞いただけだ。それだけに過ぎない。それにまだボスが生きている」

「…」

「…それで問題なのがその仲間が持っていった財宝の中に黄金のペンダントをあり、それを持って帰った結果、中に眠っていた魔物が暴れ始めたとの事だ」


あまりにも自業自得すぎて哀れだと感じてしまう。


「…そんな中で、ギルドからレギオンへ送られる依頼書が一枚多かったという情報が私たちへ流れてきた。普通、依頼書が一枚多かったなんて起きるはずもなく、そもそも起きた事例は何十年間の中ではなかった」

「!!」

「マルバス様の子であり、聡い君なら…私の考察が分かるはずだ」


そういいながらアルファ警備長は俺をじっと見つめる。

ギルドからレギオンへと送られた依頼書が一枚多く、しかもそんな事象は今まで起きなかった。そして俺の手元に来た剣聖の墓場で魔物が暴れ始めたという依頼書。

なるほど、聡くなくてもこれは簡単な事だ。


「…そのネームレスがギルドからレギオンに送られる依頼書にそれを忍ばせ、魔物を倒してもらい、宝物を持ち去るということですか」

「それだけでは完璧な解答とは言えない」

「え?」


どうやら俺の答えでは何かが足りなかったみたいだ。

何が足らないんだと聞こうとしたタイミングで、アルファ警備長は足らない部分を話してくれた。


「正確には…『レギオンの生徒』を殺して宝物を奪う、だ。」

「!!」

「相手は子供だ。確実に殺しに行くだろう」


言われれば…確かにそうだ。

手伝ってもらったから依頼料を払う必要があるが、悪名高い奴らにとって依頼料を払う必要は一切ない。

手伝ってもらった後に生徒を殺せば目撃者もなく、事を済ませられる。

外道だと思ったが…俺はそれより上の外道を知っている。

知っていてもなお気が付かなかったのは俺自身が想像以上に学園になれてきたからなのだろうか?


「…我々としてはネームレスを完全に捕まえたい。とはいえ、こちらで変に動けばあちらに感づかれてしまう。そこで…奇跡の白羽の矢が君に立ったというわけだ」

「俺ですか」

「あぁ。どの生徒がどの依頼をこなすのかは既に学園中に張り出されているだろうし、何よりその方が連中にも聞こえやすい。同時に君はかなりの実力者だ。盗賊団くらい軽く捻れるだろう」

「警備長がそんなことを俺に言うんですか?」

「あぁ言える。何ならマガツ君がレギオンを卒業した際にはローダムの魔術監査警備局への入社を打診しようと思うほどだ」


…うん、オメガさんとアルファ警備長は似ている。

特にこういう俺の事情を考えず、スカウトする感じは。


「とにかく、君に私個人として依頼したい」


アルファ警備長は俺の元々の依頼書を魔術で書き換えていく。


「剣聖の墓場の魔物の討伐もそうだが…何よりもネームレス逮捕を手伝ってほしい。勿論、最大限のお礼や援護もしよう」


そういいながら書き換えた依頼書を俺に渡してくる。

内容は『剣聖の墓場の魔物の討伐及びネームレスの逮捕』。

剣聖の墓場の魔物の討伐し、ネームレス逮捕へ貢献すること。

依頼文は短いが、やることが分かりやすいな。


「喜んで受けましょう。正直、他の生徒が危険にさらされるくらいなら俺の力でぶっ飛ばしてやります」

「ありがとうマガツ君。それと、この依頼は秘密裏に行われる。マルバス様以外には公表しないようにな」

「分かりました」


俺はアルファ警備長と硬い握手を交わした。

これは契約の証であり、協力関係であるという証明だ。


「期待している」

「その期待に答えて見せましょう」


そうして、色々と手続きが終わったのち魔術監査警備局の本部を後にした俺は家へと歩みを進めながら、懐に閉まった依頼書について考えていた。


(剣聖の墓場か…)


剣聖シルバもゴルドラ姫も今の世で墓を荒らされるのは…悲しいことだろう。

そのネームレスってやつらが他国の奴なら逆に怒るだろう。

本当に罰当たりだ。

…それに俺は剣聖シルバの伝記は結構好きな部類に入る。

如何せん、俺と生い立ちが似ているからな。

親はいない、剣を使う。これだけでシンパシーを感じざる負えない。


「また、読んでみるか」


と思いながら歩いていると


「…む」


背面から視線を感じる。

一人…いや二人か?

