エピローグ
そんなこんなで、あっという間に六年が経った。
あたし達は、カフェで待ち合わせをしていた。
それにしても、遅いなぁー。
あたしは、時計とにらめっこ。
そこへ。
コンコン。
窓ガラスが叩かれる。
あたしは、その方を見る。
そこには、待ちに待った人が居る。
そして、彼は中に入って来た。
やっぱり、目立つ。
女性が、必ず振り返るのだ。
「ゴメン。待たせて」
彼が、すまなそうに言う。
「いいよ。急ぎの用事だったんでしょ」
あたしが言うと。
「まぁ、そんな感じ」
何時もより、歯切れが悪い。
なにか、あったのかな?
彼は、大学卒業の前からお父様について、勉強し出した。
理由を聞いたら。
「早く、未月と結婚したいから」
って、言ってくれた。
そんな彼が、愛しく思える。
「未月、許可が降りたよ」
突然、彼が言い出した。
「何の?」
あたしは、不思議に思いながら聞き返す。
「何のって、結婚の」
結婚の許可が、降りたって…。
「嘘」
あたしが、半信半疑で言うと。
「嘘じゃない。今、お義父さんに呼び出されて、行ったらその話だった」
暁が、真顔で言う。
「本当。本当に暁と結婚できるの?」
「ああ、かなり待たせてしまったけどな」
暁が、微笑む。
「嬉しい。暁が、頑張ったからだよね」
「未月が、いつも傍に居てくれたからな」
暁が、あたしの手を握ってくる。
「取り合えず、店出るぞ」
暁が、伝票を掴んで席を立つ。
あたしも慌てて、鞄を握って追いかける。
店を出て、街中を歩く。
自然と手を繋いでいた。
暁の大きな手に包み込まれると、安心する。
ここに居ていいんだって。
実感できるから。
「未月。改めて言わせてもらっていい」
暁に手を引かれて着いた場所。
そこは、小さな教会の中。
暁が、あたしの方を向いて言ってきた。
あたしは、小さく頷くと。
「愛しい未月。オレと結婚してください」
暁の真剣な眼差しにあたしは。
「…はい」
と、一言答えた。
涙と一緒に……。
あれから、半年。
あたしは純白のドレスに身を包んでいた。
色んな人に祝福を受けながら。
「未月、綺麗だよ」
親友に紗夜が、近付いてきて、抱き締めてきた。
「ありがとう。拓也と亜里沙は?」
亜里沙とは、二人の子供だ。
「亜里沙がぐずるから、拓也が連れ出してる」
「そうなんだ。子煩悩だね」
「うん。拓也ったら、亜里沙にばかり構うから、私手持ちぶたさだよ」
紗夜が、膨れてる。
「アハハ…。自分の娘に焼いてどうするの」
「だってさぁ…」
紗夜が、文句言う前に二人が戻ってきた。
「未月おばちゃん、綺麗」
って、亜里沙ちゃんが言う。
「ありがとう。亜里沙ちゃんも可愛いよ」
亜里沙ちゃんは、薄ピンクのドレスを纏っていた。
「ありがと」
舌足らずで、恥ずかしそうに言う。
もう、可愛くって仕方がない。
「拓也。もうちょっと、紗夜にを構ってやってね。寂しがってるよ」
あたしが言うと、拓也が驚いた顔をする。
紗夜は紗夜で、顔を赤らめている。
「未月ー!」
照れ隠しのように怒鳴る紗夜。
「紗夜、寂しかったのか?」
思い当たる節があるみたいな言い方だ。
紗夜が、素直に頷いてる。
もう、可愛いったら。
あたしが、クスクス笑ってると。
「未月、準備できてる」
と、ドアを開けて、暁が中に入って来た。
「暁おじちゃん、格好いい」
と、タキシード姿の暁に飛びつく亜里沙ちゃん。
「おっと。危ないだろ、亜里沙。って、おじちゃんはやめろよ」
暁は、亜里沙ちゃんを抱き止めながら言う。
「悪いな、暁」
拓也が、亜里沙ちゃんを受け取って言う。
「いいよ。で、なんで、紗夜が赤くなってるんだ」
「何でもないよ。そろそろ、会場に行かないとね」
紗夜が、ごまかすようにその場から出ていく。
紗夜が出て行くのを見て、拓也も亜里沙ちゃんを連れて、出ていった。
「何だったんだ?」
暁が、首を捻ってた。
「しかし、新郎のオレよりあいつらの方が先に見るとはな」
って、暁が言う。
「暁、格好いいよ。いつになくね」
「それ、誉めてる?」
「誉めてるよ。あの時からずっと、暁の事しか見てないから」
「未月」
暁が、抱き締めてきた。
「ありがとう。これからもずっと一緒だからな」
暁が、耳元で囁く。
「うん。何があっても、暁から離れないから」
あたしは、そんな暁に答えた。
式は、滞るなく進み、会場の外に出る。
そこには、家族、友達の姿があった。
「暁、未月を泣かしたら承知しないわよ」
と、紗夜の声。
「未月さん。暁をよろしくね」
と、暁のお姉さん達。
色んな人の祝福。
列席者の中に、利恵の姿もあった。
結局、利恵は暁のお兄さんと結婚した。
と言うことで、あたし達は、親戚関係になる。
でもね。
いい思い出だと思うんだ。
二人で、暁の事を取り合ってたことが、笑い話になるような気がする。
あの時の思いが、この先もずっと続きます様に…。