№29
俺達は部屋へと戻ってきた。
甘ったるい雰囲気はそのままに、俺はつい…、邪まな事を考えてしまう。
今夜のこれからの事とか……、理沙の事とか……。俺達の事とか………。
このどうしようもない脳みそは、そんな事ばかり考えていた。
理沙 「あれ? 容子からメールがきてる…。 何だろう?」
俺はその言葉に嫌な予感がしていく、予感的中しない事を祈っていた。
理沙 「ジーン、容子が部屋まで迎えに来てって、カードケームしようって。
ちょっと行ってくるね。」
俺の予感は的中した………。
淳二 「あぁ…、わかった……。」
俺は自分でもびっくりするほど寂しそうな声を出していた。
理沙 「すぐ帰ってくるから、そんな寂しそうな声出さないの…。ふふ…。」
理沙に指摘されて俺は顔が急激に熱くなっていくのがわかった。
理沙 !!!!! え? ジーン……。顔……真っ赤っ!!!
理沙がドアまで行きかけて俺の方へと戻ってくる。俺は理沙の行動が理解できずにただじっと見ていた。
俺の目の前まで来ると、その細くて長い腕を俺の首に巻きつけてくる!!!
理沙 「おりこうさんに待っててね…。」
うわっ!!! 耳元で囁かれた!!!
理沙の息が耳にかかる。俺はつい反応して自分の腕をその細い腰に回していく。
理沙 「ジーン………、CHUっ」
頬にキスまでっ!!! 無意識かっ??? 煽られてる???
唖然としている俺をよそに、理沙がスルリと腕から離れて手をヒラヒラとさせながら歩いていく。
どうやら…、アメリカ特有の濃厚な挨拶だったらしい……。
一人部屋に残った俺は、行き場のない欲望を抱えて悶々としていた。
淳二 「俺だ、お前なっ、俺達を巻き込むなっ。今、理沙が容子を迎えに行ったが、
どういうつもりだ?」
真 「淳二っ、悪いっ、ごめんっ。」
淳二 「ごめんじゃねーよっ。何考えてんだっ?」
真 「すまない…、容子が……部屋を抜けだす理由がなくて…。俺が行くわけにもいかず…」
淳二 「そんな事だろうと思っていたっ、ところでお前は俺のとこにいつ迎えに来るんだ?」
真 「それが……、その……。」
淳二 「お前……、今……何やってる?」
真 「……………。…………。」
淳二 「麻雀だな…? 違うか?」
真 「…………。……………。」
淳二 「何考えてんだっ? すぐには来れないよな…。お前…。」
真 「いや…、早めに切り上げていくから、大丈夫だから…。」
淳二 「どうせ直ぐには来れないだろっ。ったくっ。」
真 「ごめんっ、知らないうちにメンバーに入れられていたんだっ。」
俺は半ば呆れていた。真はみんなが酔いつぶれるまで来ないつもりだと、ピンときた。
淳二 「お前がいつまでたっても来ない時は、俺がお前を迎えに行くっ、わかったかっ。」
真 「わかったよ…。悪かったよ…。」
淳二 「俺と理沙の濃厚な時間がなくなるだろっ?そのくらい気をきかせろよっ。」
真 「お前達は…いつでも濃厚な時間つくれるだろ? ……。悪いと思ってるよ…。」
真はまさか俺と理沙が今日から付き合いはじめの初々しい二人だとは思ってもいないはず…。
俺も言いたくない……。クソッ。
淳二 「ああ…、わかった…。容子の事は心配するな…、俺がちゃんと見ているから…。
とにかく、早く来いよな…。」
真 「ありがとう…淳二…。助かったよ…。」
俺は携帯をベッドに放り投げた。
頭では理解しているつもりだが…、俺も男だから…、クソッ、今更ながら無償に腹が立ってきた。
耳に感じた理沙の息……、リアルに残るその細い腰と首に回された腕の感触が俺をますます悶々と
させていくようだ……。
あいつを……、壊しそうで俺は自分が怖かった……。