エピローグ
本当に、私は馬鹿だった。
君の気持ちなんて考えずに、突っ走って、いつもそれで失敗していたのに気づかなくて。
突然、すべてが奪われることだってあったかもしれないのに、あの事故が起きるまでずっと鈍感で、無知なままだった。
離れよう。そんな一方的な決断がどれだけ幼稚で馬鹿なことだったのか。
私は君の優しさに、愛情に包まれてから気付いたんだよ。
「愛結、行こう」
青空の下、君が笑顔で手を差し出す。
車椅子に座っていた私は、どきどきしながらその手を取った。
「大丈夫、俺がいるから」
その言葉に背中を押されるようにして、私は立った。
右足の軸は不安定で、身体が傾きそうになる。けれど、それを必死で踏ん張った。
支えてくれる、君のおかげ。
「祐樹、私、絶対にまた走るから。それで、祐樹のことも追い抜いて、そしたら……私と結婚してくれる?」
あの時、この手を離していたら。この手に、拒絶されていたら。
きっと、自分の目の前に立ちはだかる苦しい現実に耐えられなかった。
「愛結、そういうのは男に言わせてくれよ。本当に、馬鹿だなあ。その時が来たら、ちゃんと俺にプロポーズさせてくれ」
もう一度、君と一緒に歩けて。
もう一度、君と一緒に走った。
もう一度、君と一緒に笑い合えた。
この先、どんなことがあっても、君と一緒なら大丈夫。
何度だって立ち上がって、歩いてみせる。
もう二度と、君の手を離したりしない。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!!
奏舞音