新旧弟子衝突4
「なぜ……」
ギリウラもイースラぐらいの年から剣を握っていた。
ウライノスに師事するのはもっと後ではあるが、師事してからだってイースラよりも剣を振ってきた歴は長い。
それなのに技術で押し切れないことに、ギリウラは困惑を抱える。
「なぜ、か。あんたもいっぺん全部信じて、全部守るために戦い抜いてみれば分かるよ」
イースラの中身は一度人類最後まで戦い抜いた男なのである。
どんな過酷な戦いでも、どんな状況でも剣を振り、命を燃やし続けてきた。
回帰前の経験を含めると、イースラの方が剣を握ってきた歴史があるのだ。
「意味のわからないことを言いやがって!」
しかしギリウラにはそんなこと分からない。
押しきれなくて苛立ったギリウラはオーラを使い始めた。
「じゃあ俺も」
ギリウラの濃い紫のオーラに対して、イースラも白いオーラをまとう。
「「蒼天剣一式!」」
オーラを出したならやることは一つだ。
イースラとギリウラが同時に動き出す。
これまでも似たような動きをしていたが、蒼天剣の動きは少しのズレもなくピッタリと同じである。
第一式はギリウラ優勢。
純粋な力のみならず、オーラの量なんかでもイースラを上回っている。
ただイースラは技術力とオーラ運用の上手さでなんとか乗り切っていた。
「第二式……」
一の次は二。
またしても二人の動きが重なる。
しかし、戦いの変化は訪れていた。
「なっ……」
第二式の最後の一撃。
そう思ってギリウラが放った攻撃がイースラに弾き返された。
そしてイースラの剣がギリウラの頬を掠める。
顔を傾けなければ、ざっくりと斬られていたかもしれない。
均衡が崩れ始めた。
「なぜ……!」
互いに蒼天剣の第三式を繰り出す。
途中までは同じだった。
しかし徐々にイースラの勢いが増していく。
「ギリウラの動きが崩れた……!」
イースラの剣をギリウラは第三式の動きで受けきれなくなった。
ギリウラは防戦を強いられる。
防ぎきれなかった剣先がギリウラの体をわずかに切り裂いていく。
「どうして師匠が何も言わず、お前に隠れるようにして俺といたのか分かるか?」
「そんなもの……」
「きっと恥だろう。半分の年齢にも満たない俺に剣を教わるのは」
「なに?」
「弟子のあんたに知られるのもきっと複雑な思いがあっただろう。それでも師匠は強くなるために、そしてお前にも剣を教えるために恥を忍んで学んでいたんだよ」
第三式が終わった。
「文句言わずに信じてやれよ。最後まで……ついていってやるのが弟子だろ……!」
第四式、イースラの動きはさらに激しさを増す。
蒼天、蒼い空のような奥行きを持った剣がギリウラに襲いかかる。
隙を見て反撃しようとするものの、イースラの動きは空に浮かぶ雲のように掴むところがない。
「はっ……」
ギリウラは空を見た。
白いオーラが渦巻くような激しい剣の道の先に、どこまでも広がる空があった。
「はあっ!」
「ガッ!?」
ギリウラの首に剣が迫る。
見ていた全員が一瞬ヒヤリとするところでイースラは剣を止め、代わりにオーラを込めた掌底でギリウラの胸を突いた。
心臓が止まったかのような衝撃を受けながらギリウラがぶっ飛んでいく。
かつて交流大会でクルーンに打ち込んだものよりも強い一撃に、ギリウラは胸を押さえて苦しそうに咳き込む。
「まだ続けますか?」
蒼天剣も第四式で終わりではない。
イースラはギリウラに剣先を突きつけた。
オーラは無しだったとはいえ、ほとんど蒼天剣で受け切ったウライノスとはやはり実力の差がある。
「…………負けを認める」
ここで無様に抗うほどギリウラもバカではなかった。
悔しそうにうなだれて、絞り出すような声で負けを認めた。
「わっ!?」
サシャが持っていた契約書が光り、ギリウラの体の中に吸い込まれていく。
「これで今日から俺が兄弟子、ちゃんと敬わないと契約不履行で死んちゃうからな」
「……なっ!? そんなの……うっ!?」
ギリウラの胸がギュッと痛んだ。
「言ったろ? 兄弟子は敬うもんだって」
イースラはニッと笑う。
「師匠も敬って……裏切るなよ? 裏切った瞬間にあんたは死ぬんだ」
「……負けの代償としては重たくないか?」
「終わった後でそんなこと言ってどうする? 全部受け入れて始めたことだろ?」
「俺はお前が……あなたがあんな剣を扱えるなんて知らなかった」
「もうちょっと我慢してたら師匠が全部習得して、お前にも教える予定だったんだよ。怒りなんて爆発させなきゃこんなことにならなかったんだ」
「くっ……」
どの道もう契約は取り消せない。
「ただこれからもっと良いもの教えてもらえるって分かったろ? 黙って師匠についてけば強くなれるさ」
これで後の心配が一つ消えた。
大きな戦力が味方であり続けることが確定し、今後小言を言われなくなるのだと思ったらだいぶ気分も軽くなった。
あとはウライノスとギリウラに薬の素材を取ってきてもらうだけだ。
小さい一歩でもコツコツと。
着実にイースラは前に進んでいるのであった。
ーーー第三章完結ーーー




