88 最後の戦い
私は本当に後悔した。
もう少し慎重に行動をするべきだった。ある程度戦力を集めて、ここに来るべきだった。これまで私の活動は順調すぎたから、油断していたんだと思う。まあ、今更それを言っても仕方がないけどね。
「デミドラ!!この数じゃ、地上と空の両方を防ぎきることはできないわ。だから、地上と空で二手に別れましょう」
『私は大丈夫だけど、カトリーヌは大丈夫?』
「見た目はか弱い令嬢に見えるかもしれないけど、私も竜騎士よ。任せなさい」
『そ、そうね・・・じゃあ、困ったら言ってね』
私はデミドラから飛び降り、地上に降り立つ。
デミドラはすぐに空中を飛んでいるスカルドラゴンの群れに向かっていく。私は地上を走ってくるスカルドラゴンの群れに対峙した。
スカルドラゴンはただ操られているだけで、ドラゴンだった頃の実力の3分の1も出せていないような状態だった。これなら、ちょっと強い魔物レベルだ。
しかし、スカルドラゴンはドラゴンの骨で出来ている。攻撃の威力は並の魔物の比ではなく、楯で防ぐのも一苦労だ。それに防御力も高く、全力でハルバードを振り抜かないと、傷一つ付けることができない。
「どこまで魔力が持つか分からないけど、身体強化魔法をマックスで掛けるしかないわね・・・」
それからどれくらい時間が経ったのだろうか?
もう記憶が曖昧だ。半日以上戦っていた気もするし、10分程度しか戦っていない気もする。ただ、迫り来るスカルドラゴンの群れを受け止め、薙ぎ払っている。
だんだんと意識が遠くなる。
そんな時、スピラの声がした。
「カトリーヌさん!?」
「・・・うん?」
「ああ・・・よかった・・・お父様もお母様もこちらに向かっているわ。それにもう大丈夫よ・・・」
「そう・・・よかったわ・・・」
そこから私の記憶は完全に途絶えた。
★★★
目が覚めると、そこは実家の自室のベッドの上だった。
ずっと側に居てくれたであろうマリアが涙を流しながら、声を掛けてきた。
「お嬢様!?」
「・・・マリア?」
「すぐに旦那様と奥様をお呼び致します」
それから、慌ててやって来たお父様とお母様に抱きしめられた。
「カトリーヌ・・・」
「ああ・・・何てことでしょう・・・」
メイド長に二人は制止された。
「旦那様、奥様。お嬢様はまだ病み上がりです。本日はこの辺で・・・」
「うむ・・・」
「分かったわ・・・」
お父様とお母様が退出した後、マリアから私の意識が無かった間の説明を聞いた。
私とデミドラは、一昼夜戦っていたらしい。大した外傷は無かったけど、体力と魔力を限界まで使いきったことが原因で5日間、意識が無かったようだ。
戦況のほうだけど、戦闘と呼べるものではなかったそうだ。
「竜王国としては、ドラゴンの墓を暴いたアンデッドたちを許すわけがありません。ほぼすべての竜騎士、それに野生のドラゴンも参加し、あっという間にアンデッドたちは駆逐されました」
「そう・・・それで、私とデミドラが戦っていた砦は?」
「もちろん無事です。ハワード商会のメンバーがすぐに駆けつけ、他の援軍が来るまで死守致しました」
マリアによると、すぐに私を回収しようとしたけど、私は何かにバーサーカー状態で、敵味方の区別もつかないようだったらしく、安全を考慮して、私の魔力と体力が尽きるのを待っていたそうだ。
「そう・・・それは迷惑を掛けたわね。それでデミドラは?」
「ご無事です。お嬢様と同じく、酷い体力と魔力切れで昏睡状態でしたが、昨日、目を覚まされました」
「よかった・・・」
そんな時、私の元にドラゴンが現れた。
「デミドラ?」
『そうよ』
「ど、どうしたの?そんな姿になって・・・」
