オオカミを捕まえろ6
「あなた様……あなた様方ならばリフェン様をお助けできるでしょう。どうかこのいたいけなネズミのお願いを聞いてもらえないでしょうか?」
「申し訳ありませんが……」
「おお……」
チューミットは明らかにエティケントのことを見ている。
ただエティケントの断る雰囲気がある言葉の出だしにチューミットは悲しそうな顔をする。
エティケントがすごい魔法使いであるということをチューミットは感じ取っている。
「決めるのはこの子ですので」
エティケントはポンとイースラの肩に手を置く。
「この集団を率いているのは私ですが、意思決定は私ではありません」
ウライノスはともかく、イースラたちは調査のために雇われたという形である。
そのために、名目上リーダーはエティケントだ。
しかしながらこの集団において方針を決めているのはイースラなのだった。
なので実質的にリーダーなのはイースラで、エティケントはリフェンを助けに行くかどうかはイースラに任せるつもりなのだ。
「チュチュ!? いや、確かにそういえば会話の主導もこちらのお方が……」
チューミットは驚いて飛び上がる。
しかしよくよく思い返してみれば、会話もエティケントではなくイースラが行っていた。
ハッとした顔のチューミットはイースラに視線を向ける。
そのままお願いするようにキュルルンと上目遣いをして見つめる。
「どうですか、お兄さん? お願い聞いてくださいますか?」
「ちなみにチューミットさんは助けに行かないんですか?」
「ご冗談を! 私めは見ての通りのネズミ、でございますよ!」
チューミットはケラケラと笑う。
確かに普通のネズミならば、ダンジョンで行方不明になった人を助けられるはずもない。
だが、言葉を喋り、魔法を使い、テーブルまでお茶をこぼさずに運ぶネズミは普通のネズミじゃない。
魔法の実力は知らないが、捜索ぐらいはできそうだと思う。
「ただネズミにダンジョンは危のうございますから。それに私はダンジョンに入ることができないのです」
「そうなんですか……」
何だか不思議なものだけど、チューミットが嘘をつく理由もない。
知らぬ他人にお願いするぐらいなのだから焦っているのは確かなのだろう。
「それでどうでしょうか?」
チューミットは再びキラキラとした目でイースラのことを見上げる。
「ああ、助けに行くよ」
「本当ですか! ありがとうございます!」
リフェン、つまりライアンウルフはこれからにも必要な人である。
助けられるなら助けるべき。
ついでに助けて恩を売ることができるのなら一石二鳥だ。
探し出して声をかけるなんて明らかに怪しい行為から、どうやって信頼を得るか悩んでいた。
ちょうどいい機会が転がり込んできたものであった。
「感謝いたしますぅ〜」
チューミットは深々と頭を下げる。
「ではでは早速ダンジョンにご案内いたします〜」
こうしたわけで、イースラたちはダンジョンに向かうことになったのだった。




