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【書籍化】燃費が悪い聖女ですが、公爵様に拾われて幸せです!(ごはん的に♪)  作者: 狭山ひびき
燃費悪聖女、婚約解消のピンチです!?

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リヒャルト様のお薬実験 4

お気に入り登録、評価などありがとうございます!

 春の終わりと夏どっちがいい? とリヒャルト様に訊かれたけど、わたしが答える前にベティーナさんから待ったが入った。

 春だとドレスの準備が間に合わない可能性があるから、夏にしてほしいそうだ。

 もともと春はエレン様たちが結婚するだろうからって予定から外していたからね。仕方ないのかもしれない。


 ベティーナさんの意見を受けて、リヒャルト様はすぐに結婚式の会場となる大聖堂の予定を抑えさせて、来年の初夏で予定が決まった。


 ……リヒャルト様との結婚式の日が決まった! まだあと一年あるけど、予定が決まっただけでなんかわくわくそわそわするね!


 ドレスのデザインもアリセさんのもので決まったし、あとは結婚式の予定に合わせて準備を進めていくだけである。

 準備も、わたしには心強いベティーナさんがついているから何の心配もない。

 というか、ベティーナさんが嬉々として準備を進めていくから、わたしがすることはあんまりないんだよね。

 出席者リストも、わたしには貴族のことはよくわからないからリヒャルト様にお任せだし。


 ……あ! でも、カンナベル枢機卿は呼んでくれるんだって!


 ほかにも、エレン様も来てくれるって言っていた。新婚旅行とかもあるし、王太子妃になったら忙しいけど、絶対に日程を開けて出席してくれるんだって!

 シャルティーナ様とベルンハルト様は親族枠だからもちろん参加だし、わたしの貴族のお知り合いはこのくらいしかいないから大満足である。


 ヴァイアーライヒ公爵領に残っている使用人さんたち……アルムさんやフリッツさんたちにもお祝いしてほしかったなって言ったら、領地に帰ったらパーティーを開いてくれるってリヒャルト様が言ってくれたから、こちらもとっても大満足。

 さすがに聖女仲間たちは呼べないけど、これは仕方がないもんね。だってわたし、神殿を追い出された身だから。


 今日はベティーナさんが結婚式に使うベールのデザインをどうするかで、アリセさんと、それからお針子さんたちを呼んで打ち合わせをしている。

 わたしも混ざろうと思ったんだけど、見本のベールやレース糸なんかをたくさん持って来ていて、おかし屑をつけて汚したらダメだからってお部屋で待機になった。

 なので、リヒャルト様からお願いされていた追加のゴジベリーのお薬を作っておこうと思う。


 ベティーナさんはお客さんのお相手をしているので、ゲルルフさんが材料とかを持って来てくれた。

 盥にお水と乾燥したゴジベリーを入れてお薬を作っていると、書斎でお仕事をしていたはずのリヒャルト様がやって来た。


「スカーレット、少しいいか?」

「はい。ちょうど二つ目の盥が終わりました」

「……君は相変わらず豪快だな。その盥の中身が全部薬なんて、何度見ても目を疑いそうになる」


 リヒャルト様が苦笑して、ちょいちょいとわたしを手招く。

 お薬を盥から瓶に移すのはゲルルフさんとメイドさんたちにお願いして、わたしはリヒャルト様と一緒にソファに移動した。


「今日はこれを渡しに来たんだ」


 リヒャルト様がそう言って取り出したのは、綺麗な青い石がはまった指輪だった。石は涙型で、細かくカットされていて、光が入り込むとキラキラする。


「綺麗ですね!」

「古いデザインだがな、石はいいものだ。……ちょっといいか」


 リヒャルト様がわたしの左手を取って、薬指に指輪をはめた。指輪が大きくてぶかぶかする。


「やはりサイズ直しが必要だな」

「直すんですか?」

「君に上げるものだからな、君が身につけられなければ意味がないだろう?」


 なんと、キラキラの指輪をわたしにくれるらしい!


「私からは結婚式の日に揃いのものを用意しようと思うが、その前にこれは渡しておこうと思ってな。これは母からもらった指輪なんだ。兄弟それぞれ一つずつ、母が持っていた指輪をもらっている。結婚相手に渡せと言われてな」

「リヒャルト様のお母様!」


 そういえばリヒャルト様のお母様には会ったことがない。

 前王陛下はお亡くなりになったらしいけど、王太后様はまだご存命だよね?


 ……結婚式にはいらっしゃるのかな? どうなんだろう?


 何と言っても王太后様だ。わたしがあれこれ訊ねるのは失礼かもしれないから、そのあたりのことは訊いたことがないんだよね。

 気になるな~気になるな~と、そわそわしていたら、わたしの考えなんてお見通しなのか、リヒャルト様にくすりと笑われた。


「母は今、西の国境に近いところにある王家の離宮で暮らしている。母は西隣のプレシュレーガ国出身の公爵令嬢だ。プレシュレーガの先王陛下の姪……現王陛下の従兄妹にあたる」


 おお! よくわからないけど、国王陛下の姪とか従兄妹とか、なんかすごそう!


