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翼を失うと彼女は死ぬ  作者: 薔薇百合深呼吸
32/39

第1章 32


 ◇

 エリアーナの参戦によって、神速のような二人の攻防が一度中断する。

 その手には、川原と同じようにアイスの棒が握られている。

「お、おい。お前大丈夫じゃねぇだろうが! 下がってやがれ!」

 だが、エリアーナは、心配する川原を尻目に鼻を鳴らした。 

「ふん。ようやく張り合いのある顔になったじゃねーか。私はそっちのお前の方が好きだぜ」

「は、はぁ? お前何言ってやがる」

 俺の方の川原もそういった耐性が皆無なのか、自然と頬を赤く染めていた。

「エリアーナ。おかえり・・・・・・と言いたいところでけど、そんなボロボロな体であちしに勝とうって言うの?」

 エリアーナが参戦した事で、実質二対一のアドバンテージを得られたように見える構図だが、実際には、負傷者を抱えているようなもので、足を引っ張る可能性がある。

「うるっっっっせぇぇぇぇぇぇぇ!」

 まるで狂犬のように声を張り上げて、アカリの言葉を吹き飛ばした。

「私は・・・・・・てめぇを絶対に許さねー! アリーシャを虐めていた事は勿論、天使としての才能を奪おうとした・・・・・・お前はとんでもない重罪を犯した!」

「そう・・・・・・だったらあちしをどうするっていうの?」

 エリアーナの本気の鋭い双眸を前にしても、萎縮(いしゅく)さえするそぶりを見せないアカリ。

「お前に罪を償わせてやる。きっちりとな」

「へぇ? お前があちしを? 劣天使にしかなれなかった下等生物が?」

「お前に一つ教えてやるよ。私は、妹を守る為なら、有天使にだって負ける気はしない」

「なら、どうしてあっさり捕まったんだろうねぇ?」

「あの時は油断していただけだ!今は、そうはいかない」

 言いながら、剣道の霞の構えでアカリを迎え撃つ準備をする。

「かかってきなよ。体も心も今度こそあちしがこなごなにしてあげる」

 その言葉を皮切りに、再度戦闘を再開する。

 エリアーナは、天衣力(てんいりょく)の残り滓まで絞り上げるように、アカリに必死に食らいつく。

 川原もサポートを行うが、それでもまだアカリの方に部がある。

 神速のごとし死闘のあまりか、川原も体力をごっそり消費させられている。

 このままでは、じり貧なだけで、勝利への活路が見いだせない。

「おらおらおらおら!さっきまでの威勢は一体どこへ消えたのかな?」

 流石、他の天使の力を授かっているだけあって、実力が飛躍的(ひやくてき)に高い。

 まるで、あえて全力を出さず、二人が苦しみもがく様を楽しんでいるようでもあった。

 戦闘での動きの速さがそがれ、今は二人にも何が起こっているのかがよく見える。

「ど・・・・・・どうしよう・・・・・・おねーちゃんが・・・・・・颯太さんが・・・・・・」

 このまま行けば二人が負けてしまう事は、傍から見ている二人にも分かった。

「アリーシャ! 何か・・・・・・打てる手段はないの?」

「そ、そう言われましても、二人が勝てるようにする方法なんて・・・・・・」

 そう言ってから、アリーシャは一度黙りこくった。何かを思案しているようだ。

「ど、どうしたのアリーシャ! 何か思いついたの?」

「はい・・・・・・正直これで現状が打開出来るかどうか・・・・・・」

 弱気に呟くアリーシャの肩を揺らすよう、加藤がまっすぐその澄んだ瞳を見つめる。

「アリーシャ。何でもいいの。方法があるなら言ってちょうだい」

「は、はい・・・・・・それは・・・・・・」

 アリーシャは、逆転の一手ともとれる方法を加藤に説明する。

 すると、加藤は、それは希望だとでも言うように、喜々として声をあげた。

「それよ! それなら、二人にも勝機があるかもしれないわ」

「あの・・・・・・でもでも・・・・・・今の私にはそれを行う為の天衣力(てんいりょく)が」

 すると、加藤は溜息を一つ吐いた。

「何を言っているのアリーシャ。天衣力(てんいりょく)ならここにあるじゃない」

 そう言いながら、加藤が自分の胸を指した。


「アリーシャがやろうとした事、代わりに私がやってあげるわ!」

 

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