イングラスの茶会
とりあえずのつなぎ
「戦果記録艦テレグノシスより入電。アルビオン特務艦隊はoperation :Whales Killer及び秘匿任務17号 operation :Fold thehorn of Unicornに成功したとのことです。」
海戦があったその日、卓を囲んで数人の男達が紅茶を楽しんでいた。皆、胸には勲章を下げ、派手な金の刺繍の入った軍服を着て小難しい面をしたジジイとも言えそうなオッサン共である。
彼らはイングラス帝国海軍の高官達で、今作戦の首謀者である。
「うまくいきましたなぁ。」
「唯一の想定外は陸軍の連中からの抗議だったが、微々たるもの。概ね計画通りだ。」
「あぁ、これで帝国も我らもしばらくは安泰じゃ。」
「懸念事項は排除しておくに限る。」
「国内の件もこう簡単であれば良いのだがな。」
ーーーーーーー「如何かな?」と背後の棚から取り出したブランデーを紅茶に注ぎつつ、太めの男が話を進める。
「ところで第一海軍卿はどうしている?」
ブランデーの勧めを断りミルクポットに手を伸ばしていた男が答える。
「ええ、今はまだ自宅でおとなしくしていますよ。もっとも、届け出なく敷地から出てくれれば国家反逆罪のこじつけができてこちらとしてはありがたいのですがね。」
「まあそう焦るな。動かれたら動かれたで厄介なジジイだ。北方貴族の成り上がりなだけあって切れ者。一度の外出はおろか、一筆書けば現体制を転覆させかねん。加えて、奴は王女殿下のお気に入りだ。安易に処理もできんだろう。」
「と、言うわけだ。監視の継続を命じておく他ない。」
この話は終わりだと言わんばかりに深々とため息をついて、男たちは歓談へと戻っていった。
「今戦争一の海軍功労者がその雄姿を目に収められないとは、皮肉なものだ。」
老紳士体の白髪の男が葉巻をくゆらせた。
この世の不安定さを表すように、紫煙はのたうち回って、消えた。