『魔力を使い過ぎた所為ね・・・』
デミドラのあまりの変貌ぶりに驚きを隠せない。
あの丸々と太っていたデミドラの姿ではなく、スッキリとしたシャープなドラゴンだった。
『まあ、とりあえずはゆっくり休みなさい』
「うん。そういえば、お腹が空いたわ」
「分かりました。すぐにお持ち致します」
運ばれてきたのは、私が期待したガッツリとした料理ではなく、少しのお粥だけだった。
「こ、これだけ?」
「申し訳ありません・・・お医者様のご指示です。しばらくは、胃腸に負担を掛けない物を召し上がるようにと・・・」
「分かったわ・・・」
お粥の味は美味しかった。でもお代わりを頼んでも、マリアに断られた。
「申し訳ありません。お医者様からのご指示です」
「仕方ないわね・・・」
「それではお嬢様、ごゆっくりお休みください」
それから私は、また眠りに落ちたのだった。
★★★
~専属メイド、マリア視点~
お嬢様が目を覚まされてから、1ヶ月が経った。
魔力を限界まで使用した影響から、お嬢様はかなりお痩せになった。私たち使用人の悲願でもあったスリムで美しい体型を手に入れられたのだった。
そうなると現金なもので、様々な貴族や他国の王族から求婚の書状が大量に届いた。
オークの国なんかは、「早く元の美しいカトリーヌ嬢に戻ってほしい」というメッセージと共に大量の燻製肉や日持ちのするお菓子を送ってきた。これについては、お嬢様にお渡しせず、私たち使用人で食べることになった。そのことだけは感謝している。
お嬢様にあっては、痩せられたことに気づいてもいない。
昔から太っているとも思っていなかったからだ。お嬢様自身、ご自分が絶世の美少女だと信じきっていたからね。
そんな中でも、私は辛い仕事についている。
メイド長が気を遣って声を掛けてくれる。
「マリアに辛い仕事を押し付けてしまって・・・本当に申し訳ないと思っているわ」
「お気になさらずに・・・誰かがやらなくてはいけない仕事なのです。それに私はこの仕事に誇りを持っているのです」
私の仕事はもちろん、お嬢様の食事制限だ。
未だに「お医者様から胃腸に負担を掛けてはならないと指示を受けています」と言って、お嬢様の食事制限を続けているのだ。
お嬢さまの辛い顔は見たくはない。
でもこれが私の使命なのだ。
これでこの物語は終了となります。
諸事情により、更新が遅くなってしまったことをお詫びいたします。
さて、私事ですが、新作を書きましたのでご興味がありましたら、お読みいただけると幸いです。
タイトル 「乙女ゲームの世界に転生したOLが、陰ながら悪役令嬢を救う話」
あらすじ
主人公佐藤マコは、乙女ゲーム「聖女と勇者」にドハマりしている25歳のOLだ。ひょんなことから、「聖女と勇者」の世界に転移してしまったのだが、マコは小柄で童顔、シャイターン王国の関係者の勘違いも相まって、攻略対象が通うシャイターン学園へ入学することになる。主人公や攻略対象を間近で見れると大喜びしたマコだが、異変に気づく。馬車はシャイターン学園を通り過ぎ、森の中に入って行った。着いた先は、特別クラスが通う校舎で、通称「隔離クラス」と呼ばれる問題児を集めた場所だった。
打ちひしがれるマコだったが、同じ特別クラスに攻略対象であるカイン王子の双子の弟アベル王子がいることを知る。アベルはカインと同じ顔だが、口が悪く常識知らず、おまけに趣味は悪役令嬢カトレアのストーキングだった。
いつしか興味本位で攻略対象たちを間近で見たいマコと悪役令嬢カトレアの為に奮闘するアベルの利害は一致し、活動を共にする。そして二人は物語の結末を変えてしまうのだった。




