scene4
1時間が経過した。
一進一退の攻防が続いている。
「おい!まだか?俺はもう限界だぞ」
レイジが根をあげている。
だいぶヘトヘトのようね。
まあ私の手ももう限界近いけれどね…。
「あと一息ですわ」
力を振り絞る。
今!!
海の主が宙を舞う。
5メートルはあろうかと言う巨体が地面に打ち付けられた。
海の主を見る。
「ほら、御覧なさい。
私に釣れない魚はないわ」
ちょっとふらつきながらも力強く宣言してやった。
レイジはだらしなく地面にへたり込んでいる。
私の宣言に答える気力もないようね。
それよりも釣った魚、釣った魚。
釣り人生史上でもめったにお目にかかれないって言うか最高記録じゃないかしらこのサイズ。
そもそもヘドロをまき散らす魚なんて初めて見るし。
食べられる魚なのかしら?
出来れば釣った魚は美味しく頂きたい派なのですが…。
「あれ?この魚、ボウラに似てないか?」
いつの間にか立ち上がったレイジが魚の周りをうろうろしている。
しかし急に何を言い出すかと思ったら、この魚がボウラですって?
そんなわけあるわけがない。
だってボウラならどんなに大きくても1メートルぐらいの大きさが、いいところよ。
そんなこともわからないでボウラみたいだなんて...。
「ボウラの訳ありませんわ。だいたい大きすぎるじゃない」
レイジは憮然とした顔で答えた。
「そうなんだけどよ。見た感じがだよ。この口の感じとかボウラの特徴が出てるだろ」
口のあたりを見る。
確かにへの字に曲がっていて上あごが大きく開いている。
唇には小さい葉がびっしり…。
大きすぎるけど見た目の特長は確かにボウラのそれ…。
でもこの大きさは絶対に違う。
「確かによ、俺も大きすぎるとは思うぜ。でもよ見た感じの特徴は間違いなくボウラだぜ」
「そう言われればそうですけど...」
「そもそもボウラはこの辺じゃ見かけない魚だ」
「そ、そうなの!?」
「え、知らなかったのか?」
レイジの驚いた表情...なんか魚の知識で負けた感じがするわ。
「負けてませんからね!」
きりっと睨んでやった。
でも確かに...いろいろ変よね。
ボウラに似た大きな魚。
ヘドロだらけの海。
思案にふけっていたその時。
ザバァァァッ。
何かが流れでる音。
音のする方を見る。
魚の腹からヘドロが流れでていた。
その横にはナイフを持ったレイジが立っている。
魚の腹にナイフを突き立てた。
「ちょっと、ちょっと私が釣った魚に何してんのよ!?」




