電車の走行中には立ち上がらないように
まあ、なんやかんやあって葬式の片付けに叔母さんへの説明、引越し準備やら大学等々で怒涛のスケジュールが過ぎ
今日は裏目荘に行く日だ。
二週間って早いな……
荷物は四ッ谷さんの手配で既に送ってある。
何から何まで四ッ谷さん様々だ。
必要最低限の物だけを鞄に詰め込んで涙目になっている叔母さんや従姉妹の美咲に見送られて電車に乗る。
がらんとした車内には人影すらない。
近くの座席に座ると、丁度発車のベルが鳴る。
実家は東京都内だけど 神奈川と隣接している地区のせいか都心に比べて平穏で目立った事件もない。
(街寄りの田舎って感じだよな)
そんな素朴な街で小学五年生の頃から暮らしているせいか、近所付き合いとか老人の相手が上手くなってしまった。
つまり、『ほとんど俺の庭!』って感じ。
在学中は育った街から駅を四つ過ぎた街に住むつもりだったけど、結局一週間くらいしか住んでなかったな……
まあ、これからは電車賃があまりかからない事を喜ぶか!
住む予定だったマンションから大学まで3駅分
これからは一駅で済むから自転車を飛ばしても通える。
「裏目荘。か……」
ため息混じりに呟く。
“体質”についての事もあるがこれからの環境変化のせいか、自分らしくもなくため息が出る。
「ま、何とかなるだろ」
座右の銘は[人生ポジティブ]!
どんな環境だろうがかかって来い!!
誰もいないのをいい事に、ガッツポーズと同時に立ち上がる。
しかし、ノリに任せて忘れていたとはいえ、ここは走行中の電車内
バランスを崩し、思い切りずっこけた。
うわぁ……幸先カッコ悪ぃな、俺……
誰もいないとはいえ、恥ずかしさで押し潰されそうだった。
サブ主人公、凛太郎君の一人語りはもう少し続きます。