11 2年目
私の竜騎士学校生活も2年目を迎える。
例年、2年目からは野外実習が多くなる。実際に魔物の討伐依頼をこなしたり、盗賊の拠点を制圧したりするのだ。竜王国には「嘆きの森」と呼ばれる強力な魔物が多数出現するスポットがあるのだが、ここで定期的に魔物を狩らなければ、魔物が増えすぎてスタンピードが起こってしまうのだ。まあ、この森が天然の要塞となっているので、悪いことばかりではないのだけど。
また、2年目のカリキュラムでは、班ごとの行動も多くなる。これは竜騎士団に所属したときのための訓練と言える。いくら実力があっても協調性がなければ、軍として成り立たないからね。
班ごとの行動だが、今期は私の派閥とエリザベート王女の派閥、それぞれ25人ずつに分けられてしまった。内心では、「対立構造がまた酷くなる」と思うのだが、決められたことなので従うしかない。基本的にエリザベート王女の班とは別行動になることが多いそうだ。
新学期が始まる3日前、私はお父様とお母様に呼び出された。二人の目の前には、重厚感のある全身鎧が飾られていた。
「カレンの為に鎧を新調したんだ。暴竜の踏みつけ攻撃にも耐えられるし、火竜のブレス攻撃にも1時間は耐えられるぞ!!今使っている大楯と併用すれば、まさに無敵だ」
鎧を確認すると、かなり重い。100キロ近くはありそうだ。そもそも私やお父様クラスでなければ、この鎧は装備できないだろう。それにいくら暴竜や火竜の攻撃に、鎧が耐えられたとしても、中の人間が無事だとは思えない。
だが、嬉しそうに話すお父様を見るとツッコミを入れることはできなかった。
「それにこの鎧の凄いところは、防御力だけではないんだぞ!!付属装備が充実しているんだ」
確認すると今使っている特大ハンマーも大型のボウガンも、ガイゼルが自ら選んだ魔物解体に便利な短剣も装着されている。なので更に重量がアップしているのだ。
そして、お母様からはハルバードを渡された。
「私としては純粋な槍が良かったのですが、この人が譲らなかったので、間を取ってハルバードにしました」
ハルバートは槍斧と呼ばれる伝統的な、槍と斧が組み合わさったような武器だ。斧のように使えるし、槍のように突くこともできる。「疾風のアンネ」と呼ばれたお母様の得意武器は槍で、「暴虐のボガード」と呼ばれたお父様の得意武器はハンマーやバトルアクスだから、二人の血を受け継ぐ私には打って付けの武器だ。
実際に装備して見て、確認すると思ったよりも動きやすい、後はデミドラが重さに耐えられるかだけど、心配はしていない。これがスピラの相棒のゲイルだったら、飛ぶことはおろか、乗せることもできないだろうけどね。
試しにデミドラに乗って、重さを聞いてみたら、「どうしたの?痩せた?」と言われた。100キロ程度であれば、デミドラにとっては誤差のようだった。
★★★
2年目が始まり、早速野外実習の準備が始まる。
まずはリーダーとなる指揮官の選出だった。例年どおりであれば、成績順で決まるらしいのだが、今回はちょっと事情が違う。順位はグラース王子が1位なのだが、流石に他国の王子にリーダーをさせるわけにもいかず、更に次席のスピラもいきなり部隊を率いるようなことはできないので、なんだかんだあって私がリーダーをすることになった。
リーダーに選出されたことから、職員室にいる担当教官に挨拶に向かう。担当教官はバラックという、がっしりとした筋肉質の男性で、お父様の元部下だったらしい。
「バラックだ。いくらボガード将軍の娘さんだからって、特別扱いはしないからな」
「もちろんです。厳しくご指導ご鞭撻ください」
「よし、いい心掛けだ。それでは、任務を説明する。嘆きの森に面するポルガ村で魔物狩りだ。期間は最初だから1週間、なるべく多くの魔物を狩るのが仕事だ。それで、リーダーを中心に資材や食料、寝床の確保などの準備を3日以内にやれ。3日後には出発だ。質問は?」
「資材や食料に掛かる費用は、どうすればいいでしょうか?」
「それを考えるのも訓練だ。討伐した魔物の素材を売却したら利益が出るように計算して準備しろ。なるベくコストを抑えることも大事だからな。国軍でも湯水のように資金が湧いて出ることはないからな。困ったことがあったら言ってくれ。相談には乗る」
「ありがとうございます。頑張ってみます」
私は職員室を後にする。
ただ、指定された場所に行って魔物を狩るだけだと思っていたが大違いだった。この実習には戦闘力だけでなく、兵站や部隊運用、作戦を立案する能力が求められるようだった。おまけにコスト計算もしなければならない。
早速、メンバーを集めて会議を行う。皆、このようなことは不慣れで、何を準備していいのかも全く分からない。それに魔物の討伐経験があるのは、私とグラース王子を含めて数名だった。グラース王子が言う。
「今回は初めてだから、多少赤字になってもいいから、安全に資材を多めに準備したほうがいいと思うな。カトリーヌ嬢はどう思う?」
「そうですわね。食料や資材の関係は私が準備致しましょう。実家に余っている物が結構ありますからね。それと運搬についてはデミドラがいるので大丈夫です。馬車10台分ぐらいの荷物であれば余裕で運べますからね」
少しメンバーは引いていたが、この案は受け入れられた。
続いて私も提案した。
「ところで、皆さんは戦闘用の装備をお持ちでしょうか?とりあえず明日、装備を身に付けた状態で集合してもらえませんでしょうか?持っていない方は学校に言って、レンタルしないといけませんからね」
そして次の日、メンバーの装備を確認したが、かなり酷かった。王族であるグラース王子を除くとすぐに戦闘できる装備を持っているのは数人で、結局学校側のレンタル装備を借りることになった。バラック教官に手続きをお願いした。
「実習だから、これも料金が掛かるからな。まあ、今すぐに払えとは言わんが、討伐した魔物の採取素材の売却益から払ってもらう。隊長クラスになると魔物よりこっち関係のほうが、頭を悩ますからな。これも経験だと思って頑張れよ」
「ありがとうございます」
バラック教官は口も態度も悪いが、実は面倒見がいい。
その後一通り、レンタル装備を身に付けてみんなで飛行訓練を行うことにした。小型のドラゴン、特にスピラの相棒のゲイルなんかはあまり重い物は持てないからね。
私もフル装備で皆の前に姿を現す。装備を持って来いと言った手前、自分もそうしなければ示しがつかないからね。
私が登場すると皆がざわつく。グラース王子が声を掛けて来る。
「カトリーヌ嬢・・・凄い装備だね・・・何というか・・・」
「お褒めいただき、ありがとうございます。進級祝いに父と母が贈ってくれたものですのよ」
「そ、そうか・・・それにしても凄いね。カトリーヌ嬢一人で、ナウール王国の一個師団が壊滅しそうだよ・・・」
多分、お世辞だろう。
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