ただ問題なのは視線と共に殺気も感じる。

…しょうがない、顔を拝んでやるか。

気が付いていることを感じ取られる前に『近道を使うか』と呟いてから路地裏に入っていく。


「…」


付けてきている二人が路地裏に入ったのを感じ取り、深く…より深くまで路地裏に入っていき、曲がり角で一気に加速し壁を蹴り上げて、空に舞う。


「…!居ないぞ!?」

「何処行った…!?」


やはり、俺を狙ったな。


(…運の悪い)


心の中で呟きながら地面へと落ちていく中で、俺は片足のかかと落としを片方の頭にたたきつける。


「がっ!?」

「なっ!?何処から!?」

「黙れ」


急に空から敵が襲来し、片方の意識が持っていかれたことに驚きもう片方の男は距離を取ろうとするが、俺は片手でその男の口を掴み路地裏の壁に抑えつける。


「ぐっ!?何者だ…!?」

「別に、何者でもねぇよ。一つ言うならちょっと機嫌が悪い奴だ」


ネームレスとかいう盗賊団のせいで下手したら俺の友達が巻き込まれるところだったんだ。

そう考えると心の中でふつふつと苛立ちが芽生えてくる。


「だ、だが俺にかまっていていいのか…?」

「あ?」

「俺にはまだ仲間がいる」

「そうか、なら全員殺せばいいか?」

「は?」

「喧嘩を売る相手を考えろ、死者を増やしたいのなら呼べばいい」

「…」


その言葉を聞き、怖気づいたのか男は黙った。

俺は手を放し、倒れこんだ男を睨む。


「何が目的で俺に接近してきた」

「お前が…あの依頼書を受け取ったんだろう、マガツ」

「…お前か、依頼主は」


あくまで知らないふりをしておく。

そうした方が色々と楽だ。


「あぁ…要件は単純だ。これを持って剣聖の墓場に乗り込み魔物を倒せ」

「…」


そういうと男は懐から黄金のペンダントを取り出し、俺に渡してきた。

…じゃあコイツはネームレスのボス、または関係者だな。アルファ警備長が言っていた通りならこのペンダントを盗んだせいで剣聖の墓場にいた魔物が暴れ始めた。


「そうかい。けどな、いきなり襲いかかってくるような奴の依頼を俺が受ける必要があるのか?」

「お前は…学生だろう?他の生徒に遅れをとるわけにはいかないんじゃないか?」

「殺されかけたでも言ってお前を魔術監査警備局に明け渡せば、何らかの温情はあるだろう」

「…依頼料は倍払ってやる」

「そうか…じゃあさっさと失せろ。さっきも言ったが俺は機嫌が悪いんだ」


そういうと男は伸びている方の男を背負ってそそくさと路地裏から消えていった。


「はぁ…」


路地裏の壁に背を預けて、上を向き…息を吐く。

盗賊団、か…面倒な敵も増えた。

だけど盗賊団ごときで躓く訳にはいかない。言い方は悪いかもしれないが、今まで学んできたことを活かす、いい機会かもしれない。


「俺を楽しませてくれるよな、ネームレス共」

誤字脱字、語彙力がほぼ皆無に等しいのでミス等がありましたらご報告お願いします


感想も待っていますので気軽にどうぞ!


超絶不定期更新ですがご了承ください…

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