「父が亡くなってから母は気鬱の病にかかってな。母国が近い国境で静養しているんだ」


 ……心の病気か。これは、聖女の力でもどうすることもできないんだよね。


 何かお力になれることがあるといいけど、どんなお薬でも、癒しの力でも、心の病は癒せない。聖女の力は自己地免疫力とか治癒力を向上させる力だからね。心の病は、いくら自己治癒力を上げたところで治らない。


「母は療養中だからな。結婚式に呼ぶつもりはないんだ。それに……、聖女の君にこんな話はしたくないが、母は聖女嫌いでね。たぶん、スカーレットに会っても、その……仲良くはなれないだろう」

「え⁉」


 聖女嫌い⁉ つまり、会う前からわたし、リヒャルト様のお母様に嫌われてる⁉


「スカーレットが悪いんじゃない。シャルティーナ義姉上への当たりも強いからな。あれでも、昔は仲がよかったんだが……」

「えっと、つまり、昔は聖女が嫌いじゃなかったんですね」

「そうだな」


 リヒャルト様は指輪を箱に納めて、ゲルルフさんにサイズ直しに出すように頼みながら、困ったように眉尻を下げた。


「母の聖女嫌いは父が死んでからだ。父は病で息を引き取ったんだが……、神殿から何人も聖女が派遣され、治癒を施してくれたが治ることはなかった。私も兄たちも、それが父の寿命だったんだと言ったのだが、母は受け入れなくてな。父を助けられなかった聖女たちをひどく恨んでいるんだ」


 なるほど、それについてはわたしは実際に陛下を見ていないから何とも言えない。


 ……聖女は、万能じゃないからね。


 聖女は、神様からその力の片鱗を、ちょっとだけ貸し与えられた存在だと言われている。

 だけど、神様じゃない。

 聖女ができるのは、病の根本を消し去ることではなくて、人の免疫力とか治癒力を向上させることだ。

 聖女がいくら癒しの力を使ってそれらを底上げしたところで、治らない病気も存在する。


 リヒャルト様が言ったように、わたしたち聖女もそれを「寿命」と呼ぶ。天が呼んでいるから、その人の病は癒えないのだと、そういう言い方をする。

 それが本当なのかどうなのかはわからないし、もしかしたら、力が及ばなかった聖女が言いはじめた言い訳なのかもしれないけれど、何人もの聖女が治癒に当たっても病が治らなかったのであれば、陛下の病は聖女の力が及ばないものだったのだ。


 ……でも、そんなことを言われて、仕方ないねって言える人は少ないよね。


 大切な人を助けたいから、人々は聖女に縋る。

 その聖女がその大切な人を助けてくれなかったら――仕方ないなんて言えない。

 わたしは経験したことがないけど、聖女仲間たちの中には、過去に人を助けられなかった経験をしていて、家族から散々攻められて、それが元で聖女を続けられなくなった人もいる。


 聖女は万能じゃない。

 だけどこの言葉は、聖女じゃない人には通用しない。

 人々にとっては、聖女が最後の砦なのだ。


 だから、わたしは何も言えない。

 治療して癒せなかった聖女たちのつらさも、大切な人を失った王太后様のつらさも、比較なんてできないものだ。


 癒せないつらさは聖女にしかわからない。

 大切な人を失ったつらさは、失った人にしかわからない。


 わたしが勝手に想像して、勝手に口を出していい問題じゃない。


「すまないな。本当なら君を母に紹介したかったが、こういう事情なんだ。会わない方がお互いのためだと思う」


 うん、そうだよね。わたしに会うことで、王太后様の気鬱の病が悪化してしまうかもしれないし、わたしだって、人の心の傷をえぐるようなことはしたくない。

 会えないのは残念だけど、会いたいというわたしの一方的な感情を押し付けていい問題じゃないもんね。

 わたしが頷くと、リヒャルト様がそっと頭を撫でてくれる。

 そして、気を取り直したように言った。


「そういえば君が作ったゴジベリーの薬だがな、他の聖女の薬と区別するために呼び名を決めようと言う話になったんだ」


 よしよしとわたしを慰めるように頭を撫でながら、リヒャルト様がちょっと楽しそうに笑う。


「色と、作った君の名を取って『スカーレット』にしたらどうかと思うのだが――」

「わー! だめですだめですっ」


 わたしはしょんぼりしていた気持ちも忘れて、慌てて叫んだ。

 リヒャルト様、なんてとんでもないことを言い出すんですか!


 恥ずかしすぎるので断固拒否です‼





面白い!続きが気になる!続きが読みたい!と思ってくださった皆様、

ブックマークや下の☆☆☆☆☆にて評価いただけると嬉しいですヾ(≧▽≦)ノ


☆お知らせ☆

5/1、TOブックスCelicaノベルスさんから「すべてを奪われた少女は隣国にて返り咲く」の②巻が発売されます!

今回もすずむし先生がとっても素敵なイラストを描いてくださいました!

ぜひ、お手に取っていただけると嬉しいです(*^^*)

(①巻は現在kindle unlimited対象になっています~!)

どうぞよろしくお願いいたします!


挿絵(By みてみん)

☆あらすじ☆

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「君を愛している。絶対に守ると誓うよ」

恋も事件も加速する、貴族嫌いの元令嬢による逆転ラブミステリー第2巻!


出版社 : TOブックス Celicaノベルス

発売日 : 2026/5/1

ISBN-13 : 978-4867949917


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