表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

25/25

25)エピローグ

今日でソラ視点版、完結です。ありがとうございました。

m(_ _)m


 キースレア帝国とアノス王国の、和平条約締結における歓迎会は、微妙な空気に包まれていた。

 カリンがキースレアで荒れ地を潤す聖歌を披露してから、すでに3ヶ月が過ぎていた。

 テーブルの上には、カリンの歌を魔導具に収めたものが載っている。


 生の歌ほどではないが、多少は効果があることはテスト済みだった。1割程度の効果がある。

 何度か荒れ地で流せば、良い結果が得られるだろう。


 この魔導具を渡すに際して、シオン殿下は、キースレアの陛下に、「より確固とした平和条約の締結」を申し入れた。

 異論のあるのは、軍部だけだったらしい。

 キースレアの陛下は、アノス王国の申し入れを受け入れてくれた。


 魔導具は、永遠に保つものではない。

 平和条約の締結が無効になったとき、あるいは、キースレア帝国で攻撃魔法の訓練が行われたとき、魔導具は使えなくなるように、仕掛けがしてある。



 歓迎会が済んだら、私とカリンは、ギルモア王国に帰る予定だった。

 もう私の父は引退したので、アノス王国に帰ってもよいのだが、ギルモア王国は居心地が良く、しばらく住むことにした。

 叔母が、私たちに離れを提供してくれて、そこで暮らす。帝国から帰ったときの私たちの我が家だ。


 歓迎会会場で、キリアン皇子は、私とカリンと少し話しをした。


「君たちは、最後まで、私を驚かせ通しだったね」

 と言う。キリアン皇子は、どこか寂しげだった。

「なにか他に驚きましたか?」

 カリンが首をかしげる。

「ハハ。

 まぁ、いいよ。

 私が、勝手に驚いていただけだから」

 皇子が苦笑する。

「私も、なにか、驚かせましたか?」

 と、私も首をかしげて尋ねた。


「最初に、君のコンクールでの演奏で衝撃を受けてから、最後に歌姫と結婚したところまで、かな」

「なにも不思議はないですよ。

 私たちは、音楽を愛する者同士、ずっと、一緒になる予定でいたんです。

 12の歳から」

「私が、カリンと君を見かけたのも、12の歳だったんだがね・・」

 キリアン皇子が遠い目をする。


 でも、皇子は、義理の姉上に恋心を抱いていたじゃないですか。

 ・・と、私は胸のうちで反論する。

 道ならぬ恋に心を奪われていた。

 おかげで、カリンの価値に気づけなかった。

 もしも、カリンが、キースレア帝国にとって、有益だと気づいていたら、彼は、大国の力を使ってでも手に入れようとしただろう。

 でも気づかなかった。

 彼女をもっと見ていれば判ったことだ。

 皇子がカリンに抱いていた感情は、「少々の好意」「同情」「好奇心」だった。

 彼が、義理の姉上に惹かれた理由のひとつは、おそらく、皇太子妃が、キースレア帝国にとって、得がたい妃だったからだろう。

 王族や皇族として教育を受けたものは、得てして、そういう価値観を持っているものだ。


 だから私は、カリンの価値を知らせたくなかったし、結婚するまでは、キースレアに彼女を連れていきたくなかったのだ。


◇◇◇◇◇


 1年後。


 私のプロポーズの言葉は、

「子供たちの笑い声と、歌と音楽があふれる家庭を作ろう。子供たちに、たくさん、子守歌を歌って、カリン」――だったのだが、私と彼女は、今、そんな家庭を築いている。


 私たちの間に、可愛い息子が生まれた。


 カリンの父上は、たいそう喜んでくれた。

 カリンの兄たちは、みな、幸せな結婚をしたが、まだ孫が生まれていない。

 私たちの息子が、初孫だった。


 カリンの父上は、ときどき、不可思議な歌を歌っている。


 カリンは、「あの歌は、甘い菓子パンの勇者が、悪者をやっつける歌よ」と言う。

「ずいぶん遠い昔に、聞いた歌なの。・・たぶん、母が歌ってくれたんだわ」と。

 それで、カリンは、小さな子供のとき、その歌を鼻歌で歌っていた。


 カリンが幼いころ、父上にメロディを教えてあげたので、父上は、それに自分で歌詞をつけて歌っているという。


 カリンが言うには、それは、「まん丸い菓子パンの勇者が、自らを犠牲にして民を助け、悪者を退治する物語」らしい。


「それは、勇ましい物語だね・・でも、私は知らない物語のようだけれど?」

 と私は言った。


「そうよね・・」


 カリンも、微かな記憶しか残っていないらしい。


 カリンの父上の不思議な歌は、息子がたいそう気に入っている。

 まぁ、祖父と孫が幸せなら、それで良いか。


 父上が歌う。


「だから、君は、飛ぶんだ、どこまでも」


 その歌は、青い空の向こう、どこまでも続いていく未来を思わせた。



お読みいただきありがとうございました。

おかげさまで、なんとか、無事、終えられました。

番外編が出来たら、また投稿します。

ブクマや感想や評価をありがとうございました。作者の励みでした。


新連載。(^^)

『世界にひとつだけの家』も、お読みいただければ幸いです。m(_ _)m

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